All Four(1)
Turtle or All Four
私は亀が嫌いだった。
ちなみに、ここで言う「亀」とは、ブラジリアン柔術(BJJ)における「亀ポジション」(以下、「亀ポジション」の意味で「亀」という単語を用いる)を意味している(注1)。
注1)亀は、今現在英語でturtle positionと呼ばれているが、一昔前の英語では、All Four(「四つん這い」)という名前が付いていた。
MMAの「4点ポジション」もAll Fourから来たのだろう。
理由は二つある。
ひとつは、BJJで「パスガード」されそうになると、亀になって制限時間まで先行したポイントを守り切る(だけの)スタイルの人を見て、本能的に「セコイ」と嫌悪感を感じたからだ。
もうひとつは、PRIDE全盛期に、「4点ポジション」での顔面への膝蹴りで流血する選手達の映像を繰り返し見せられらおかげで、亀は打撃有のルールでは危ないという恐怖心を植え付けられたためでもある。
「パスガード」されそうになると、亀になってポイントを守ろうとするのは、BJJのルール上何の問題もないが、「4点ポジションでの頭部への蹴りおよび膝蹴り」については、UFCを始め今日のMMAでは禁止されているので、20年前に私が抱いた危惧はあながち間違っていなかったという事だろう。
しかしながら、亀嫌いの私も試合で自分より圧倒的に強い人を相手にした時に、怖さのあまり無意識に亀になった経験がある。
また、タックルを切られると否が応でも亀ポジションにならざるを得ないから、そこから脱出する技術がMMAをやる人々にとっても死活的に重要になるはずだ。
本稿では、亀嫌いだった私が亀からの「脱出法」について、これまで取り組んできた成果をまとめてみようと思う。
結論から先に言えば、亀は、年齢や帯の色を問わず、格上相手に「サバイブ」する技術として有用である。とりわけ、亀から出来る事が物理的に限られているので、覚えるべきテクニックの数が少なく、短期間で誰でもかなりのレベルに達する事が可能だろう。
亀に関する動画はなぜ少ないのか?
YOUTUBEで「亀 BJJ」とでも入力して検索して頂ければ分かるが、検索結果として表示される動画のほとんど全てが亀に対する「アタック」の解説になっている。
BJJ実践者の圧倒的多数(白~青帯)は、亀の相手に「アタック」する側ではなく、亀で「ディフェンス」する立場に回らざるを得ないはずである。
それにも関わらず、YOUTUBEに、亀での「ディフェンス」や亀からの「エスケープ」といった亀からの「脱出法」を解説した動画がほとんどないのは、潜在的な需要を考えると不可解と言っていい。
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