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トービョー日報.10

痴呆糖尿いきなり癌

コレから肺の水を抜く。

何故水が溜まっているのか。

このデキモノのせい。

コレからデキモノ取る。
以上。
多分予想ですが、こんな思考に陥った父さん。
何かブツブツ話してたが、とにかく処置をして欲しいので、スルー気味で話を進めた俺たち。
そして、先生は水を抜くので隣の処置室へと父さんを促す。
家族は待合室で待っててくれとの事。

姉「素直に水抜くなんて思わなかった。良かった      
  わ」
姪っ子「今日は良い爺ちゃんだね」
こんな会話を横でしているのを耳にしつつ、俺は思い返していた。父さんのつぶやきを。。。

「大変な事になった。。。母さんに。。60年。。」

。。。父さん、水抜くって分かってるよなぁ。
説明キチンと聞いてたし、大丈夫だと思うんだが。。。
そして、処置室に何気なく目をやると、看護師さんが不安そうな顔でこちらにやって来た。
なんだろうね、身体が勝手に後ろに下がろうとしたよ。💦

看護師さん「あのぉ。。。お父さん、水抜くなんて知らないし、やらないと仰ってますが。。。
ご家族の方達で一度話して頂けませんか?」
その時、我等は顔を見合わせて苦笑いした。

不機嫌そうに歩いてくる父さん。
開口一番我等に言い放つ。
「こんな大事な事!母さんに相談しないででぎ
  ねーべ!!60年つれそったんだど!!」

外待合室は、総合病院だけあって混み合っている。そこに仁王立ちになって大声で叫ぶ老人!
気付くと周りの席は、自分達を中心に空席になっていた。💦
そりゃ逃げるか。今から暴れますよ?良いですね?って感じだもの。
余りの興奮した父さんを見た姪っ子は、怖気付いて姉の後ろに隠れた。
殴り掛からんばかりの剣幕に、俺の口調も荒くなる。。。
「父さん!!いいから座れ!」
そして、父さんの肩を抑えた。

ストン。。。

全く力を入れてないのに、父さんはよろける様に椅子に座り込んだ。
力が強く眼光鋭い怖かった父さんは居なかった。
病気で体力も落ち、痩せ細った老人が力無く椅子に座っていた。

俺「そんなに言うなら、このまま帰るか?
  母さんに相談したいんだべ?
  ここに居たって迷惑だから帰るぞ!」

姉も同意。先生と改めて処置してもらう事にして謝って帰ろうと決めた。

帰り道、何故処置しないで病院から帰るのか聞いてくる父さん。

ココロの中で痴呆の恐ろしさを噛み締めながら、優しく宥める様に説明しながら家に帰った。。。


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