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✍チョーク持つ指しっとりと薄暑かな僅かに君の丸字を真似る【短歌解説ポエム付】

お〜いお茶3年連続佳作特別賞受賞俳句歌人の粕谷経です。
毎年世界中から200万句が集まる中ペットボトルに載る佳作特別賞以上は2,000句のみ激戦の1000倍を3年連続突破しています!



亡くなった双子の兄への挽歌(短歌)シリーズ


チョーク持つ指しっとりと薄暑かな

僅かに君の丸字を真似る


解説ポエム

誰もいなくなった放課後の教室

蝉の声を含んだカーテンが夏の夕暮れの風を運んで揺れている

20年ぶりの同じ教室

僕は何を書くでもなく白いチョークをその小さな手に持つ

チョークを持つ指は僕の汗を含んでいるせいか少し湿り気を持ち、
しっとりとしている


僕が緊張しているからかもしれない

君と過ごしたその小学校の黒板に大人になった僕は何を書けばいいのか

もう戻すことのできない時間の中で、

黒板だけは時間の流れに取り残されたように濃いグリーンのままだ

書いては消され、書いては消されを繰り返す

そんな終わりのない時間の渦の前に僕は立っている

そんな渦を前にして僕は呆然とする

蝉の声が渦をどんどん加速させていくみたいだ

みーんみんみん

つくつくおーしつくつこーし


目をつむるとあの時の夏の色が瞼の裏にくっきりと浮かびだす。

それは買ってもらったばかりの24色のクレヨンみたいにたくさんの色をしている

とてもとてもきれいで少しずつ丁寧に1色1色を使っていく


僕はそこで思い出す

そして少し微笑む


思い出したんだ

君が作った物語の題名を

『ぜったいとけないはかせのなぞなぞ』

今となってはその話がどんな話だったかまったくもって思い出せないけど

そのはなしに没入したあの頃のこころのわくわくやどきどきを

思い出したんだ


手に持った少し湿ったチョークで僕は大きな君の字を書く

少し丸みを持って省略の多い僕とは全く真逆の君の字を書く


『ぜったいとけないはかせのなぞなぞ』


それを書いてぼくはまたニヤリとする

すぐ書いて消すはずだったその字をそのままにして

僕は教室の一番後ろの席に座る

驚くほど座高の低いその責に身を浸しながらその字を眺める


『ぜったいとけないはかせのなぞなぞ』

いつか僕が作るなぞなぞ

君のために作るなぞなぞ

ハロー君は何してる?

僕はとっても悲しいよ

そのなぞといてくれる唯一の君はもういないから


ハローバイバイ僕の友達

ハローバイバイ僕の友達




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粕谷 経

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