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新しい詩「見上げながら」



『見上げながら』



空を見上げながら
口を開けて 歩いている
そんな子どもだった

木々を見上げると
木々は何か私に話しかけてくれている
そんな感じがした

ずっと 見上げていると
木々は優しく 空は高く
夢は鳩のように飛んで行った

でも、
鳩の飛んでいったさきは
意外と デカダンスだった
木蓮の香りをもとめ
ガラス窓に口づけした
白く曇ったガラスに
自らの欲望を見た
まだ 本物の欲望ですらなかったのに

もう 木々は
私に話しかけてはくれなかった
退廃的な文学にのめりこみ
同級生の少女のことを
想っているふりをした
「想っている」そう思い込んでいた

しかし、
本当の恋は それから
5年後にやってきた
会社を辞め
暇にしていたとき
たまたま行った母校の学園祭の
サークルライブで見かけた
ボーカリストの卵 年下だった
はじめて男の人に恋をした
何度もライブハウスに出向いた
花束を渡した

20人も入ればいっぱいの
小さなライブハウスの
ステージを見上げながら
私の恋は 実を結ぶことなく
散っていった











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