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「幻灯事件」


基地の占領する島では
またもや少女が
政府の優待する軍隊の兵士に
凌辱を受けた
その犯罪は
隠匿され
県民にも国民にも知らされなかった
政府高官の「プライバシー保護」は
いったい誰を守ったのか

傷心を抱えたままの少女から
性犯罪の事実が
政府の手で切り離され
重い扉に閉ざされた

与党が後退した沖縄県議選のあと
米兵による
少女への性的暴行が
明るみに出た
半年も隠蔽されていた
前年には
米軍関係者に
5人もの女性が
性暴力を受けていたことも発覚した

脳裏に
魯迅の「幻灯事件」が
浮かび上がった
留学先の仙台医専で幻灯を見た
時は日露戦争
1人の中国人が縛られている
ロシアのスパイになったためだ
見せしめに
日本軍に首を斬られようとしている
取り囲んでいるのは
見せしめを見物に来た
中国人たちだ
同胞たちには医学でなく
精神の改革こそ必要だ
魯迅は文学を志す

「幻灯事件」と米兵の性暴力事件
構図はずいぶん異なる
大きな違いは
沖縄県民と議会が抗議の声を上げていることだ
でも
脳裏にはふいに「幻灯事件」が浮かんだ
なぜだろう?

私の内にも憤りはある
でも
どこかに「よその国」の事件のように
受け止めている私がいる
幾度も繰り返される
米兵によるレイプを
同胞のこととして
切実に受け止めているか
「幻灯事件」を
あたかも幻灯のように
浮かび上がらせたゆえんは
このあたりにあるのだろう






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猛暑の続く中、
東海地方にも巨大地震への注意が促され、
緊張気味です。
ちょうど保存食品の賞味期限切れのため
食べてしまった後なので、
さっそく被災用の食品を補充しました。
みなさんはいかがですか。

今回は、社会的テーマを扱いました。
高校時代に国語の授業で魯迅の「藤野先生」を読みました。
「幻灯事件」はその中に出てくる場面です。
担当の先生が、資料プリントを何枚も作ってくれました。
細かな内容はまるで覚えていませんが、
先生の熱意が不勉強な私にも伝わっていたのでしょう。

今回のテーマとは直接の関連はありませんが、
文芸評論家の清水良典さんが、新聞のインタビューで、
次のようなことを話していました。
「結局ね、文学の本質は「多様性」だと思うんですよ。
政府が望むのとは反対のことを書いたり、政府にとって
頭の痛いことを述べたりするのも多様性だし、
政治には知らん顔して庭の木や虫について詩を書く、
そうした多様性も大切です。」
(「中日」2024/7/22)
印象に残った話なので、紹介しました。
高校の国語科において文学を軽視する傾向に関して、
清水さんが批判的に語っている一部です。

来週も水曜日か木曜日に更新する予定です。
また見に来てください。
私もみなさんのページを訪ねます。


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