佐藤省司

(さとうせいし)   フォトポエムのジャンルを探求しています。 文芸好き、写真好き、野…

佐藤省司

(さとうせいし)   フォトポエムのジャンルを探求しています。 文芸好き、写真好き、野山歩き好き。 気楽につきあってください。 自称、イメージトラベラー。

マガジン

  • 新たな戦前の時代に

    戦争への準備が強力に進められる今、平和のために何が大切なのだろう?

  • いたいけな輝き 2

    幼い子の放つ光のいろいろ

  • 光と影の律動

    光と影、陽と陰の世界へ

  • いたいけな輝き 1

    幼い子たちの放つ光のいろいろ

  • 宙に舞う

    空飛ぶいのちとの交感

最近の記事

波が私を透り抜ける

立ち尽くし 微動だにせぬ ほっそりと 水差しのごとき肢体 風撫でぬ水面に 真白な影を くっきり落とす 女神像のごとく 繁茂する樹林の水際に 緑樹を湛える池の奥に 白鷺1羽 収まっている 静謐を破り 不意に 水面に躍り出た 1羽のカワウ まっ黒な羽毛から 跳ねる水滴が 瞬時輝く 広々とした池を いかにも気持ちよさそうに 悠々と泳ぎまわり また潜り カワウから波紋が 生まれる つぎからつぎへ きらめき 拡がり 膨らみ 幾重もの弧が 池の畔の私に 押し寄せ 透り抜けてゆく 胸の

    • 岩屋観音の来歴 4

      綱政 目を覚ましなさい ここはもうじき大津波が押し寄せてくる 一刻も早く立ち去りなさい 一刻も早く 篤く信心する観音様が 夢に現れた 綱政は急いで家来たちに指示した 白須賀宿本陣を出立し 坂上にたどりついた まさにそのとき 大津波が寄せてきて 宿泊していた本陣は 波に吞み込まれ さらわれてしまった 綱政は観音様のご加護に感謝し 信仰心をいっそう募らせた 〇  〇  〇 宝暦4年(1707) 東海道沖で大地震が発生した 備前岡山藩主 池田綱政は 江戸からの帰国途中 白須

      • 岩屋観音の来歴 3

        むかし むかし 竜王はおさないわが子を べろんべろん舐めるように かわいがっていたと あるとき その子が病気になった 竜王はあちらこちら 飛びまわり泳ぎまわり 治療を頼み薬を求め 自らも看病に明け暮れた にもかかわらず 病は日ごとに重くなり 子はやせ細るばかりだった このままでは死んでしまう! 竜王は悲しみ悶えた末 観音様におすがりした お願いです この子を救ってください 竜王の大きな目から 涙が滂沱として流れた このときから 毎晩 岩屋山の洞のそばにある 松の大木に

        • 岩屋観音の来歴 2

          豊川(とよがわ・東三河に流れる河)に橋を架けよ 幕府の命令を受けた 江戸の大工の茂平(もへい)と弟子の善右衛門(ぜんえもん) 工事に取り掛かったものの 困難にぶち当たり 行き詰まった 岩屋の観音堂にふたりは籠り 橋の完成を祈願した 7日目の夜 川に1本の縄の流れていく夢を見た 明くる日 現場に駆け付け 川に縄を張り渡したら 水流で縄が弓形になった その曲線を見ながら 橋の反り具合を考案し ついに吉田大橋を完成させた 江戸に帰ったふたりは 岩屋観音様のお陰だと 3メートルほどの

        波が私を透り抜ける

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        • 新たな戦前の時代に
          10本
        • いたいけな輝き 2
          8本
        • 光と影の律動
          13本
        • いたいけな輝き 1
          10本
        • 宙に舞う
          10本
        • しののめ、たそがれ、刻々の彩り
          6本

        記事

          岩屋観音の来歴 1

          もこんもこんもっこん 大地を裂いて現れ出たような ごつごつごっつん岩山の 頂きに立つ聖観音像 南東の旧東海道宿場方面を 見晴るかす 「かすむ日や  海道一の たちほとけ」   (近世 吉田の俳人      古市木朶の句) さらさら 若葉風に撫でられ ぎらぎら 太陽に焼かれ ざかざか 大雨に打たれ きりりきりり 寒風に晒され 岩屋観音 豊橋市の東部 二川地区西端の ランドマーク 天平2年(730) 諸国遍歴中の行基が 岩屋山の麓を通りかかったとき ビビビッと霊気を得た

          岩屋観音の来歴 1

          「幻灯事件」

          基地の占領する島では またもや少女が 政府の優待する軍隊の兵士に 凌辱を受けた その犯罪は 隠匿され 県民にも国民にも知らされなかった 政府高官の「プライバシー保護」は いったい誰を守ったのか 傷心を抱えたままの少女から 性犯罪の事実が 政府の手で切り離され 重い扉に閉ざされた 与党が後退した沖縄県議選のあと 米兵による 少女への性的暴行が 明るみに出た 半年も隠蔽されていた 前年には 米軍関係者に 5人もの女性が 性暴力を受けていたことも発覚した 脳裏に 魯迅の「幻灯

          「幻灯事件」

          真夏のブラッシング

          かわたれどきの ゆめうつつ せみのこえ まくらにしみいり シュッシュッシュッシュッ シュシュシュシュシュ つまらぬこだわり こころにからみ はなれない シュッシュッシュッシュッ シュシュシュシュシュ こころのひだの せんもうに こびりついたよごれ ブラッシング シュッシュッシュッシュッ シュシュシュシュシュ 「いま」をえいびんに とらえたい いつわりにまどわされぬよう ブラッシング シュッシュッシュッシュッ シュシュシュシュシュ ゆらゆらゆられて かわたれどきの ゆめ

          真夏のブラッシング

          巨石の来歴 3

          立岩の南の道路越しに 椀貸せ岩が横たわっている 村の祭りや祝い事で 椀や膳が不足したとき この岩に願うと 翌朝には岩の上に揃えておいてくれる そんなありがたい岩だ この伝説は山林の営みを背景にしている 立岩を陽とすれば 椀貸せ岩は陰だろう 陽と陰の神威に 住民は守られていた 立岩と椀貸せ岩とを結ぶラインは 三河と遠州との国境を 霊力により守護していた と言えないか 戦後に開発される以前 ここらは山林に覆われていた 鉄道の南を流れる梅田川は もっと幅が広く ワイルドであった

          巨石の来歴 3

          巨岩の来歴 2

          子どもの頃 立岩には近づかなんだのん 白狐の祟りを畏れとったんじゃろうな 白狐は神の使いとして 岩穴に棲んどったらしい 親父が岩の上の白狐を見たと話しておった 若い時分には 隣村から帰ってくる間に 自転車籠の油揚げが なくなっとったこともあったそうな 狐や猪や兎なんかも 山林でよく見かけたと 平安時代中頃 菅原道真の怨霊の使いとして 白狐が「庄左衛門」の夢に現れ 立岩の麓に祠が造られたそうな 立岩天神社は 江戸時代の道中記にも載っておってな 参勤交代の大名が街道から迂回して

          巨岩の来歴 2

          巨岩の来歴 1

          ガタコン ガタコン・・・・・・ 東海道線の愛知と静岡の県境あたり 北側の車窓に岩塊が映る どっかと居座っている とも見える 空にぐんと伸び上がろうとしている とも見える にこやかに笑いかけている とも見える ガタコン ガタコン・・・・・・ 巨岩は立岩(たていわ)と呼ばれる この地域のランドマークだ 近ごろでは 背後に続く丸い小山の尾に見立てられ 「くじら山」という愛称もある 南の小公園では親子連れが遊ぶ ロッククライマーが ヘルメットに陽を反射させながら よじ登る姿も珍しく

          巨岩の来歴 1

          盛りを過ぎて

          盛りを過ぎ 老いゆくほどに 彩りを添えながら 暮らしてゆけたら 何とも楽しいではないか 星流れ霜降るにつれ 埋もれ溶けた苦楽が 鮮やかではなくとも ほのかな色を帯びて 沸々と 多彩に 浮かび上がる 老いゆくことが 例えば灰色のような 単一色に向かうのならば まことに味気なくはないか △▼ ▲▽ △▼ ▲▽ △▼ ▲▽ 梅雨も終わらないうちから 蒸し暑い日々が続きます。 深夜も早朝も暑いのでたまりません。 エアコンのお世話になっています。 今回のテーマは、 庭の、盛期

          盛りを過ぎて

          退去せよ

          「ガザ・モノローグ」を聴きながら 南部へ避難せよ イスラエル軍が ガザの住民に命じた ハマスを壊滅させるために ぼくは信じられなかった その土地で日常を送る人々に 家を捨てろと 他国が命ずるなんて 武力を突きつけられた人々は 生存のために移動するしかなかった パレスチナの十何年にも及ぶ現状を それまでまるでわかっていなかった いや、今でもだ ▼▼とにかく暗い夜をやり過ごした。   翌朝9時イスラエル軍から電話があった。   「ただちに退去せよ。   その家をこれから爆

          刺さる雨

            「ガザ・モノローグ」を聴きながら 柔らかな雨がそそぐ 紫陽花はしっとりと水分をまとい 鈍い光を湛えている ▼▼俺たちの日常がどんなものか   分かりますか? 報道で知る限りでも 強制と破壊に満ちた残酷な状況 子どもたちが未来を奪われ 多数傷つき殺されている ミサイルの炸裂する音 銃弾の飛び交う音 木の葉に落ちる微かな雨音に浸る私には とうていわからない ▼▼不安と恐怖の中 ひたすら走る   毎日その繰り返し   逃げ切れた人は自分が生き残ったんだと思う その恐怖

          悔いの雫

          傘やら 小川やら 木の葉やら 雨音の混沌に 降りこめられて 夕暮れの道 ひとり 丸めた背に ひょいと乗っかり じんわり溶け込むもの 雨季の感傷癖は どこやらに置いてきたはず こころの 窓を打つ雨が 斜めに流れ 赤い雫が 音もなく砕け 水滴が跳ねた 深く傷つけた そのことに何年も気づかなかった 恨みを聞かされたわけではない 年月を経るうちに分かってきたのだ 今となってはもう償えない 今になっても謝罪する度胸がない 密かに許しを請い 悔やむだけだ もう過ぎたことと 笑顔で

          蕾を救う

          黄のユリが浅い器に咲いていた どうしたのだろう 花の頭だけが飛んできたのか 茎が短すぎる 飛頭蛮の伝奇を思い浮かべた 夜になると頭部が胴体から離れて 耳を翼にして飛んで行く 朝が近づくと元の胴体に付く ユリの花が茎から離れて 人の知らぬ間に宙を舞い飛び 気に入った所に収まる 花を見送った茎はどうなっているか 妻の姿が見えたら空想が霧散した 大きく膨らんだ蕾が地に転がっていたという 先日の激しい風雨のせいらしい 窓辺の器の中で蕾は開き出した 肉厚の花がどっかと天を仰ぎ 太くぬ

          青い実

          若葉と若葉の間から あっちにもこっちにも 青い実が つくんつくん 起ち上がり やがて  ぷちぷち 硬いまま すとんすとん 樹の下に落ちる どんどん 切り離されて 地に散らばる なぜだろう 青いまま なぜだろう 硬いまま せっかくの実なのに モクレンよ 秋になれば 残るわずかの実が ぶくぶく肥え あかくあかく熟し 黎明の空色の まるい種子が生まれる ならば もっと青い実を残したらどうなのか 日々の暮らしのときどきに 感じること 揺らぐこと 思うこと そんな粒子のほとんどが