第19回 通学路と たっちゃん
たっちゃんは、近所に住んでいる同い年の幼馴染みの男の子。
私たちは小学校から遠いところに住んでいた。
距離にすると1.2kmほどなのだけれど、
小学生の頃の私にとってはすごく遠く感じていた。
この辺りには他に小学生がいなかったので、他のみんなと一緒に帰っても最後に必ず二人っきりになる。
帰り道はいつも一緒だった。
何年生頃からだっただろうか、仲がいいことを冷やかされるようになった。
それが嫌だったので、みんなの前では離れて歩いて、もう誰も居なくなったぐらいに二人で喋りながら歩いた。
二人だけになった帰り道、突然背中が重くなって私は後ろにひっくり返った。
「ウェーイ」
たっちゃんが笑いながら逃げていく。
後ろから私のランドセルにしがみついて、思いっきり体重をかけてひっくり返したのだ。
「またやられた!」
私はすごく小さかったから、カメみたいにジタバタしながら、なかなか起き上がれなかった。
悔しくて、どうにかして仕返ししてやりたいといつも思っていたが、同じことをやり返しても、たっちゃんをひっくり返らせたことは一度もない。
私はなんとか起き上がって、走ってたっちゃんを追いかけた。
今日こそは何かしてやろうと考えていると、川が見えてきたところでいいことを思いついた。
この川は小学生が入って遊べるぐらいに水が少なくて浅い小さな川で、
ドンコ(小さい魚)を獲って遊んだりしていた。
(あまりきれいな川ではなかったけど)
私は気づかれないようにそうっと、たっちゃんのランドセルの金具を外した。
そして、川を渡る橋に差し掛かったところで、
「あっ! なんかあんで!」
「なんや?」
「ほら見てみい!」と、橋の真ん中あたりで前のめりになりながら下の方を指差した。
たっちゃんも同じように下を覗き込んだ途端、
ザバーッと、ランドセルの中身が全部ひっくり返って川に落ちていった。
「うわーっ!!」
たっちゃんの驚きの声。
してやったりと私はニヤけた。
たちゃんの顔が青くなって、そして赤くなってこっちを見た。
怒ってる。
「ひゃー!!」
私は走って逃げながら、ケタケタと笑いが抑えられなかった。
次の日、たっちゃんからさんざん文句を言われた。
一人で川に降りて拾うのが大変だったとか、
お母さんには怒られるし、乾かすのがたいへんだったとか、
もらったばっかりの新しい教科書が全部ヨレヨレになったとか。
(こん時のことをいまだに言われる。「ヨレヨレになった教科書使ってたんやで!
あんときは!」って、いまだに言われるよ)
つづく
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