情報伝達
〈個体の情報伝達〉
生物は生存のため様々な条件や刺激に適切に反応しなければならない。しかし、多細胞生物では刺激を受け取る細胞や反応する細胞が分業しているため細胞間で情報伝達を行う必要がある。従って、体内にはその情報伝達の仕組みが進化している。代表は神経系と内分泌系である。
★神経系
●神経の構造と機能とか
・ 神経細胞…
情報伝達に特化した細胞で3つの部分から成る。
電気と化学物質で情報を伝える。
⇒ 神経伝達物質と呼ばれる
⇒ シナプス小胞に含まれている。
・ 神経の種類…
神経は構造や機能により区別することができる。
神経での情報処理の基本は
① 受容器(耳など)で情報を感知し、中枢に伝達
② 中枢神経で情報の統合や処理
③ 中枢での判断に基づき、効果器(筋肉等)で反応
である
・ 自律神経系…
拮抗する2種類の神経で内臓等の器官の制御を行う。
その為、恒常性維持に重要。
①交感神経…
主に興奮状態の時に働く神経。
(脊髄にある胸髄、腰髄から各器官につながる)
②副交感神経…
主に休養している時に働く神経。
(中脳、延髄、仙髄から各器官につながる)
・ 自律神経の拮抗作用(拮抗制御)…
2種の神経は相反する作用で器官を制御する。
★内分泌系
神経系を介した情報伝達は主に電気信号で行われ非常に速い。ただし、問題点もある。情報伝達のために神経細胞と連結しなければならない。
つまり、神経だけを用いて情報伝達を行うと全身が配線(軸索)だらけになってしまう。
そこで、化学物質を利用した情報伝達も必要になる。これが内分泌系と呼ばれるシステムであり体液に様々な手紙(化学物質)を流して、目的地(標的細胞)の郵便受け(受容体)まで運んでもらい、情報をやり取りする。その為、時間がかかるが、標的細胞全体に対して、体液中の化学物質が代謝されるまで持続的に作用が継続する。
●ホルモンによる恒常性維持のシステム…
内分泌系
●内分泌系の基本
・ ホルモン…
内分泌腺から体液中に放出される情報伝達物質。
微量で大きな生理作用を及ぼす。受容体を持つ標的細胞のみ
に作用する。
・ 内分泌系の中枢…
間脳(視床下部)
視床下部で情報を感知し、それに基づき自律神経及びホルモンの分泌を制御する。
・ 間脳のホルモン分泌 …
間脳は脳下垂体を有し、そこでホルモンの分泌自体も行っている。
脳下垂体は前葉と後葉に大きく分けられ、それぞれがホルモンを分泌する。だが、その仕組みは異なる。前者では、視床下部で神経分泌細胞がホルモンを放出し前葉に作用する。その結果、前葉の細胞からホルモンの分泌が生じる。一方、後葉では神経分泌細胞が上部から伸びてきていて、そこから直接ホルモンが分泌される。
・ 内分泌腺の種類…
色々な内分泌腺が存在する。
各ホルモンは病気に関連する ⇒ 恒常性が破たんするため
・ フィードバック(フィードバック調節)…
出力(結果)に基づいて入力(原因)を調節する作用。
内分泌系では、分泌された物質自身が分泌に関わる組織や器官に作用し、ホルモン等の分泌量を変化させる。ホルモンの種類や量の調節、血糖濃度の過剰や不足状態を防ぐ。
★神経系と内分泌系の協調
恒常性維持のための中枢が間脳であるので協調して機能する
・ 血糖濃度調節
視床下部、脳下垂体と膵臓が血糖濃度の量を感知し、調節を行う。
①血糖濃度を上昇させる時…
グリコーゲンや脂肪の分解、タンパク質の糖化を行う。
具体的には以下のホルモンや神経を利用する。
・ グルカゴン(膵臓のランゲルハンス島 α細胞)
・ 糖質コルチコイド(副腎皮質)⇒ タンパク質を糖化
・ アドレナリン(副腎髄質)← 交感神経の作用
・ 成長ホルモン(脳下垂体前葉)← 放出ホルモンの作用
②血糖濃度を低下させる時…
グリコーゲンの合成、肝臓や筋肉でグルコースの取り込みと消費。
・ インスリン(膵臓のランゲルハンス島 β細胞)
・ 体温調節
血糖濃度の調節及び熱産生と放熱のバランスを調節する。
①熱産生…
代謝の促進(アドレナリン、チロキシンの分泌で代謝促進)
②放熱調節…
皮膚毛細血管の収縮、立毛筋の収縮、発汗(自律神経系での調節)
・ 体液濃度の調節
体液の調節には二つのホルモンが関わる。
①体液濃度増加…
脳下垂体後葉から分泌されるバソプレシンが細尿管や集合管に作用して、水
の再吸収が促進される(毛細血管を収縮させるため血圧上昇作用もある)。
②体液濃度低下…
副腎皮質から鉱質コルチコイドが分泌され、細尿管でのナトリウムイオンの
再吸収とカリウムイオンの排出を促進。
・ ホルモンの作用の仕方
2種類のタイプが存在する
水溶性ホルモン…
副腎髄質、脳下垂体、膵臓のホルモンは細胞膜の受容体を介して作用
脂溶性ホルモン…
副腎皮質、甲状腺、性ホルモンは膜を通過し細胞内の受容体を介して作用
●性周期
子宮内の状態の周期的な変化。
ホルモンの働きが重要。
⓪ 視床下部からろ胞刺激ホルモン放出ホルモンが分泌される。
(標的細胞は脳下垂体前葉に存在)
① ⓪の作用の結果、前葉でろ胞刺激ホルモンの分泌が促進され、
ろ胞の発育が起こる。
② 発育後のろ胞からエストロゲン(ろ胞ホルモン)が分泌され、
視床下部や脳下垂体にフィードバック作用を示す。
③ 前葉から黄体形成ホルモンが分泌され、排卵が促進される。
排卵とは、成熟したろ胞が卵を放出することである。また、
卵を放出したろ胞は黄体に変化する(黄体形成)。
④ 黄体からプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌され、子宮内膜が成長、
またフィードバック作用により前葉からの黄体形成ホルモンの分泌が抑制
される。
⑤妊娠しながった場合と妊娠が起こった場合で異なる。
⇒ 妊娠せず(未着床)…
黄体が徐々に退化し、 プロゲステロン量が減少。子宮内膜が剥離。また、 フィードバックで脳下垂体のろ胞刺激ホルモンの分泌が増加。
つまり、⓪ や ① に戻る。
⇒ 受精卵が着床し妊娠…
胎盤からのホルモンの作用で黄体が維持、次の性周期が開始できない。
●昆虫のホルモン
変態を調節する
・内分泌腺
アラタ体…
幼若ホルモンを分泌。蛹化を抑制
前胸線…
前胸線ホルモンを分泌。成長、変態促進
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