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試験中に起こった事件 ~試験監督をする人へ~

 十一月の中旬、期末考査初日。まず自習の時間から始まり、その後、国語のテスト、技術家庭のテスト、美術のテストという風に進んでいく。
 今回の期末考査で最初のテスト、国語の試験が始まった。しばらく解き進めていると、紙が机から落ちてしまった。解答用紙かな、と思い、机の上を見てみると、解答用紙はちゃんと机の上にあった。どうやら、問題用紙を落としてしまったようである。試験中、何かを落としても、自分で拾ってはいけない。拾うと、不正行為となってしまうのだろう。
 私は右手を挙げた。だが、しばらく手を挙げていても、先生は来てくれなかった。ピンとまっすぐにして挙げてみたり、肩の方からしっかり挙げてみたり、挙げる手を左手に変えてみたり、音を鳴らしてみたりした。そして、そうしているうちに、「解けるはずだった問題だったのに、試験監督の先生が来なかったがために、点数が低くなる」という怖さを感じた。教室に監督の先生はいるのかと思ってしまった。拾ったらいけないし、声を発したら不正行為となる。もうどうしようもなかった。
 だが、私が問題用紙を落としてからしばらく経っていた時、私の前の子が、椅子を動かすような音が聞こえてきた。もちろん、試験中なので、周りの子がどんなことをしているかというのは分からない。だが、音はそんな感じだった。そしてその直後、遠くで椅子を動かすような音が聞こえてきた。 そして、ついに。
 「どうしましたか」
 先生が、私のところに来た。私が問題用紙を落としたと伝えると、先生は拾ってくれた。先生は、具合が悪いのかと聞いてきたけれど、「いえ、大丈夫です」と答えた。
 そして、先生が離れた後。私の目に涙があふれた。勝手に出てきた涙だったのか、泣きたくて泣いた涙だったのか、それとも半々だったのか。分からないが、私の目に涙があったのは事実だった。
 試験が終わり、私は顔を上げた。私は列の一番後ろに座っていたので、自分の列の子の解答用紙を回収しなければならず、席を立つ必要があった。それで、眼鏡に涙がついているままだと恥ずかしいと思い、涙を拭こうと眼鏡をはずした。眼鏡のレンズには、両目とも、涙がついていた。私はレンズについた涙を指で拭こうとした。だが、涙はとれるどころか、広がってしまった。
 私は仕方なく、眼鏡をつけなおして、席を立った。他の子の解答用紙を回収しながら、眼鏡についた涙のことを気にしていた。先生や、回収担当の学級委員がいる教卓のところまで行くと、私は、特に先生には涙に気づかれないように注意しながら、学級委員に解答用紙を渡した。そして、何も言われることなく、自分の席に戻った。
 試験が終わると、私は眼鏡をはずし、問題用紙を片手にロッカーまで向かった。そして、リュックに問題用紙を入れたりした後、リュックのポケットに入っていたハンカチを取り出して、それで眼鏡のレンズを拭いた。ハンカチは、試験が始まる前に、洗った手を拭くのに使ったからか湿っていて、それはレンズを拭くのにちょうどよかった。少し汚れが残っているようにも感じたが、もういいことにして、私は眼鏡を付けた。
 
 実際、私の席の前に座っていた子が私よりも背が高い人だったから気づかなかったとか、そういうのもあるかもしれない。だが、もし、この記事を読んでいる人の中に、試験監督をする人がいたら、ぜひ、その時にはよく教室内を見ておくようにしてほしい。あなたのせいで、誰かの成績が落ちることがあるかもしれないのだ。
 

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