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野良学芸員が「キュビズム展」に行きました①

美術が大好きで大学時代に学芸員資格を取得。卒業後は美術館で働かせて頂いたものの、いろいろあって退職。それ以降はギャラリーや美術館を一鑑賞者としてうろうろする野良学芸員の私(^▽^;)

こちら野良犬

今回は上野の国立西洋美術館「キュビズム展」に行ってきました。
パリのポンピドゥーセンターの収蔵品を中心にした50年ぶりの大規模な展覧会(ポンピドゥーが改修工事に入るため貸し出してくれた)、滅多に見られない名品も多そうです。
すごく混んでいるとのことですが、どんな感じかしら…

あ、当然こちらは視聴済みです
「山田五郎 オトナの教養講座」

この番組、以前出演されていたキュートなキャラクターのワダさんの企画だったそうで、素晴らしいですね。
毎回違う画家さんを取り上げるのですが、山田さんの解説は作品のこと、も画家の人生について、毎回流石の語り口です。
現在の聞き手の瓜谷さんも素敵です。

学芸員の端くれの隅っことはいえ、私も美術館勤務時代から、
「たくさんの人に美術の、美術館の楽しさを知ってほしい!!」
という気持ちは人一倍あるつもりですが、この番組の持つパワーには頭が下がります。楽しみつつ「アートの目」を良くするツボをグイグイ押してくれて、知らないうちに鑑賞眼が育つんですよね…。

会場に着くと、あ、山田さんの音声ガイドがあります。
きっと面白いだろうなあ…。
しかし毎度ながら私は「絵に勝手に没入したい」タイプなのでこれは使いません。

入口からカッコいい!!

平日の昼間ですが、まあまあの入りです。
とはいえ押し合いへし合いではないので、好きな絵の前にしばらく佇むことはできます。良かった~。

内部も撮影できるんですね。
私のスマホが不調で、夫が撮影してくれました(というわけで彼がすごく好き!! と思ったものしか写真はありません。非常に偏っていてすみません)。

キュビズムに大きな影響を与えたアフリカの彫刻。
この他にも面白いアフリカの作品が数点展示されています。
アートの原型ともいえるプリミティブな造形に引き込まれます。

アフリカの彫刻は祈りが凝集した…というか、念のかたまり、心の原型のように力強さがあって、近くで見ると圧倒されました。
「制作者不詳」、集合無意識のオブジェクト。
これらがキュビズム展のスタート位置においてあるのは、分かりやすくてすごくいいなと思いました。

キュビズムといえばピカソ、そしてブラックですが、キュビズムのスタート地点にポール・セザンヌがいます。
セザンヌの作品も入ってすぐに鑑賞できます。(写真がなくてすみません)
セザンヌは立体を平面に、三次元のものを二次元に描くときに、要は絵を描くときにいろいろな角度から見た様子を一度に一枚に盛り込むという、斬新な手法をさりげなく用いていました。

一見すると、
うーむ(゜-゜)この人は
あんまりうまくないのかな?
と思われかねないのですが、千葉にあるホキ美術館(写実絵画専門館)には絶対収蔵されませんが、絵画の静かな革命だったのですね…。キュビズムの始祖、あるいは素地を作った、基礎工事をしたのがセザンヌと言えるようです。

他にも当時改めて注目されていた人にマチスがいますが、セザンヌもマチスも、それまでにない革新的なアイディアを無意識に実践していた(それ以外できなかったのかもしれないけれど…)、ある種のアウトサイダーアートではないかとも思えて、アウトサイダーの視点のすごさに気付いたのがピカソとブラックだったと言える気もします。
今でこそ多様性の尊重と言われますが、当時はそういう認識はなかったのかもしれません。でもメインストリームにないところに(軽くバカにされていたセザンヌやマチスに)、新しい、何かグッとくるアイディアがある。自分達の行き詰まりを解放するヒントがあると理解し、遅ればせながらリスペクトし、その仕事をピカソやブラックが発展させていきます。

あ、ブラック達に行く前に、マリー・ローランサンも展示されていますね。

キュビズムに影響を受けていますが、どんな絵を描いてもローランサンはローランサン。
彼女らし人物、色使い、確立されたスタイルです。
そして何より動物がかわいすぎる! 一体何?! ネコ?

そしていよいよ本格的なキュビズムの時代がはじまります。

(つづく)

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青柳寧子
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