見出し画像

緑な一角の存亡

築40年を越えた古いマンションに住んでいます。敷地内の一角に小さな公園があります。半年ほど前、マンション管理会社からアンケートを兼ねたお知らせの文書が届きました。この公園を取り壊し駐車場にしようという案があり、それについての賛否と意見を募る内容でした。

私はその文書に目を通したとき、少々驚きました。駐車料金と工事費用の兼ね合いなど細かく記載されており、当然、経済的効率の優位性が示されたものだったのですが、そうした効率性はさておき、こんな貴重な緑の一角を取り壊すという考え方に衝撃を受けたのです。ここを無くして殺風景な駐車場にしたら、一塊の<緑>が無くなっちゃうじゃないの・・・ただでさえ昔風のコンクリートむき出しの建物なのに、この<緑>が消えてしまったらあまりにも武骨じゃないの・・・と。

  1. 少子化によりこの公園が使われることも少なくなった

  2. 落葉清掃や木々の手入れにコストが掛かる

  3. フェンスやベンチが傷んでおりケガをする

  4. マンション住民で敷地内駐車場の空き待ちをしている人が居る。売却時のことを考えても駐車スペースを増やした方が有利。

  5. 公園跡地には7台分の駐車スペースができ、約15~18年で元がとれる

ざっとこんなことが書かれてあり、故に公園を無くし駐車場にするのが今後の為になるのでは、という内容でした。

マンションエントランスを出て、駅やバス停に向かうとき、角地にあるこの公園づたいの道を誰もが通ります。数十年の樹齢の木々はやはり相応の年季が感じられ存在感があるものです。中心には大きな桜の木、欅や常緑樹も。それはもう、こんな小さな公園でも季節感は濃く、通りがてら無意識に公園内に目を遣ります。

初冬の落ち葉清掃やメンテナンスはされていて
綺麗に保たれている

意見を聞かれれば「反対」というのが本音で、回答に下記コメントを添付し提出しました。


書面に記されている内容は理解しますが、公園のような衣食住に直結しない種類のものが経済的効率性から排除されることに抵抗感、違和感を覚えます。癒しの空間がそこにある、木々がある、ということが憩いであり豊かさともいえます。そうしたもののメンテナンスにお金を掛ける余裕はない、といわれれば仕方ないと言うしかないですが。

「工事金額700万、それに対し年間42万の収入、15年から18年で元を取れる」ことと、現存の「小さな公園の存続」を天秤にかけるのであれば、個人的には後者をとります。

以下、記されていた検討内容と照らし合わせつつ思いついたことを箇条書きにします。

  • ベンチはたしか近年新しく(修理?)していますよね。

  • フェンスはマンション周囲にも存在する。フェンスでけがをするなどというリスクは、よほどフェンスが破れていたりしなければ理由にはならない。けがをするほどフェンスが破損しているのであれば修理をすればよい。

  • 駐車場は周囲に潤沢にある(売却時、絶対的に有利とは一概にいえない)。

  • 新設予定駐車場は出入口が狭い道路(しかも坂道でT路交差点の至近)に面しているのもむしろ危険。

  • 古いながらも手入れがされている公園があるのは良いこと。むしろ既存の駐車場や自転車置き場、マンション周囲のフェンスなどを小綺麗にした方が良い。資産価値にもつながる。

  • 今後の車の在り方も考え、EV車用の充電システム導入の検討が先のような気がする。(補助制度もあるので)

個人の価値観もあることですが、今回のアンケートではそうした意見を募っているという解釈で記述させていただきました。



高齢の母もここを通るたび、「まぁ、この公園が無くなっちゃうなんて悲しいわねぇ」と言います。物忘れが激しいのですが、印象的なことは残るみたいで、都度そのことを言います。私は、どこかで「無くならないんじゃないか」と信じながら「まだ無くなっちゃうとは決まってないよ」と答えます。母曰く、デイサービスの車でここを通るとき皆さんが「緑がいいわねー」とか「公園がいいわねー」と言うのだそうです。

全ての木製ベンチが修理、交換されている
初夏、生い茂る葉
日中の木漏れ日

理由もなく楽観視していたところへ、先日この件についての文書が届きました。再びショックだったのは過半数が駐車場賛成だというのです。

え~・・そうなんだ・・・

但し、色々な意見も出ているので、それらも検討し今しばらく保留とする、という旨でした。


声高に反対運動をするつもりはありませんし、多数決で賛成多数なら仕方ないですがちょっと気持ちがブルー。
公園に面した住戸の方たちは、この緑が無くなってもいいんだろうか・・。緑があれば夏にはセミ時雨、秋にはコオロギやスズムシなどの虫の音、鳥のさえずりが聞こえ、桜や欅の移ろいなど、こんな小さなスペースから春夏秋冬の情緒が得られるのに、それは一度失ったら二度と手に入らないのに。
だいたい、これらの木々を切り倒すなんて、なんて残酷なのかしら・・・と思わずにいられません。

<費用対効果>ね~
多分、流れはそちらに向かって行くのでしょう。
打って変わって悲観的になり、今は大変残念な気持ちです。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?