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無傷なる蝶なぞおらぬ生きてゆけ

 新暦では初夏でも、旧暦なら、まだ4月なので、春の季語〈蝶〉もOK! と、ゴリっと押し通しております。

自然の中で生きている虫は、きれいな蝶であっても、みな、羽に傷があったり、左右の大きさが違っていたり、足が欠けていたり、無傷のものは一つもない
 もう何十年も前であるが、新聞にあった注目の人物紹介欄の記事に書かれていた。随分、昔なので、うろおぼえなのだが、大筋はこんなだったと思う。当時小学5年生だったか6年生だったかの女の子が、昆虫標本の何かの賞を獲った。その少女が言った言葉だ。
 門外漢だから、賞のことはチンプンカンプンだが、並みいる大人のマニアたちを押えて、小学生が一番を獲ったのは、やはり、凄いことなのだろう。だが、それ以上に凄いのは、インタビューに答えての彼女の言葉だ。
みんな、傷があるけれど、それでも生きている
 それが、野生では、自然では当たり前なのだ。
 自分の趣味を通じて、目で実際に見て、自分で感じて、考えて至った真理は、小学生が語っているとは思えぬほど達観して悟りの境地のようでもある。
 衝撃を受けた。この世で、傷一つなく、完璧な形で生きているものなどない。虫も植物も動物も人も……。それでも、生き物は、生きているのだ。生きていくのだ。
 何の当たり前と言ったら当たり前なのだけれど、人間は、ときに自らが完璧ではないことを、自らが作りあげたものが完璧ではないことを、自らの周遊にあるもの――モノでも人でも――が完璧でないことを認められないことがある。酷い場合は、それが原因で気を病むこともある。その完璧でないものが、自分の手の外にあるものであれば、見下すことで自尊心オナニーのズリネタ(すんません、下品な言い様で)にしたり、差別の対象にしたりすることもある。そう思うと、人間は脳の回路がデフォルトでキズモノなのかもしれない。でも、生きている。生きていく。

《余談》
 なぜ、突然、何十年も前の古い記事のことを思い出したのかというと、『約束~16年目の真実~』というドラマの主題歌にあるように思う。
 このドラマは、16年前の連続殺人事件の犯人を追う話なのだけれど、謎解きドラマって、ハマりやすいんですよね。それから、音楽が割と良いので、そこも気に入った理由の一つ。
 主題歌『 butterfly effectの歌詞に〈青い蝶になって 羽ばたいても
嵐はおろか 何一つ変えられないけど ボロボロになった この羽根で ひらひらと飛び続けて……〉とあって、これが呼び水となって、古い記憶が引き出されたんだろうな。

《余談 おまけ》
 白状しますと、蝶とか蛾とかが大の苦手なのでございますよ、ワタクシ……。画像を見ただけで、実は蕁麻疹が出て来そうなぐらいブルブルガクガク……。でも、頑張ってぴったりな画像を探したよ。


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