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ミ”ンミ”ンミ”ー 暑い黙れと婆吼える

 今日、今年初めて駅近くの道でミンミン蝉の声を聞きました。
私の住んでいる地区は、ミンミンは少ないんですよね。ジージーっていうあぶら蝉ばっかり。なんでやろ?

 子供の頃、毎年夏になると近くの林でミンミン蝉が「ミ”ンミ”ンミ”ー」と大合唱し、シミーズ一丁にエプロン掛けた婆さんが台所のテーブルで水茶漬けをかっ込みながら「せずねぇ‼(うるせぇ‼ )黙れっ‼ 余計暑い‼」と吼えるのが夏の風物詩となっておりました。
 断わっておきますが、蝉の声はミンミンではありません。ミ”ンミ”ンミ”ンです。「ミ」に濁点付きです。嘘ではありません。マジです。TVやラジオの音がよく聞き取れないくらい。暴力的な音量。それだけの数です。蝉の大群が近所の林に群棲していました。
 そして婆さんが吼えていたのも誇張ではありません。本当に吼えていた。だって、吼えねば声がミ”ンミ”ンミ”ンにかき消されてしまうもの。
 今となっては、クーラーが一般家庭に復旧していないいにしえの昭和の風景。現代では、「ミ」に濁点が付くほどの蝉が棲息しているところなんて、よほどの山奥じゃないとないんじゃないかなぁ。あの林も今はすっかり木々が間引きされて、蝉もめっきり減りました。
 そうそう、昔はカブトムシやクワガタも多かった。デパートでカブトムシやクワガタが売られているというニュースに「?」と首をかしげたっけ。あんなもん、売れるの? カブトムシやクワガタなんて早起きしてその辺で採ってくるもんだろ、と。なにしろ物干し竿を掛ける木柱に砂糖水を塗っとくと、翌朝カブトムシやクワガタが採れたぐらい。田舎の子供と都会の子供の日常の溝は、今より大きかったのかもしれない。

 そんなわけで、自分がBBAになった今でも毎年ミンミン蝉の声を聞くと、子供の頃の婆さんの吼える声を思い出すのであります。

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