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小説家になるための、セリフだけで1シーンを描写する練習小説
セリフだけで1シーンを描く練習です。セリフだけで、情景・感情・人間関係・前後のストーリーなどを、どこまで表現できるか?挑戦します。
『贈刀使者』
敵方の支部長である「石据 香奈枝」に、師匠より贈答の刀を届ける「川島 麻耶」という人物の話です。バチバチと女の火花が散る話。
登場人物の読み
石据 香奈枝(いしづえ・かなえ)
川島 麻耶(かわしま・まや)
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竹岡 裏龍(たけおか・りりゅう)
→セリフの中だけに登場する人物で刀の送り主、麻耶の師匠であり、香奈枝のライバルであり・・・・。
(文章はここから、はじまります)
「はじめて御目にかかります。竹岡流一位剣士の『川島 麻耶(かわしま・まや)』と申します。お会いできて光栄です」
「こちらこそはじめまして、私が石据流支部長であります剣士『石据 香奈枝(いしずえ・かなえ)』です」
「……」
「どうかしましたか?」
「あ、あのう、香奈枝さま、その額の傷は?」
「貴女が気にすることではありません。剣士ならば傷を負うことぐらい当たり前のことでしょう」
「し、失礼いたしました」
「要件のほどは?」
「そうでした。こちらが師匠・竹岡裏龍(たけおか・りりゅう)より、
香奈枝さまに贈呈の『やまとがたな』でございます。刀名を『朝霧』と申します」
「わざわざ、敵地までご苦労様です。あなたのような小娘を、ひとりでここへ寄越すとは裏龍どのも相変わらず、たわけ者でございますわね」
「僭越(せんえつ)ながら、私は竹岡流の一位剣士です。たとえ、この場で数を頼みに斬りかかられようが、香奈枝さま以外のおかたは敵ではございません」
「そうかもしれんな。そしてお前、まあまあ良い眼付きをしているな」
「ありがとうございます」
「裏龍どのよりの刀だが、敵流派の私が受け取る理由がない。そもそも、私に贈呈したいのなら裏龍どのご本人が、直接まいられれば良かろうものに」
「お言葉ではございますが、師匠・裏龍はこちらに出入り禁止になったと申しておりました。しかも、そうしたのは香奈枝さまご本人ではなかったかと」
「そ、そうだったな、忘れていた」
「それと、『これはお詫びの意味も兼ねている』と師匠は申しておりました」
「……」
「師匠は、香奈枝さまの体つき、気性、戦い方、すべてを考えて刀匠に製造依頼をだしております。ですから、きっと気に入ってもらえますよ」
「裏龍どのの心づかい、本当にありがたい。剣の名前も、その赤と黒に飾られた柄も大変気に入りましたとお伝えください。それでも、私は敵流派の者、しかも立ち会う約束を交わした相手からの贈答品を受け取るわけにはいきません」
「はぁ……」
「麻耶どの、わかりましたか?今日の所は、お引き取り下さい……」
「そうですか。私がいうのもなんですが、思い切ってお話しいたします。師匠はきっと、貴女の剣に対する姿勢が好きなのです」
「……」
「その『朝霧』の一刀とともに、師匠も自らのために刀を新しくこしらえております。
香奈枝さまの立場やお気持ちもわからない訳ではありませんが、どうかお納めくださいませんか?」
「裏龍どのも、新しい刀をこしらえたのか?」
「ここにあります『朝霧』と、おそろいの刀として、作っております」
「……はっ、裏龍どのの剣の腕に、とうてい私はかなうものではない。格下である私が、おそろいの剣をもつとは……笑止!ますます、このようなものを受け取っていいはずがない」
「そうでしょうか?きっと師匠は、香奈枝さまと共に強くなりたい、と。共に剣を極めたいと思っているのです」
「共に強くなりたい?宿敵である石据流の私と?………剣は友達ごっこではないわ!」
「話をきいてください。たしかに師匠は私たちより、遙か剣の高みにいらっしゃいます。生まれて物心ついた頃より自分に並ぶものはいなかった、と申しております。孤独なのです。今、ようやく香奈枝さまという実力が近い方と巡り合えたのです」
「実力が近い、だから良い仲になれと?ならば、小娘。お前が裏龍どのと共に強くなればよいだろう?裏龍どのの側にいつもいるお前が!」
「なぜ、なぜ香奈枝さまは、そこまで強情なのですか?どれだけ…どれだけ、うちの師匠があなたのことを」
「……。まあ、まあ良いから……。ほら、手にして持って帰りなさい。受け取れぬ旨の書状を書くから待っていてください。あら、この剣、刀袋の手触りも良いですね、あっ」
「師匠が、刀袋にその香水瓶も一緒に入れたのです。あなたにこっそり贈ろうと。割れなくてよかった」
「……。わかりました。あくまで、これは贈答品として受け取りましょう。道場の飾りとして置かせてもらいます。時々、私も振らせてもらうかもしれません」
「よかったです、これで師匠にほめてもらえます」
「仲が良いのですね、うらやましいです」
「ただ仲が良いだけ、です」
「裏龍どのにお伝えください。必ず、貴方に追いつき、斬る。と」
「わかりました。確かにつたえます」
「ありがとうございます」
「ただ、その前に、香奈枝さまは私が斬りますけど」
「それは、たのしみにしております」
小説は以上です。
香奈枝と裏龍の、後日エピソードを掌編小説としてまとめております。
(自作小説の切り取りを再構成したものです)
この小説のテイストが気に入った方は是非ご覧ください。
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