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【フィナンシェ話#9】お金の話題が、子どもの気持ちや夢を話し合う起点に

 様々なバックグラウンドの方に伺う、子どもとの買い物、お小遣い、お年玉、寄付や投資のこと…。そこから自分の子どもにつながるフィナンシェ(金融家)なヒントを探ります。

 今回はFPとしてご活躍され、小学生に対しておこづかいゲームを開催されてきた竹内さんです。前回のフィナンシェ話でお話を伺った平田さん(記事はこちらから。)からご紹介いただきました。現在、27歳、23歳、14歳の3人のお子様がいらっしゃいます。ご自身の経験や、今後の金融教育についてのお考えを伺います。

■ 親が逃げずにどれだけ向き合うか?

――まず、事前にメールでやり取りさせていただいた中で、ご自身のお子様へのお金の教育で、反省していることがあるとおっしゃっていましたが。

竹内さん:子どもたちが幼いころからずっと働いてきたので、「子どもたちにお金のことを教える」と言った意識は当時全くなかったんですね。でも、一番上の子どもが社会人になったときに、欲しいと思ったら買っちゃう、お金がなくてもクレジットカードで買っちゃうということが起きたんです。私自身がお金の相談を受けているのに、自身の子どもにはお金のことを伝えていなかったなと。これ、記事にしちゃっていいのかな(笑)

 今、振り返ってみると、子どもにとっての祖父母の影響も大きいなと思っていまして。おじいちゃん、おばあちゃんの愛って無制限。それが良い点でもありますよね。たとえば、毎回靴を買ってくれる、お小遣いをもらっているようだから、親からは渡さなくても良いだろう、とか。実際、NeedsとWantsのうち、子どもがWantsだと思った物を祖父母が買ってくれていたんです。

 子どもがおじいちゃん、おばあちゃんに甘えるのは良いことですが、親まで甘えちゃいけなかったんです。買ってくれてラッキー、と思うこともありますよね。でも、もう少し工夫できるところや、自身の両親と話し合える余地があったんじゃないか、と子どもが大人になった今反省しています。だから、自分がおばあちゃんになったときは、ちゃんと取り組みたいなと。そして、今のママ世代にも「自分の親と、子どものお金ことについて話し合っておいた方が良いよ」と伝えていきたいです。

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(写真はイメージです)

――なるほど、親まで甘えてしまってはいけない、というお話は自分自身にも思い当たる部分があります。

竹内さん:結局、お金って夢を叶えるためのツールなんです。でも、子どもが何かを「欲しい」と思っても、なぜ欲しいのか? という子どもの気持ちを紐解いていくことを含めて、私はおじいちゃんおばあちゃんに任せてしまったなと思っているんです。そういうところを親が逃げずにどれだけ向き合えるのかが大事だなと。

 このような経緯もあって、2番目の子どもには、社会人になったタイミングでお金の管理について話をして。将来、どんなふうになりたいか、どうありたいか、というところをまず確認したんですね。長期的にはこんな夢がある。中期的にもやりたいことがある。短期的には、スキーに行きたい…など短・中・長期でお金を分け、仮で金額を設定していったんです。じゃあ、それらに向かってどうやってお金を貯めようか、この金額をこの期間で貯めるにはこれだけの金利が必要だから、投資信託も選択肢になるよね、と。

――そういう将来の人生設計まで含めたお金の話を受ける機会はなかなかないですよね。

竹内さん:そうなんですよね。大学や社会に出るタイミングでは少ないですよね。高校ではそんな授業がこれから取り入れられるようですが。2番目の子どもも、お小遣いは全部使ってもいいという発想だったので、未知の世界だったと思います。このように、伝えることで「貯めるために、お給料とは別の口座を設定しようと思う」と子どもが言い出したんです。あぁ、ちゃんと自分で考えだせたんだなと思いました。

■ お小遣い帳は付けなくていいんです

――3番目のお子さんはまだ中学生とのことですが、お小遣いのあげ方で工夫されている点はありますか。

竹内さん:予算を作る、ということでしょうか。たとえば3番目の子どもが幼いころ、お小遣いの額について話し合ったんです。「500円でいける?」「いや、でも僕はマンガの雑誌を絶対買いたいんだ」「雑誌は530円だから、足りないね。。どうしようか」「じゃあ、マンガの雑誌と、これと、これ・・・・だと1,000円になるから、1,000円が欲しい」というふうに子ども自身が納得して。

 まずは学年×100円から始めてみて、そこから話し合って必要なお小遣いの額を決めていく。お菓子は?ジュースは誰が買う?とかも話してみる。もし何か月かかけて自分で貯めて買いたいような物があれば、貯金額も設定してみて、「貯める」癖も付けてみる。話し合いを通して、お金を自分でコントロールする力が自然に身に付けば良いな、と思っています。

――お小遣い、と言えばお小遣い帳ですよね。私自身がズボラなので子どもに付けてほしいと言えないでいます。どのようにされていますか。

竹内さん:お小遣い帳って、付けるのはつまらないですよね。私も家計簿とか付けないんです(笑)

――えっ、そうなんですか?

竹内さん:実は、私は家計簿やお小遣い帳じゃない方法をお勧めしているんです。まずは、貯める額を取り分けます。次に、残ったお金をどう使うかという予算を作る。予算をいくらにすれば良いか、知るために1ヵ月だけ家計簿やお小遣い帳を付けてもらいますが、その後は予算に足りなかったか? 余ったのか? というのを把握していけば良いんです。予算の金額を使い切るのはみんな上手ですよね。だから、初めに貯める分を取り分けちゃう、という仕組みです。

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■ 投資の意義が分かれば、子どもでも投資を始める

――FP協会の埼玉支部でおこづかいゲームをされていらっしゃいますが、お子さんからはどのような反応があるのでしょうか。

竹内さん:学年によって違いますね。5,6年生向けゲームには、銀行に預けると10%という今時考えられない利息が付くルールがあるんです。だから、どのタイミングで銀行に預けるか、とか手数料をどうセーブするか、とか、すっごい真剣に考え始める。基本はすごろくゲームなのですが、持っている金額を全額落としてしまう、というコマで止まってしまったら、本当に泣いてしまう子もいて。お母さんが「ゲームだから…」と慰めたりね。他にも、寄付をすると、まごころポイントがもらえる。その時の子どもの顔がとっても良い表情になる。すごく喜怒哀楽が出ますよね。

お小遣いゲーム

(おこづかいゲームの高学年用。まごころカードなど様々なコマが用意されています)

 私、おこづかいゲームの中身も大事だとは思いますが、親子でお金の話をする、というのが一番大事だと思っているんですね。お小遣いゲームが終わった後、親御さんから「お小遣いについて考え始めました」とか「お小遣い帳を始めました」「なぜコレを買ってほしいのか、子どもがプレゼンをしてくれました」とか言葉をいただくんです。もうお金以上の訓練になっていますよね。色々な工夫をする。なぜ欲しいのか理由を言えるようになる。お金をきっかけにこうした経験が生まれるのが大事だと思っています。私自身がこういう時間を放棄していた、という反省があるので、後世に伝えるしかないです。

――ゲームに参加されているのはリテラシーが高い方々が多いのでしょうか。

竹内さん:そんなことはないと思いますよ。もちろん全く興味がなければ来ないでしょうけれど。FPとして家計の相談を受けていますが、話をしていくと「子どもに対してお金のこと、どうしたら良いか?」「お小遣いはいくらが良い?」と皆さんおっしゃいますね。このような話題をきっかけに、お子さんも一緒に投資を始めるケースも多いです。

――お子さんも一緒に始めるんですね! とはいえ、ある程度高学年の子ですよね…?

竹内さん:小さいと小学校1~2年生の子も。ある意味年齢関係なく投資はしますね。投資をすることで、株価の動きが気になるじゃないですか。こういうのも含めて親子で勉強になりますよね。
 投資の意義も伝わるのかなと思います。特にお子さんは、「時間」という武器があります。小学校の早いうちから投資を始めて、もし40歳くらいに1,000万円というお金ができていたら、その子の働き方や生き方の選択肢が増えますよね。

 結局、お金の相談って人生相談につながるんです。将来どうありたいか?を描くことが起点です。どんな時期に、どうお金を使いたいのか?を逆算していけば、必要な金額と期間から、目標の金利を計算できる。この金利なら、こんな金融商品に投資すれば良いよね、と何に投資するかを決めていくことができます。

――子どもに対して、投資のことを説明するのはなかなか難しいと思いますが、どのように伝えていらっしゃるのでしょうか。

竹内さん:ある意味、「人に投資をすることと同じ」と捉えています。誰かのためになるサービスを生む会社に、自分のお金を届けることで、その成果を果実としてもらっているんだよ、と。株価が下がったら、むしろ応援の気持ちや、好きという気持ちで投資をしてあげる。株価が上がったら、頑張ったときのご褒美として株を売っても良い。お金を得るため、というよりは、会社を応援するためのもの。自分のお金が世の中のためにもなっているんだよ、という点を大人と子ども関係なく伝えています。

 私自身は、親子でお金の話をする時間を作れなかったので、反省だらけです。だから、今子育て中のママやパパには、自身のお金に対する意識が変わっていくと子どもにも伝わっていく、そんなお話をしていきたいですし、孫に対してという視点で自分たちの世代からも変えていけたら良いなと思っています。

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 自分の親と、そして子どもと、お金のことについて話し合ってみること。そして、話し合うことで、お金の教育に留まらず、「なぜこれが欲しいと思うのか?」「どんな夢を持っているのか?」という子ども深く知ることにもつながる。

 フィナンシェの会として大事にしている「意思あるお金の使い方ができるように」というコンセプト。お金の使い方を起点とした親子の会話で、子どもたちの意思とは? をより深く掘り下げていくこともできるかもしれない、と感じました。私の子どもは低学年のため「今日」という短期の目線が多めですが、「半年先」や「1年後」という未来では何をしたいか? そのために今お金をどう使いたいか? という会話から始めたいなと思います。皆さんも、始めてみませんか?

 竹内さん、この度はお忙しい中ご協力くださり、ありがとうございました!

(取材日:2021年1月8日)

 今回お話を伺った竹内さんはメールマガジンを配信されています。宜しければ、下記よりぜひご登録ください。


 フィナンシェの会では、様々なバックグラウンドの方々に、「子どもとお金」のお話を伺っています。過去のバックナンバーは下記リンクよりご覧いただけます。





 



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