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【デジタル時代のリスキリングの大本命】論理思考その1 ボトムアップ&トップダウン

まず、あなたに質問をしたい。

「あなたの身のまわりで、論理思考力が高いと思う人を具体的に想定してください。そして、なぜその人の論理思考力が高いと自分が感じるかを説明してください」

そもそも論理思考力とは何かということがわかっていないと、その力を向上することは難しい

競技ダンスをやっているときに、背が高く、手足も長く、姿勢がよく、筋力もある、しかもルックスもよい、という最高に恵まれた男がいた。ただ、なかなか競技では勝てなかった。ポイントはひとつで、よいダンスとは何かという、その男の感覚が世の中の標準からずれていたことである。ダンスは芸術表現的な要素があるのでまだよいが、論理思考力の場合は、世の中の標準からずれるとよろしくない。

論理とは物事の筋道であり、論理思考力とは物事を筋道立てて考える力である。「筋道を立てる」は3つの要素に分解できる。すなわち、㋐イコールの関係㋑因果関係㋒対立関係である。これらの関係を満たしていると、人は筋道が通っていると感じる。

イコールの関係は、何と何がイコールになるかというと、抽象的なことと具体的なことである。日々の会話でいうと、抽象的なことを話していて伝わらないときは、具体的な例を挙げて自分の言いたいことを補強するとか、逆に個別具体的な話をしているときには、最終的に自分が伝えたいことを抽象的にまとめて話すことである。

あなたも注意して人の話を聞いてほしいが、論理思考力が高い人とは、こういったことが自然とできている。

学術的には、イコールの関係というのは論証のことであり、論証とは「根拠に基づき結論を導出すること」である。論証には演繹法と帰納法の2種類がある。

演繹法と帰納法

演繹法でおそらく一番有名なケースは、「人間は必ず死ぬ(大前提:ルール)」「ソクラテスは人間である(小前提:事実)」「ゆえに、ソクラテスは必ず死ぬ(結論)」であり、これは前段2つの根拠が成り立った場合に、100%最後の結論を言い切れるという、説得力100点満点の論証方法である。

一方、帰納法でおそらく一番有名なケースは、「日本にいるカラスは黒い」「アメリカにいるカラスも黒い」「ドイツにいるカラスも黒い」「ゆえに、カラスは黒い」であると思われる。これは100%言い切ることは絶対にできないので、説得力では演繹法に負けるが、具体例を吟味しながら、これだけの例があるなら言えるよね的な論証の仕方であり、普通によく使われている。

以上より、確実に説得するためには、演繹法を使いたくなるのだが、ここで問題は、ビジネスの現場では演繹法の大前提に該当するルールがないケースがほとんど、ということがある。

たとえば、「こうやれば100%収益が伸びる」といったルールがあれば、そのルールに従い、やるべきことをやれば演繹的に100%収益を伸ばせる。しかし残念ながら、もしそういうルールがあるとしたら、それは詐欺か不正か、もしくは統計知識が欠如した人が「この薬を飲むと100%収益が伸びます」などと誤った知識で言い切るケースのいずれかであろう。いずれにしても、善良な社会人はやってはいけないことである。

では、どうしたらいいのか?

答えは、ボトムアップ&トップダウンである。あえて英語で略すと、BUTDである。まずは帰納法で、演繹法の大前提となるルールをつくる。そして、あとは演繹法を用いて論証する。この流れは論理的な人間であれば100%説得できる。

これは、実はコンサルティングのビジネスを売るときによく使われる手法である。具体例を見てみよう。

システムを売りたいコンサルタント「このシステムは、日本で一番大きい自動車メーカーのT社に入れて大きな効果が出ました」
自動車メーカーS社のシステム部長「へー」
コンサルタント「このシステムは、二番目に大きいH社にも入れて、そこでも大きな効果が出ました」
システム部長「おー」
コンサルタント「このシステムは、三番目に大きいN社にも入れて、実はそこでも大きな効果が出ました」
システム部長「なんと」
コンサルタント「以上よりわかることは、このシステムは自動車メーカーに入れると、大きな効果が出るということです」
システム部長「そうですね」 → ここで「そうですね」と言うと負けが確定。
コンサルタント「ところで御社は、自動車メーカーですよね」
システム部長「そりゃ、そうだよ」
コンサルタント「以上より、100%確実に言えることとしては、御社にこのシステムを入れると、大きな効果が出るということです」
システム部長「たしかに、そう言われると、そう、なっちゃうね……」

これを参考に、イコールの関係の力を伸ばしていただきたい。

次回、2つ目の原則、原因と結果について説明する。

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