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『BLUE GIANT』/映画感想文

原作未読(存在すら知らなかった)、ジャズ教養なしのド素人です。
「原作では~~」などいろいろツッコミたくなるとは思いますが、ご容赦ください。
(Dolby atmos で鑑賞)


1. あらすじ

青年たちがジャズバンドを組んで成長していく!以上!

2. 点数

81点

いろいろ気になるところはあるが、ほとんど泣かない私が不覚にも泣いてしまった。その力強さに高得点。
Blue Note デビューしてみたくなった。

3. 感想

アニメ映画って

私は小さいころからマンガをほとんど読まない。嫌いではないが、マンガがなくても生きていける。だからマンガ原作の映画にも特に思い入れはない。
実写化はまだいいけれど、マンガ原作のアニメ映画は苦手なジャンルだ。

アニメ映画って、マンガに色をつけて動かしただけでしょ?
あとは豪華なストーリー用意して、ゲスト声優呼んできてさ。

これが率直な思いだ、ファンからバッシングを受けるだろうが気にしない。

それがさらに少年コミックとなると苦手さは増す。

「うおぉぉぉ~~! オレは宇宙でいちばんになるゾ!!」
「やれやれ、腕が鈍っているようだな。お前の実力はそんなもんじゃないだろ?」

汗臭く騒いで夢を追う主人公、たいして面白くないギャグパート、古臭くてキザなセリフのオンパレード、熱すぎる友情。。

もう全然響かないのよ、汚れた私の心には。冒険とか闘いとかヒーローとか、そういう脂っこいもの別にいらないです。


で、本作はどうか?

少年コミックがっつりど真ん中でした。
主人公は「オレは世界一のジャズプレーヤーになる!」と海賊王顔負けのどでかい夢を堂々と宣言し、汗を散らしながら毎日練習を続ける。

バンド仲間のピアニスト(沢辺)は、ツンデレな天才肌役。
はい、これもよく見るやつ。
「やれやれ」と両手をあげたり、「まいったな」と後頭部をおさえたり、昭和のしぐさ満載です。

冒頭30分ほどは主人公3人のバンド結成までの流れを描くわけだが、こういった昭和感満載の動きやセリフが多く鼻についてしまった。
普段マンガを読まない民としては、「まだこんな感じでやってるんだ」が正直な感想だった。

音楽なめるなよ

私は幼少期から音楽(楽器)をやっていた。かれこれ20年近く続けたが、そこでぱったり止めた。
プロレベルとは程遠く、趣味としてやっていたので別に悲しい思い出などではない。音楽を「かじっていた」部類だ。
それでも、当時一緒にやっていた人でいまプロでがんばっている人が何人もいる。なぜか高いレベルの環境に身を置いていた。


本作の主人公3人の音楽歴をみてみよう。みんな18歳で、

大(サックス):高校から楽器はじめる
沢辺(ピアノ):親がピアノの先生で、幼少期から
玉田(ドラム):ド素人、大学で感化されてはじめる

という設定。

・大は毎日独学で猛練習!いまでは観客を驚かせるソロも吹けます!
→ んーん。努力の大切さは否定したくないけど、3年はやはり短すぎる。
そもそもはじめから音符よめたの? 基礎的な音楽知識つけるだけで1年はかかるよ?
あと、正確なリズム刻みたいならメトロノームがあるぞ? 玉田君を使うんじゃなくて。

・玉田も毎日猛練習! 3カ月でなんとか形になってバンドデビュー!
→ いやいやいや、ないわ。マジレスするなんて大人げないけど。
他の楽器にくらべたら音階がないから習得が早いってことにしたんだろうけど、全国のpercussion 民が怒るぞ?
同じリズムで叩き続けるシーンがあるけど、あれがどれだけ難しいことか。
そもそも芯のある音を出すだけでも相当難しい。

何度も単調な基礎練習をしてた人をたくさん見てきたからわかる。

音楽なめてませんか?

音楽は才能8割だと思っている。
沢辺は英才教育を受けてきた自信(過信もあるが)からか、努力よりも才能重視の発言が多い。私は完全に沢辺に同意だ。
幼少期からやっている人とそうでない人の間には大きな壁がある。そのうえで、プロにいくような人との間には当然とてつもない大きな隔たりがある。その先は天才しかいない中で努力を続けられるかといった素質も大事になってくるはずだ。

音楽をかじった程度の身分ではあるが、だからこそ冷静に見てきたこともある。音楽だけでなく、スポーツや芸術の分野でもおそらく似た状況なのではないだろうか。

音楽を描く作品でありながら、あまりにもスポ根的な展開が中心となってしまっており、音楽を軽く扱っている印象になってしまったのが残念。
(まぁ、ゆうてもマンガですからねと軽くあしらうべきなのだろうが)

上原ひろみ姉さん

本作の劇中曲の作曲、演奏はすべて上原ひろみだ。
姉さんは才能おばけらしい。どこがどうすごいのか私の知識ではわからないが、世界トップクラスのジャズピアニストであることは間違いない。

きっと素人でも聴きやすい曲を意識してつくってくれたのだろう。
本作のグレードを上げているのは間違いなくひろみ姉さんだ。

映画で泣かないマン

私は映画でほとんど泣いたことがない。別に自慢げに言うことではないが。
心がすさんだ私には、感動大作であっても心に響かない。かえって感動ゴリ押しだと嘲笑してしまう。

なのに、だ。
泣いた、しかも2回。

「寝不足で目ヤニがねー」という言い訳も通用しないほどにしっかりと、涙が頬を伝った。

泣いた場面は、
① ピアノ教室に通っていた昔の女の子
② Blue Note 出演が決まったと報告を受けたバーのママさん

いやいや、そこですか?! と自分でもツッコミたくなる。
①は昔の自分と重ねたのだとしても、②は意味不明だ。
自分の破れた夢を若者に託すことに共感してしまったということだろうか。
泣くシーンで加齢を感じたが、涙腺は固いままにしておきたい。

アニメーションのクオリティ

演奏シーンが何回かあるが、曲中の作画は難しかっただろう。
音がメインだから映像を派手にするのはよくないが、大事なシーンだから手を抜くわけにはいかない。
いろいろな事情があったのだろうが、特にピアノとドラムの演者の動きは2020年代とは思えない残念なクオリティだった。
別に高度なCGはいらない、でもせめて「弾いてるな」って思わせてくれる動きであってほしかった。
音に集中するため、劇中歌シーンでは目をつぶるのもいいかもしれない。

総評

批判が多くなってしまったが、全体的によくまとまっており、私のような完全未読者でも楽しめる良作だ。ラストは単純なハッピーエンドではなく、ビターな悲劇も用意されている。
音楽のクオリティが本作の最大の魅力なので、音響のいい劇場(できれば館内中央付近)での鑑賞をおすすめします。

※小ネタ
・仙台で「だべ」はないだろ。仙台民怒っていいぞ。
・道路下での練習シーン。上から音が降ってきて、音響技術者のドヤ顔が見えた。

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