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a walk in the park by安室ちゃん【関心領域】

ホラー作品というか、お化けとかそういうホラーじゃないやつのホラー好きな人にとっては刺さるとこついてくるFilm4、access、でもってA24。製作・配給会社のロゴだけでテンションあがる!

人間の深層心理的な部分でぶっさしてくる恐怖。
ある意味ホラーなんだけど、なんていうか深い。

人コワ、サイコパス系大好き。
その中でもヒトラーは実在したマジのサイコパスだし
彼を題材にした映画も好き。でも長年モヤモヤしてたんだよ、「ヒトラー系好き」っていうの倫理的にどうなのと。
娯楽として「好き」とか言っちゃう時点で私の「関心領域」も人としてダメかもしれない。

さてさて。まずイッヌは無事です。
みんなについてまわってかわい子ちゃんです。

まずは度肝を抜かれたオープニング。
不穏な音楽とともに「ただの真っ暗」が数分続く。
不気味でしかない。
でもこれがユダヤ人の味わった恐怖。
ガス室での「なにもない風景」と「不本意に聞こえてくる音」だけ。
真っ暗。こわい。

アウシュビッツ収容所の真隣りに住む一家。
主人公となる家の主ルドルフ・ヘスは司令官だっていうからそこそこの立場の人。
つうか、家の門出て2,3歩で職場につくのに馬に跨る意味www

あ、お馬ちゃんも無事ですよ。なんなら愛されてる。
※でも途中でお口にたくさんピアス開けてるようなお馬ちゃんはなんか可哀想だったけど。

てか、この映画、誰も死なない。
見えないところでは何百万人と死んでいるんだけどね。
あえてそれを描写しない。視聴者側はその歴史をもう知っているし、映画の中の人たちもその現実を知っている。
その見えない部分を「無関心」に描いているのが本当に恐ろしい。


プール付きの広いお庭があって、そこで豊かに暮らす一家。
でも節々に不穏をまき散らしてるんだよね。
その愛でている庭の植物に蒔いてる肥料、ユダヤ人の白骨ですよね。

官庁みたいな人がお家に来たとき、メイドが彼の長靴を洗っていたけど
赤い血がこびり付いてるのかなっていう。そういうとこ。
彼らにとってのただの日常が描かれている映画なんだけど、虐殺に関しての細かい演出が施されている。


関心領域の注目すべきなのは音楽。音。

ずーーっとね、
特に家の中のシーンではずっと轟音っていうか
外からの喚き声とか列車の音(ユダヤ人が収容されているってこと)とかが鳴り渡っている。
一家は普通に暮らしているんだけど、私は途中からこの音が本当に嫌だった。慣れないわ。
でもこの一家は慣れている。これが彼らの“普通”


だけど、この「音」に嫌気をさす人物の描写もあった。
それが「ずっと泣いてる赤ちゃん」と「突然帰ってしまったお母さん」
この家を絶賛してた母ちゃんだけど、夜な夜な煙突から炎が出て轟音がする夜に耐えきれなかった。
あの妻(娘)の母ちゃんなのに、感覚は“常人”だったことが救いだったな。
娘っちも夜になると廊下に一人で佇んでいたりしたよね。
あとはサーモグラフィー映像部分のリンゴまき散らし少女の一家。
ここの母ちゃんも外からの音を遮るように窓を閉めている。


音楽担当さん、本当やばい。めっちゃいい仕事してる

音響はJohnnie Burnさん、音楽はMica Leviさん。
あとで調べたらJohnnie Burnさんは「哀れなるものたち」も手掛けてる人なのね!確かに!そうだ!
この不協和音、嫌な感覚になるのに何か気になる音の作り。
天才やん?
オープニングも強烈だったけど、最高潮なのがエンドロール。
人のごちょごちょ話してるような環境音に近い、なんか気持ち悪さ駄々漏れのBGM。
耳で聴く映画として、映画館で観て良かったと思える作品でした!


夫であるルドルフ・ヘスが転勤になったと知って怒る妻。
単身赴任しーや!私は出て行かん!!ヒトラーにも言っておきー!って。
すごい度胸じゃん?
ヒトラーの一声で何百万と虐殺されているのに、そんな男に物申すなんて。こええよ。
お前が普通に生活できているありがたみとか無いんだよ。
無関心ってこえーーよ。


そもそもこの環境が子ども達にとっていいことなの?
ユダヤ人の歯を集めて遊んだり
リンゴ取り合いっこして罵倒されるユダヤ人を窓越しに見て、自分も上の立場かのように暴言を吐く幼い息子。
植物用の温室に弟を閉じ込めてガス室ごっこしたり。
その時代に生まれ死ぬゆく人達にとったらそれが“普通”なのかもしれないけれど
そうだとしても隣で人が殺されている環境で子育てしたくない。
※ちなみに全く関係ないけどヘスの娘ちゃんがオテサーネクの娘ちゃんに見えて仕方がなかったw

あと途中で、家の裏で
おそらくメイドのユダヤ人と息子がいちゃこらしてるシーンがあったけど
あれはなんなの。まだまだ幼い感じの息子ちゃんだったけど。
ユダヤ人だから何してもいいの?
お父ちゃんルドルフもそうしているように?っていう描写だったのかしら。


まあ結果、
「人として」ルドルフは単身赴任してよかったんじゃないでしょうか。
最後になんで階段でゲーゲー吐いてるんだろうって思うよね。
その前のシーンで診察されてて「痛いとこあったら教えてねー」お腹ポンポンされてたけど異常無しだったし。
病死エンドかと思ったらそうじゃない。
上映後にWikiったけど、ルドルフさん絞首刑だったみたいね。やっぱり病死じゃないわけ。
じゃあなんで吐いてるのか。

彼は単身赴任して「あの音」のない生活をしてきた。
職場までの街路樹も犬と戯れちゃって平和だし
でも頭の中ではどんな風に虐殺してやろうかと「ヘス作戦」を練っている。
単身赴任が終わって、家に帰るよーって喜んでいるはずだったのに
体はゲーゲー拒絶反応を示したんじゃないかなって、思った。体は無関心ではいられなかった。違うのかもしれないけど、落としどころがここしかない。
観る人に委ねまくる映画。


で、なぜか突然現代のシーンへ。
アウシュビッツ収容所、今では観光地なのかな?見学とかできるんだね。
そこを淡々と掃除するスタッフたち。
一見ね、展示の中のおびただしい量のユダヤ人の靴とかみて
すごいことが行われていたんだって感じる大事なシーンだと思う。
だけど、このスタッフ達ですら「無関心」なんだよ。
彼らにとっては仕事でありルーチンであり、安全な環境で、この展示のものは「ただの過去の物」
それがまたなんか怖い描写だった。

だいぶ序盤の方でガス室の設計を説明するシーンがあった。
第一ガス室で500人収容して、その熱波で?隣の第二ガス室もすぐに作動。
第二ガス室で焼いてる間に、第一ガス室は40℃まで冷めるからその間に灰を出して次のユダヤ人達を収容する。
効率的やでー!

え、すごい話してるんだけど。

生きた人間を効率的に焼くとか
そんな設計すごくねー?とか“普通”に話してる感覚がめちゃくちゃ怖かった。
歴史で習う範疇で何が行われていたかは知っているし、それなりに「怖い」と感じていたけれど
なんかリアルっていうか表現できないけど
今若者言葉で「エグい」って多用されてるけどさ
エグい。が一番伝わりやすいかも。軽々しい「エグい」ではなくて。冷酷さというか。
それが生きている対人間にすることなの?

2年前、私の娘が「ゲットー」を舞台にしたミュージカルに出演していた。
絶望しかない塀の中で強く生きる人々が、確かにそこにいた。


まず基本的にあまりストーリー重視の映画ではないかもしれない。
オチっていうオチもないし
自分から読み解いていこうって気持ちがないと
つまらないと感じる人もいるかもしれない。
ものすごく想像力を駆り立てられる作品だった。
やっぱり人が一番怖い。
無関心であることは、時に良いことでもあり悪であることを知れた。

※あ、タイトルは
ルドルフ妻の髪型ね!安室ちゃんのとはちょっと違うんだけど。
冒頭から気になって脳内「a walk in the park」がずっと流れてたw
あれが当時の上流社会の髪型だったのかな?

お団子もりもり系

※上映前の予告編で「お隣さんはヒトラー?」流れててw
ヒトラー題材で心温まるヒューマンドラマとか!!!新しいw

●関心領域
原題:The Zone of Interest
制作:フィルム4 / アクセス / ポーリッシュ・フィルム・インスティテュート / JW・フィルムズ / エクストリーム・エモーションズ
配給:A24 / グーテック・フィルム / ハピネットファントム・スタジオ
公開:2023年
ジャンル:人コワ/ ヒトラー系
鑑賞日:2023.6.30(映画館)

お気に入り度
★★★★★

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