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すばる望遠鏡が系外惑星を直接撮像したことについて

 みなさんこんにちは。ベクトルビクトルです。この前、国立天文台のホームページでこのようなニュースを目にしました。

HIP 99770というはくちょう座の方向130光年の距離にあり、見かけの明るさが4等級と肉眼でも見える恒星の周りを公転する惑星ですが、これほど明瞭に系外惑星が映るということに驚き、この記事を書こうと思いました。すばるはどのようにして系外惑星を撮影したのかという所を探っていきます。


すばる望遠鏡の特徴

 すばる望遠鏡はハワイ島マウナケア山頂に設置された光学望遠鏡(みなさんがイメージされる望遠鏡と同じ仕組みです)で、直径8.2メートルの望遠鏡です。

余談:私が今までに見た最大の望遠鏡は、広島大学宇宙科学センターにある「かなた望遠鏡」で、直径は1.5メートルです。

すばる望遠鏡の最大の特徴は、高度な補償光学装置を多数使われています。
今回の系外惑星の撮影もこれらの装置無しには実現出来なかった事です。さらに、すばるは4200メートルという標高の高い位置にあるのですが、これは大気の揺らぎを少なくさせるという意味があります。

ですが、大気の揺らぎを完全に0にする事は出来ないので、そこですばる望遠鏡はレーザーガイド星生成システムを使います。


レーザーガイド星生成システムとは

レーザーガイド星生成システムを簡単に言うと、地上からレーザーを空に向けて放ち、大気の揺らぎを測定して画像の解像度を上げるための補償光学技術の一つです。

補償光学の効果を示した海王星の比較画像

補償光学があるのと無いのでは歴然と差が出ているのが分かります。


系外惑星の発見方法

系外惑星を発見するのに主にドップラー法トランジット法、そして直接撮像法の3種類があります。


ドップラー法

本来単独の恒星は重心が恒星の中心にあり動かないのですが、系外惑星のような物体が恒星の周りを回っていると、惑星の重力によりわずかに恒星がふらつきます。その際、恒星の波長がわずかに変化するので、(光のドップラー効果)その変化を測って系外惑星を検出する方法です。

この方法は恒星のふらつき具合から系外惑星の質量を求めることが出来ます。

光のドップラー効果を表した図。
恒星が近づくと波長が青に近づき、恒星が遠ざかると波長が赤に近づく。

トランジット法

恒星の手前で系外惑星が通り過ぎた時に減光する生じる、主星の明るさの周期的な変化(光度変化)から系外惑星を検出する方法です。

この方法は、恒星の明るさの変化する具合から系外惑星のサイズが分かります。

国立天文台が撮影した金星の太陽面通過の現象。
これこそが系外惑星のトランジット法の検出方法と同じである。

本来の恒星の光度から何%減光したかを表した値を減光率($${\Delta F}$$)と言い、恒星の半径$${R_p}$$と系外惑星の半径$${R_*}$$の関係式は、

$$
\Delta F = (\frac{R_p}{R_*})^2
$$

という関係式になります。

つまりこれは、木星の半径は太陽の半径の約10分の1なので、木星が太陽を隠す現象が起きれば、その減光率は1%になります。(地球からはこの現象は観測できません)


直接撮像法

その名の通り、系外惑星の姿自体を撮影する方法です。
今まで系外惑星を検出できた個数は2023年4月1日時点で5343個に上っているのですが、その惑星自体の姿を確認できたのは、50個程しか見つかっていません。

実際には中心となる恒星と惑星の距離が非常に近くなってしまい、 また惑星は恒星に比べて非常に暗いため、惑星からの光を恒星の光と分離することは、非常に難しいとされています。そこで、恒星の光を遮光板で防ぎ、撮像します。(コロナグラフ)

たとえこれらの技術を使用しても、恒星が暗いかつ、恒星と惑星の距離が非常に大きい恒星系でないと観測は困難です。

今回のすばる望遠鏡は直接撮像法で系外惑星を撮影する事に成功しましたが、コロナグラフもここでも使用されています。

分析結果

今回発見した系外惑星は、この恒星から太陽-地球間の17倍離れた距離を周回しています。また、この系外惑星の質量は木星の質量の15倍(誤差±1)であると推定しました。直接撮影で発見した系外惑星としては、かなり精密な観測値です。

今回のこの結果はこれからの系外惑星を直接撮影する事への期待が高まるでしょう!


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