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森のおともだちサブレ

オーダーするならひょうたんのくたくただな、と思った。

縄文時代にサイゼリヤがあったら、という設定で、その名も《Jyomozeriya》の架空メニュー。
会計が物々交換で、すべてにどんぐりサラダがついてくる。素材の味をふんだんに活かしたメニューばかり。

どんぐり2つでランチ水バーが利用できるらしいから、対価として支払われたどんぐりはサラダに転用されている気がする。

サケの目が怖いし、ツキノワグマがっつりステーキなんて、食べるというよりは喰われそうだ。

デザートメニューはないのだろうか。
どんぐりクッキーのクワの実添え、とか。
採れたてヤマモモとヤマブドウ、とか。

そもそも縄文時代にそんな概念があったかどうかわからない。

在宅勤務なのをいいことに昼休みにそんなことを考えていたら、どこからか視線を感じた。

ノートパソコンにはさんだクリップ越しに
みてる

ツキノワグマ、もとい紙の絵クマが、仲間になりたそうにこちらをみている。

暗闇で開ききった瞳孔

どちらかというと、今はその隣でひっくり返っている午後の紅茶ミルクティー風味のお菓子のほうが食べたいのだが。

頂きものなのであまり気にしていなかったのだが、紙の絵クマのほうは賞味期限がわりとせまっていた。
カミノエクマはそれを目で訴えていたのかもしれない。

バターサブレ

クマのおなかにリスのようなかたちの焼き菓子が封じ込められている。赤ずきんちゃんのオオカミを彷彿とさせる。

ともだち食べちゃいました

甘栗むいちゃいました、と同じくらいのカジュアルさで、森のともだち食べちゃいました、テヘッと言わんばかりである。

明るくても開ききる瞳孔

賞味期限はおいしく食べられる期間、なのでその日を境に食べられなくなるわけではない。

でもできればメーカー推奨のおいしい期間に食べたいし、賞味期限間近になると油が回り、やはり風味は落ちるように感じる。
本来の味が、遠くへ行ってしまうような感覚だ。

とにかくカミノエクマが「ただちに食べますよね?」と訴えてくるので、クマの頭頂部に貼られたシールをはがす。

手のひらサイズのリス型バターサブレの後方に、同じく手のひらサイズのクマ型ココアサブレが隠れていた。

パッケージのほんのりとした狂気とはうって変わって、まるっとしたフォルムがかわいらしいではないか。

巨大なリスのほうが狂気にみえてきた。袋には、縄文時代のメイン食材であるどんぐりのプリントが。

ココアサブレもバターサブレも、素材の味を活かしたシンプルな味わいだった。
みんなに好まれそうな味で、狂気などみじんもない。

目がプリントされていないため、食べるときに目が合わなくてすむから、どこからかじろうかという葛藤もない。

しかも原材料をみたら、こんにゃく粉が用いられている。血糖値や、血中コレステロール値の抑制効果があるという、あのやさしい粉。

改めてカミノエクマをみると、相変わらず瞳孔は開いていたものの、満足げで包容力にあふれているように見えた。

縄文時代も、イノシシ型のどんぐりクッキーとか、ツキノワグマ型のクルミクッキーとか、こっそり作って楽しんでいたひとがいるかもしれない。

ジョモゼリアのデザートメニューにも加わらないだろうか。

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