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キツネ色にこんがりと
カナリア色やうぐいす色など、鳥の名前が入った色はわりとたくさんあるのに、獣の名前が入った色は意外と少ない。
一般的に知られているのは、ラクダ色、キツネ色、ネズミ色、ドブネズミ色の4つだろう。
ネズミ、堂々の濃淡でノミネート。
さて、わたしがいま聞きに聞きまくっているスピッツの「大好物」という曲に「生からこんがりとグラデーション」というフレーズがある。
それが食パンなのか揚げ物なのかは歌詞中で言及されていないが、ふと「こんがりキツネ色」って英語でどう表現するんだろう、と思った。
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OKGoogle、その通りなんだけど、今はそういうことじゃないの。
こんがりとした焼き色は、golden brownと表現するらしい。黄金の茶色。
たまねぎを、ゴールデンブラウンになるまで炒める
表面がカリッとゴールデンブラウンになるまで揚げる
メニュー名を見るだけでは何だか分からないような料理が出来上がりそうだ。あと、ほんの数秒、芸人のトムブラウンが垣間見えた。
料理というより、服飾的なものを連想する。髪色とか、バッグとか、コートとか。日本語に慣れ親しんでいるわたしは、これではあまり食欲をそそられない。
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フランス語、イタリア語も調べてみたが、海外では食べ物の焼き色をキツネで表現しないようだ。
キツネ自体が、欧米ではトリックスター的な「ずるさ」の象徴だからかもしれない(たしかにあざとかわいい)。おいしい食べ物には少々そぐわない表現である。
イソップ童話にも、ずる賢いキツネが主人公の「すっぱい葡萄」や、タイトルそのままの「ずるい狐」がある。as cunning as a foxはキツネのようにずるい、というイディオム。
いっぽう日本では、人を化かすいたずら好きの動物という面だけでなく、神の使いとしても祀られており、神秘的で高貴な存在でもある。
稲作が発達するにつれてネズミが繁殖し、それを捕食してくれるキツネが豊作をもたらす益獣となったことから、キツネを神聖視する民間信仰が広まったという一説があるようだ。
童話「ごんぎつね」や「てぶくろをかいに」では、心を揺らすような健気なイメージで描かれているし、某CMのどんぎつねさんは、あざとかわいい。
それに、おいなりさんやきつねうどんもある。
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キツネが油揚げを好むという伝承から、農耕神である稲荷を祀る神社では、油揚げやおいなりさんが供え物とされているのだそうだ。
油揚げの色がキツネ色だからかと思っていたが、違った。
どちらが先に生まれた言葉かは分からないが、食べ物界隈でよく使われていて、イメージしやすい。
ありがたい存在でもあることや、人間の日常生活と密接にかかわってきた背景も影響して、日本では「キツネ色」がおいしそうな焼き色の表現として定着してきたのだろうか。
万人がその通りに作れるよう、レシピ等で正確に焼き目の色を表現するなら、こう書かないといけない。
たまねぎを、マンセル値7.5YR 6/8になるまで炒める
180℃の油で、表面がwebcolor#c97e13になるまで揚げる
RGBR(赤):201 G(緑):126 B(青):19のホットケーキ
こんがりCMYK C(シアン):0 M(マゼンタ):50 Y(イエロー):90 K(ブラック):25
食欲がわかない。想像しづらい。もはやキツネに化かされたレベル。
キツネ色でイメージする色は人によって濃淡があれど、ひとまず自分がおいしそうだと思うこんがり色になればよいと思う。
日本語に「こんがりキツネ色」という表現があってほんとうによかった。
ところで、キツネ、油揚げ食べるのだろうのか。油抜きしないでそのまま食べるのだろうか。
どうやら、わたしたちがよく食べる油揚げではなく、農作物を荒らすネズミを食べてくれるキツネへの御礼として、一部地域ではネズミの油揚げを備えていたらしい。
ネズミとキツネ、そんな因縁がありながら、数少ない動物名カラーにノミネートしていたとは。呉越同舟というべきか。
あと、チベットスナギツネ色じゃなくてよかった。
でもこの無の目つき、わりと好き。
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