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ほしいものは宇宙規模

会社の労働組合では、年に一度、組合の予算でレクリエーションを実施している。つまり、組合員なら無料でレクリエイトできる。

東京支部は在籍人数が多いためほぼ飲み会だが、野球観戦やボーリング、バーベキュー、果物狩りなどを行っている支部もある。

何年か前は、奮発して帝国ホテルのランチバイキングに行った。予算オーバーだったので、少しだけ各自で負担してもらった。
20~40代のカジュアルな集団は、重厚で格式高いホテルの中でぷかぷかと浮いていたが、まあ~お料理がおいしかった。

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冷たいバニラアイスにフランベした温かいチェリーソースをかけたチェリージュビレ

昨年は、状況をかんがみて中止となった。東京支部の金庫番として、一応予算は組んだけれど、今年はどうなることやら。

と思っていたら、これが届いた。

選べるカタログギフト。なるほど、本部、考えたなと思った。
カタログギフトは自分のほしいものをじっくり冷静に選べるのがいいし、見ているだけでも楽しい。

兄夫婦の出産内祝でカタログギフトを貰ったときは、気温・湿度計付のデジタル時計を選んだ。

冬場、空調を点けずに寝て、朝起きたら室温が9℃になっていたことがあった。プリンやケーキが保存できる温度で生活していたことに気づき、タイマーで暖房を入れるようにした。
こうして、人間としてのアイデンティティを取り戻すことができた。

友人から体験型カタログギフトを貰ったときは、リフレクソロジーにした。

ちょうど、むくみと攣りがひどく、わたしの脚はまずそうなダイコンと化していた。人にさわられるのが苦手で、整体やボディケアの類とは無縁だったが、これをきっかけに整体へのハードルが下がった。
こうして、人間としてのアイデンティティを取り戻すことができた。

カタログギフトをいただくと、あれば便利だけど自分から進んで買ったり行ったりしないようなものを選んで、人間としてのアイデンティティを取り戻してきている。

今回はなにでアイデンティティを取り戻そう、とカタログのページをめくる手は、早くも体重計をドッグイヤーしている。

逆にいえば、わたしが率先して強くほしいと思うものは、人間としてのアイデンティティからかけ離れたものなのかもしれない。

4~5歳の頃、夜のベランダで月を見上げひとり泣いていたことがある。
事件性はない。故郷を想っているわけでもない。出生地は竹じゃない。

「名月を 取ってくれろと 泣く子かな」/小林一茶

まさにこの句の通り、

お゛つ゛き゛さ゛ま゛と゛っ  て゛ェーーー!!


と大号泣していただけだ。

うすぼんやり覚えているが、夜空に浮かぶ満月がとてもきれいで、ほしくなったのだ。もしくは、宇宙人としてのアイデンティティが。

「このおもちゃほしい?」「このお菓子かってあげようか?」と聞かれても「いらない」と食い気味に素っ気なく答える子供が、太陽系の衛星を泣いて欲しがる。

物欲のスケールの違いに、親はたいそう困惑しただろう。

取れたとて、地球の4分の1の大きさだから置き場所に困るし、かといって、月の土地を買い与えるわけにもいかないし、そういう問題じゃないし。

見かねた母は、黄色いフェルトを縫い合わせて綿を入れ、手のひらサイズの月を作ってくれた。当時、受け取りつつ「そういうことじゃないんだよな」と心の底で思っていた。心底にくたらしい子供である。

今は、夜空に昇り始めた山吹色の満月を見ると、たくあんみたいだなと思う。そして、青空に沈みゆく白い月を見ると、薄く切りすぎた千枚漬けみたいだなと思う。どちらにしろ、ご飯がほしい。

月といえば、今年の中秋の名月は8年ぶりの満月だという。
南の空には、土星と木星も見えるようだ。

月の上には、うお座が見える。みなみのうお座も見える。何の魚だか知らないが、より一層ご飯がほしくなりそうだ。

「さて、今夜、わたしが頂くのは、夜空定食です」

某CMウーバーイーツよろしく言ってみれば、宇宙人のアイデンティも夢じゃない。

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