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小説について考える記事

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だいたい軽めのエッセイになりますが、小説論や創作論と少し絡めて書いています。
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#小説

「成瀬は天下を取りにいく」を読む。200年の意味

200年という時間  戦後の歴史を調べている時に、知り合いの研究者が「現代人はせいぜい2…

味生大昂
1日前
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小説書きの同士に、改めて薦めたい本はない。しかし……

 おすすめの本はありますか?  noteに限らず、ネット上でありとあらゆる人が「名刺代わりの…

味生大昂
6か月前
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「どくろ杯」「ねむれ巴里」を読む。民族的ルーツをもった風景。あと少し建築の話。

 なんとなく「風景描写を楽しめる小説は強い」と思っている。冒頭に入る花鳥風月や、登場人物…

味生大昂
7か月前
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「宙返り」を読む。理屈を超えた、瞳のちから。

 謝罪会見というのは、気が重いものである。  いや、実際に聴衆を集めて謝罪会見をしたこと…

味生大昂
11か月前
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「サージウスの死神」を読む・物語の主人公は呪われている

 佐藤究の「サージウスの死神」には、ギャンブルに取り憑かれている破滅的な主人公が登場する…

味生大昂
1年前
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人生のためにならない話も、漬物樽に入れておく

 この日はお昼のおやつを食べるために、駅前のマクドナルドに向かっていた。天からスポイトで…

味生大昂
1年前
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「テスカトリポカ」を読んでいます・構成は生き物だ

 (若干ネタバレあります)  今読んでいる佐藤究の「テスカトリポカ」の感想をノートにまとめている。まだ4分の3ほど進んだところなのだが、途中経過としてここに書いてしまう。  素晴らしく面白くて、かつ独特の小説だ。エンタメとして面白い以上のなにか稀有な秘密があるはずだと思う。  たまにこういう小説を読む機会に恵まれるけれど、構成が生き物みたいにオーラを放っている。「起承転結」や「ハリウッド3幕構成」といったものを超えて、構成が話を盛り上げるためのツール以上の輝きを持ってい

なんの専門分野も持たない、子供が主人公の小説は「軽い」のか?

 読み始めた小説が、例えばいきなり食事中の雑談から始まると 「これって、エンタメとしては…

味生大昂
1年前
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初期の中村文則が描いていた当事者性

  「私」ばかりの中村文則の小説  ふつう、「私は、私は、私は」という風に自分の話しかし…

味生大昂
2年前
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(現在編集中)共通のルールの下で争う物語

 僕は受験勉強をほとんどしなかった人間なのだが、たとえ生来のズボラな劣等生であっても、他…

味生大昂
2年前
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やる気のない疲れた探偵

 このあいだ久しぶりに探偵小説を読んでいたら、僕の内で、物語の主人公像というものへの見方…

味生大昂
2年前
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小説における個性的な登場人物と、普通の優しい人物が描くグラデーション

 小説を書いていると、ついエキセントリックな人物を出したくなるし、自分が読者でもそういう…

味生大昂
2年前
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これまで読んできた言葉を忘れたくない

 長く本を読んでいると、何かのきっかけで「この小説家さんはもういいかな」と思う時がある。…

味生大昂
2年前
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僕が仰ぎ見ているモノスゴい小説家3人

 今は午後18時46分です。  ガスコンロでシチューの鍋を温めて、もう少ししたら食べようとしている時間です。  1月のはじめなので日は短いです。ちょっと確認してみると、窓の外はひたすら暗闇でした。眺めていると自分が頼りないひしゃげた柳のように思えてきます。  あたりはしんとしています。デスクには何回も行方不明になっては帰ってくるボールペンが4本、ペン立てに刺さっていました。その一本を抜き取って、指先でいじったりしながら、誰がいつここにボールペンを戻したのかに思い馳せる。