王妃マルゴ
あらすじ
1572年フランス プロテスタントとカトリックの対立が激化する中、王家のカトリーヌドメディシスは和平を図るために娘のマルゴとナヴァール公アンリとの政略結婚を決める
マルゴとアンリは愛のない形だけの夫婦になるがアンリはマルゴに同盟を結ぶ事を提案する
コリニー提督の暗殺未遂による錯乱により王シャルル9世はプロテスタントの虐殺を命じ、それはサンバルテルミの虐殺を引き起こす事になってしまう 虐殺の夜マルゴに助けを求めた血だらけの青年がいた 青年はラモール伯爵といい、かつて仮面で顔を隠したマルゴと一瞬だけの情事を交わした事があった
王家の行く末を案じシャルルの弟アンジュー公を溺愛するカトリーヌはアンリを亡き者にしようとあらゆる画策を練るがそれは自身への大きな悲劇を引き起こす事になる
アンリとの同盟とラモールとの恋愛により自身に目覚めたマルゴはラモールとの愛に生きようと決意するのだったが
(物語の重要な箇所と結末に触れています)
サンバルテルミの虐殺の場面など凄惨な場面が非常に多い作品ですが、何と言ってもこの映画はカトリーヌメディシスを中心とした最低限の人間同士の絆も一切捨て去り血と血で争うような肉親同士の悲劇が際立った作品となっています
形だけの王シャルル9世の脆さは周りを常に巻き込み、野心の塊であるアンジュー公は自身が王座に就くためにはどんな手を使う事も厭いません
当初マルゴは美しいが性に奔放な妖艶な女性というイメージしかありません 自立した強い女性というより家族や男性にとって都合の良い女性という感覚の方が強いです
そんなマルゴがアンリから対等な立場として認められ、そしてラモール伯爵と恋に落ちる事で複雑で奥深い女性の面が見えてくるようになり俄然マルゴという女性が魅力的になっていきます
この映画は史実を基に、というよりアレクサンドルデュマの原作(史実と創作を巧みに組み合わせた作品です)をベースにして史実に上手く寄り添わせた作品だという印象が強いです
特にカトリーヌドメディシスという存在を冷酷な女性としてではなく、女性の哀しみ妻の哀しみ母の哀しみ、全ての業を抱えた悲劇的な女性としての側面を描いた事により一層凄みが増し、この映画の中で最も強い存在感で観るものを圧倒します
監督がイザベルアジャーニしかマルゴ役は考えられなかったと発言したように愛に目覚めた後のマルゴの純潔さの溢れる清楚な魅力、そしてラモール伯爵が処刑され彼の首を抱えたままナヴァールのアンリの元へ向かう凄まじい姿は彼女という女優が唯一無二の存在だと言う事を改めて感じさせてくれる姿でした
ヨーロッパ公開版とアメリカ公開版の2つのバージョンが存在するようです(ヨーロッパ公開版は160分)
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