見出し画像

quo eam?

大学2年から6年付き合った彼女と別れた. 理由は単純で, 人生に対する価値観が合わなかったからだ.

思えば付き合う前から彼女と僕の考え方, 価値観が違うことはわかっていた. ただの彼氏彼女としての関係であれば, このことは全くデメリットではなかった. むしろお互いの違いを楽しんでいた. 本当に楽しい6年間だった.

だが残酷ながら, 結婚となると話が違ってくる. 僕は物理学者で, 海外に住んでいる. 一方彼女は会社員で, 日本で働いている. 今年彼女が僕の住む国に来てくれて, とても楽しい期間を過ごした. それと同時に, 僕は彼女と結婚することはできないと実感した.

というのも, 僕は物理学ができるのであれば火星にでもなんでも住めるが, 彼女はもちろんそうではないのだ. そして彼女はできることなら結婚相手とは一緒の場所で住みたいという当たり前の願望を持っていた. これは, 一週間の海外旅行なんかでは当然変わらなかった.

もちろん僕も可能であれば結婚相手とは一緒に住みたいし, 日本で暮らしてもいい. だが, 優先順位がどうしても覆らなかった.

僕には物理学しかない. 彼女には普通の相手との結婚, 幸せがある. そう思うと, だんだんと彼女との結婚が非現実的なものに思えてきた. それが確信に変わってから別れ話をするまでの期間は, 人生で一番辛かった.

別れ話をする際, 「お互いのため」という言葉は死んでも使えなかった. なぜなら, 僕がやったことというのはとどのつまり, 自分の夢のために彼女の思いを踏み躙ることに他ならないのだ.

自己嫌悪と罪悪感で気が狂いそうだ. どこまで僕は自己中心的なんだ.

こんな状況なのに, 僕は頭の片隅でいまだに物理学を考えている. なんなんだ本当に. 勘弁して欲しい. 何が僕をここまで駆り立てるのかわからない.

普通に結婚して普通の幸せを手にいれる. そういう選択肢も確かにあった. それを捨てたいま, 何もわからなくなっている.

僕にとっての一番の幸せはなんだ? わかる. 物理学だ. だが, なぜ物理学なのか? これは全てを捨ててまで追い求めるものなのか? わからない.

僕はこれからも, 自分の夢のために他全てを犠牲にするのだろうか. その先にどんな結末が待っているのだろうか. 本当に恐ろしい.

彼女を幸せにしたかった. 僕のことを忘れて幸せになって欲しい.
これが本心だとわかるのが唯一の救いだ.


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?