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VUCA時代の必須スキル①~ストレスマネジメント~

みなさん、こんにちは。フェルマータ合同会社の寺戸です。

本連載では「一人一人のキャリア」に焦点を当て、変化の大きいVUCA時代の生き方について、みなさんと一緒に考え、トータルなライフスタイルについて情報を提供しています。

今回から「VUCA時代に必要なスキル」について、お伝えしていきます。初回となる本記事のテーマは「ストレスマネジメント」です。

現代は社会の変動性の高く、職業的なアイデンティティが確立しにくい時代です。誰もが迷いながら生きているとも言えるでしょう。

しかし、日本は欧米と違って、カウンセリングを受けることが一般的ではありませんし、環境変化から生じるストレスを自身で緩和しながら働いていくことが求められています。今回は、ストレスマネジメントのエッセンスをお伝えしていきたいと思います。

※本記事では、職場での組織的なケアがなされているという前提で、個人で行うストレスマネジメントについて記載しています。うつ病が疑われる場合、また企業が組織としてのケアを行っていない場合などは個人でできるストレスマネジメントの範疇を越えるため、必ず専門機関への相談するようにしてください。

ストレス=「外から加わった圧力」のこと、毒にも薬にもなる

聞かない日はないだろうというほど日常的に使われる「ストレス」という言葉ですが、元々はカナダの生理学者「ハンス・セリエ」が使い始めたものだそうです。

ストレスは毒にも薬にもなる


ストレスは、①原因である「ストレッサー」と、②ストレスを受けて生じる変化である「ストレス反応」に分けることができます。

ストレッサーは「物理的」「心理・社会的」「化学的」と3つに大別されますが、本記事では職場で発生する「心理・社会的」ストレッサーを主に扱います。

次に、ストレス反応は、心理面、身体面、行動面の3つに分けられます。

①心理面=活気の低下、イライラ、不安、抑うつ(気分の落ち込み、興味・関心の低下)
②身体面=頭痛、肩こり、腰痛、動悸や息切れ、腹痛、食欲低下、便秘や下痢、不眠など
③行動面=飲酒量や喫煙量の増加、仕事でのミスや事故、ヒヤリハットの増加などがあります。)

3種類のストレス反応

こう書くと「ストレスはゼロにした方がいい」と思うかもしれません。でも実は、ストレスはその強弱よって、毒にも薬にもなるのです。


ヤーキーズ・ドットソン曲線

上の図は、「ヤーキーズ・ドットソン曲線」といいます。

右側=ストレスが高くなると、パフォーマンスが低下します。一方で、意外かもしれませんが、左側=ストレスがかからない状態であってもパフォーマンスは下がっています。適度なストレスがあることで、パフォーマンスは向上するのです。

ストレスは強すぎると毒になり、弱すぎても刺激がなさすぎてパフォーマンスは下がってしまいます

高すぎるストレスを、「ほどほどのストレス」に変えてパフォーマンスを高めていくことが、職場で求められる「ストレスマネジメント」であると言えるでしょう。

強すぎるストレスがかかると、交感神経が活性化します。人間も生物であるので、ストレス反応として眠気が覚める、心拍数が上昇するなど「闘争」や「逃走」をするために、準備をするからです。また、外敵に襲われると体内に細菌が侵入することもあったため、過剰な免疫反応を引き起こしたりもします。

原始の時代であれば、このような強いストレスがかかるのは一時的なものだったでしょう。

ただ、現代では「ブラック企業に勤めてしまった」「自分の合わない仕事に就いたけれど、経済的なことを理由に続けないといけない」など、長期間にこの「異常なストレス状態」が強いられることがあります。そうすると身体に慢性的な炎症状態を引き起こしたり、脳の海馬がダメージを受けてしまうと言われています。

これが、いわゆる「うつ病」の状態です。

強いストレスが長期的にかかった状態になると、個人の努力では対応できない場合も多く、必ず専門機関に相談するようにしてください。

ストレスの感じ方には個人差がある、自分の自動思考を知ろう


ストレスについて、理解が深まってきたでしょうか。

ストレスマネジメントは、ストレスをゼロにするのではなく、強すぎるストレスを適度なストレスに変えていくことということを確認してきました。

では次に、ストレスが過度に大きくなってしまう原因について確認し、対応方法を考えていきましょう。


人によってストレスの感じ方は違う

ストレスの感じ方には、個人差がありますが、人それぞれにある「自動思考」が影響しているからです。

自動思考とは、ある出来事があったときに瞬間的に浮かぶ考えやイメージのことで、これまでの人生で体験した出来事や生活環境によって形作られます。そのため、同じ出来事が起きたとしても人によって受け取り方が違ってくるのです。

ストレスに対処していくためには、自身にある自動思考の癖を把握していく必要があります

過度な一般化…その情報が例外的だったり、特殊なものだったりする可能性を無視し、普遍的なもの、絶対的なものだと決めつけてしまう傾向
感情的な推論…自分自身の中にあるネガティブな感情を実際の物事に当てはめて考えてしまう傾向
マインドリーディング…他人が考えていることを勝手に解釈して、裏付けもないのに自分は分かっているように思い込む傾向
ねばならない思考…自分や他人の振る舞いに関して、「~せねばならない」「~すべき」といった凝り固まった厳しい要求する傾向
0〜100思考…白か黒の二極化した考え方をしてしまう傾向

↑のように、人それぞれに特有の自動思考があります。自分がよく同じように考えてしまうということはありますか?

自分自身の自動思考を知り、適切な対応を考えるのに適した方法に「コラム法」をご紹介します。コラム法では以下のような内容を書き出します。

①状況(どのようなことが起こったか)
②自動思考(どのような考えが頭に浮かんだか)
③適応的思考(バランスのよい考え方をしてみる)
④気分の変化(適応的思考を実践してみて気分が変わったか)
⑤今後の課題(気づいたことや、今後の課題)

冷静になれる時間に「適応的思考(バランスの良い考え方)」をしてみることを習慣にすることで、過度にかかるストレスを軽減していくことができます。(自身の認知(考え)や行動を解きほぐし、柔軟に対応していくことを「認知行動療法」といいます。今回紹介するのはあくまでも自分でできる簡易的なものです。専門的な治療を受けたい場合は、専門機関を利用してください。)

また、自分自身でできる具体的なストレス対処方法を考えておくことも有効です。このストレス対処方法のことを「コーピング」とも呼びます。

深呼吸をする、少し席を外して休憩する、お気に入りのアロマの匂いを嗅ぐなど、いろいろ試してみて自分にあったコーピングのレパートリーを用意しておきましょう。いざという時に実践できるコーピングのレパートリーがあることが、普段の安心にもつながります。

1つ注意なのですが、「自動思考」だけがストレスの原因ではありません。例えば肉体的なストレスが要因となり、精神的ストレスを増大させている場合もあります。適度な運動、十分な睡眠、バランスのとれた食事など基本的なストレス耐性を高めます。意外と盲点な場合もありますので、注意してみてください。

注意のフォーカスをズラす=自分だけで解決策を考えない

ここまでストレスの構造(ストレッサーとストレス反応)と、個人差をもたらす自動思考、さらにストレスを緩和するための「コーピング」ついて確認してきました。

最後に、具体的にストレッサーに対応する方法についてみていきます。


フォーカスをずらしてみよう

ストレスを感じている最中には、自動思考により、問題の解決には頭が働かないものです。「急がば回れ」といいますが、例えば相性の悪い上司がいる、自分には荷が重いプロジェクトを引き受けてしまったなど、すぐさまストレスの要因を解決しようとしても、状況的に難しい場合が多いのが職場でもあります。

一時的に解決のための判断を遅らせることも、非常に有効な手段になります。

自分自身で解決策を考える場合も、時間を置いてからできるだけ複数の解決策を考えることで、客観的な解決を試みることができます。

またサポートをしてくれる上司や同僚、または相談窓口や家族・友人などを書き出してみるのもよいと思います。

できるのであれば、サポートしてくれる人と一緒に解決策を考えてみることで、幅広い解決策が検討できたり、人とつながること自体がコーピングとしての機能をはたします。

過度なストレスにさらされていると、どうしてもそのストレッサーに注意のフォーカスが当たります。ただ、ストレッサーにフォーカスし続けていると、当然思考がそのストレッサーだけに奪われるので解決に向かうことができません

前項でお話しした通りに、用意しておいたコーピングレパートリーからチョイスして、自分を落ち着けたり、人と話すことで、ストレッサーから注意のフォーカスをズラすことができます。こうして初めて、具体的な解決に乗り出すことができます。

コーピングによって自分自身でストレス対処するだけではなく、注意のフォーカスをズラすことができたら、職場では「具体的なヘルプ」を出して課題にアプローチすることが必要です。

VUCA時代には、職場でも変化が大きいために柔軟な発想が求められるようになっていくでしょう。しかし、環境が変わることは人にとって大きなストレスになります

ぜひ今回ご紹介したストレスマネジメントを実践してみてくださいね。

※職場にサポートしてくれる人が見つからなかったり、相談窓口がない場合は個人での解決は難しいかもしれません。そのような場合には、必ず専門機関に相談するにしてください。

参考書籍
『メンタルマネジメント大全』ジェリー・スミス
『「不安」は悪いことじゃない』伊藤浩志・島薗進
『マンガでわかりやすい ストレス・マネジメント』大野裕監修
『セルフケアの道具箱』伊藤絵美

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