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リスボンの路上でローキックした話

2018年7月、サッカーワールドカップで世界中が盛り上がっていた頃、私はワーキングホリデーでイギリスのロンドンに住んでいた。そこへ、海外旅行好きの友人が日本から訪ねてきた。ロンドンで数日間一緒に過ごした後、2人でポルトガルに飛んだ。

最初に降り立ったのは、ポルトガル北部の港町「ポルト」。市街地に着く頃には夕方になっており、少し散策してから、ドゥエロ川近くの公園で夕暮れを眺め、友人が調べてくれたレストランに晩ご飯を食べに行った。お店は賑わっていて、少し離れたテーブルに、クリスティアーノ・ロナウド似の若者が座っていて、「ポルトガルにはロナウド級のイケメンがたくさんいるんだ!」と盛り上がった。もちろん食事もポルトガルビールもおいしかった。

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翌日は電車で南下し、「アゲダ」という小さな街に立ち寄った。町おこしのために、町中にカラフルな傘や風船が飾られており、とてもかわいい。色んな場所にウォールアートもあり、ゆったりした下町の雰囲気で、すごく気に入った。

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その日のうちにさらに南下し、夕方に「リスボン」に到着した。

翌朝からは、友人が調べてくれたルートで丸一日リスボン観光の予定で、朝食を買って、トラム乗り場に向かった。道中、通過した広場でふと空を見上げると、何羽ものツバメが飛び交っていて、感動した私はムービーに納めようと、空にスマホを掲げた。短い動画を撮り終えてから、先に歩いている友人に追いつこうとして進んでいると、背後から「ビリッ」と音がした。はっとして振り返ると、現地人らしき太った女性が2人、私のすぐ後ろに立っていた。すぐに、この2人が私のマジックテープ付きの斜めがけ鞄を開けて、スリを試みたのだと分かった。1人の片手にはセルフィースティックがあり、観光客を装っていた。しかし、午前9時前の広場には、他に観光客などおらず、広場に面したカフェのテーブルで数人がコーヒーを飲んでいるだけだった。

私は、海外滞在中に財布を持たないようにしており、カード類もスマホケースにいれていたため、鞄は空っぽだった。しかし、私を狙ってスリを試みた現地人に怒りが湧いて、次の瞬間には1人の女の足首に強めのローキックを放っていた。女はびくりともせず、言葉も発さず、私も何も言わずに立ち去ろうとした。今日は一日観光プランが詰まっているのだ。ここでスリに構ってタイムロスしている暇はない。

私が友人を追いかけ始めると、背後からスリの女達の話し声が聞こえた。ポルトガル語での会話のため、何を話しているかは分からなかったが、なにか文句を言っているように聞こえた。盗人猛々しいなと思い、再度怒りが湧いてきた。ポルトガル語以外でどうやったら伝わるだろうかと考えてから、振り向いて2人に近づき、「f**k you!!!!!!!」と叫んだ。2人はキョトンとしていたが、私の気持ちが伝わっただろうか。カフェでコーヒーを飲んでいた人々は驚いた表情でこちらを見ていた。トラム乗り場に向かっていた友人も、そこで初めてトラブルに気づいた。その場を立ち去り、トラムで落ち着いてから、「大丈夫?〇〇(私)が急に広場でf**k you!って叫んでたから、ビックリした!」と笑っていた。おいおい、危なかったんだよ。

私が海外でスリに遭いかけたのはこれが2回目だった。(1回目はカンボジアで、バイクの後部座席から降りようとしていたところで後続のバイクのドライバーにハンドバッグを奪われそうになったが、盗り損ねて去って行った。私は転んだだけ。)

ポルトガルの地方都市はゆったりした雰囲気だったが、リスボンは少し治安の悪さを感じた。海外生活に慣れているつもりでも、時折こんなトラブルに巻き込まれる。当たり前のことだけど、国内外問わず、常に自分のものは自分で管理することが大切だと思い知らされる経験になった。みなさまもお気を付けて。

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