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【Femtech-X】#2前編 vivola株式会社:女性医療×データ解析スタートアップ

第二弾では、不妊治療のデータアクセシビリティをAIで改善するvivola株式会社CEOの角田 夕香里氏に、会社を立ち上げた経緯や提供されている3種類のサービスを基軸に不妊治療領域の課題等も合わせてお話をいただきました。

前編:起業の経緯から最初に開発されたtoC(不妊治療患者向け)サービス
後編:toB(医療機関や企業等向け)サービスと今後の展望

こちらの2回に分けてご紹介します!

※インタビュー動画はFemtech Community JapanのYoutubeチャンネルで公開しています。
https://youtu.be/LopJwwU5uNM

CEO 角田 夕香里(つのだ ゆかり)氏
2009年ソニー株式会社入社。R&D部門の後、研究所の同僚と社内新規事業提案制度を活用してライフスタイル製品を立ち上げ。2016年退社後フリーとして企業の新規事業立ち上げを伴走。自身も婦人科系疾患や不妊治療の経験を経て、患者が治療を体系的に理解するための形式知化、治療のデータエビデンスへのアクセシビリティに課題を感じ、2020年vivola株式会社設立。
東京工業大学大学院理工学研究科物質科学専攻修了、工学修士

vivola株式会社は女性医療とデータ解析というところを軸に事業領域を持ち、不妊治療を中心にデータ解析の事業を2020年に創業されました。

患者様向けのアプリ「cocoromi」や医療領域、医療機関向けのデータ解析をするツール「vivola-Analytics」に加え、妊活・不妊治療の領域の理解・促進が進むようなセミナーの開催など幅広くtoC、toB、そして企業や自治体に向けて妊活や不妊治療周りの環境改善に取り組まれています。


vivola設立までの道のり

〇起業した背景

私は5年ぐらい不妊治療したのですが、会社を立ち上げたのは治療して3年目です。今は一児の子供がいるんですけども、その子ができる前の治療中でした。

やっぱり長年治療している中で、何回も何回も体外受精をしていたんですけれども、不妊治療って徐々に徐々に治療する度に疾患が小さくなっていって治癒に向かっていくみたいなものではなくて、どちらかというと毎回ゼロリセットのような形で体外受精をゼロイチでやっていくみたいな世界観だったので、前に進んでる感じが長年治療していても全くしないんですよね。

「それって、なんでなんだろう」と思った時に、今までの自分の経過や治療データとかをもっと解析すれば、次の一手が最適化されるはずなのに、というのをすごく単純な思考かもしれないですけれど思っていました。

いろんな不妊治療のストーリーがあって、そのストーリー性にはすごく共感したり勇気付けられたりしますが、いざ自分の治療というところにフィードバックしようと思った時に、年齢や妊孕力などバックグラウンドが違うからちょっと違うかなとズレを感じている中で「もっともっと定量的に測れる指標で、自分が参考になるものを探したい」というのが最初のきっかけです。

いろんな患者さんのデータをSNSとかで集めて自分のデータと比較したりをやってはいましたが、もっと患者が自分からデータにアクセスしていけるような場所というのを作るべきじゃないかなと思い、まず最初はtoC向けの「cocoromi」というアプリサービスで会社を立ち上げました。

「妊娠 / 不妊」の領域で、Deep tech系のプレーヤーとして
データ解析を主に取り組んでいる(左から2番目のカテゴリー下段)
Femtech Community Japan発行の「2023年最新版 国内フェムテックプレーヤーマップ」より

〇社名、ビジョン・ミッションに込めた思い

vivolaの最初の「vivo」って聞いたことあるかなと思うんですけど、語源はラテン語で「生き生き」とか「元気ハツラツ」という意味なんです。最後の「la」というのは、フランス語の冠詞「a」と同じで、1つの人生をいきいきと生きていくということを表現したくて、「vivo」と「a」を組み合わせました。

やはり「自分が納得いく人生を生きていてほしい」という強い想いがあり、自分自身もそう思っています。様々なライフステージで起きる女性の健康課題によって生きづらさを感じたり、生活面やキャリアを諦めるということもあると思いますが、諦めなくても良い世界を作っていきたいというのがvivolaのビジョンになっています。

そのためにエビデンスのある情報をしっかり集めて自分自身で判断していくことが納得に繋がると思っているので、そのために必要な情報を提供していくのが、うちのミッションだと思っています。

事業内容

(1) toC向け不妊治療データ 分析アプリ「cocoromi」

患者様向けのアプリ「cocoromi」は不妊治療患者の方、特に高度生殖補助医療の体外受精をされている方をメインにしたアプリです。不妊治療は非常に頻回の通院が必要なのが特徴でして、かつ毎回血液検査とか、超音波エコーで卵巣の中の卵胞の数を数えたり、その大きさを測ったりしてデータが患者さんに渡されます。患者さんは自分でExcelに記録したり手帳やSNSで記録をされているのですが、この情報をアプリで一元管理ができますよというのが機能の1つ目になっています。

さらに記録していただいた内容を基に、いろんな人の統計データではなくて、自分とバックグラウンドが似ている人、私たちの定義では「同質データ」というのが閲覧できるような分析機能をつけています。この同質というのは、女性だけではなくて男性の方のデータも入れられるようになっているので、カップルとして同質の方々のデータが閲覧できるようになっています。

それ以外にもコミュニティの機能や病院検索や医師インタビューなどの機能、コンテンツなども入れていますので、不妊治療に対するリテラシー向上が出来るようなサポートをしています。

cocoromi のユーザーインターフェース

──保険適用になった2022年4月前後でユーザーの属性やコミュニティでのトレンドの変化などありましたか?

実はアプリの登録されている年齢層は30代前半の方々がボリュームゾーンです。不妊治療全体からすると30代後半~40代前半が全体のボリュームゾーンなので、保険適用で全体の患者さんの低年齢化とかが言われているかと思いますが実は我々のユーザー層の母集団はあまり変化はないんです。

トークルームの内容も旦那さんとの問題であったり、仕事との両立であったりと保険適用になろうがなかろうが話している内容は同じで、依然として続いているような問題をよく悩み相談されていらっしゃる印象です。

──周囲の理解度なども変わらず大きな問題でしょうか?
私たちのアプリの1つの狙いとしても、定量的なデータがある事で、パートナーの人とも会話がしやすくなるんじゃないかというのがありました。どうしても感情的になりやすい中で、治療についてパートナーの男性側の方が知ったとしてもあんまり理解できない。

感情論で話をしてしまうとすぐ喧嘩になってしまうと思うんですよね。ただ「どうしよう」と漠然と聞くよりも「データとしてこうなってるんだけど、どう思う?」と言えると、男性もそれを材料に話が組み立てやすいのではと思っていますし、ユーザー様からも同様のご意見を頂いております。

令和3年度経済産業省 フェムテック等サポートサービス実証事業 採択

──経済産業省の助成金プログラムではそのようなコミュニケーション支援の取り組みをされていましたがいかがでしたか?

もう少しブラッシュアップしないとなかなか本リリースにはいけないのですが、約40組ぐらいの方にご参加いただいて、アプリで治療を記録しているときに第三者的に介入するというようなことをその時は実証実験しました。

例えば採卵の周期であれば、パートナー側に「今こんな女性側に負担がかかっているのでケアしてあげてください」とか、逆に男性にとっては女性が多い産婦人科に行くのは実はすごく心理的ハードルが高いので、女性側もちゃんと理解出来るようにアンケートとかを見せたり。

実際に参加したユーザー様からは、「共働きでなかなか話す機会がないところを、常に第三者が伴走してくれるというところで、常に話す機会やきっかけを作れました」や、「ちょっと余裕のある日曜日の夜に話をして、また1週間始まるみたいな流れにしていたので、そういうのリズムが作りやすかったです」とか。

その後、数ヶ月経ってからご連絡いただいた1組のカップルが無事不妊治療がうまくいったとご連絡いただいたときはすごく嬉しかったです。こういう形でアプリというツールを使ってパートナーシップのサポートをするということも、生殖の領域ではすごく重要なのでうまくサービス化していきたいなと思っています。

──妊娠・出産までトラッキングされてますか?
妊娠はもちろんさせていただいています。ただやっぱり出産だと、別のアプリに移行される方が多いので、本当にお子さんを産んだというところまではなかなか分からないのですが結構ご連絡いただけています。そのときは社内でも共有しています。

自分がユーザーだったら出産したらvivolaのサービスのことを忘れてしまいそうなので、わざわざご連絡いただけるってすごくうれしいなと思って社内でも励みになっています。

──cocoromiの次のステップは。

やはり患者さんの意思決定はすごく難しいと思っています。データがあってそれを読み解く力があったとしても、自分の行動に移し替えるということに実はすごくハードルがあります。実は心理面もすごく影響しますし、その人のもともとの行動の癖、例えばすごく数字変調な人達もいれば、もっと別のものを重要視される方もいらっしゃるので、それぞれが行動に移すまでのトリガーが異なってくるんだろうなと思っています。

なので個別対応で次の行動に移りやすいようなサポートをしてあげないといけないんじゃないかなと思っていて、キーワードは私の中では「行動変容」です。うまくアプリの中に組み込むことで、もうちょっと一歩踏み出してもらえるというのがあるのかなと思っています。

後編に続きます。
https://note.com/femtechjapan/n/n7f058ccd3fde

vivola 株式会社ウェブサイト

インタビュー協力:vivola 株式会社 CEO 角田 夕香里氏
インタビュアー:Femtech Community Japan 理事 皆川 朋子
取材協力:Femtech Community Japan 金井 響加
執筆:Femtech Community Japan 城口 薫

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