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【Femtech-X】#3前編 じょさんしGLOBAL Inc. CEO 杉浦加菜子氏インタビュー

【Femtech-X】はフェムテック産業の「今」を伝え、「未来」をつくるメディアとして、日本のフェムテックプレーヤーの創業の思いや事業概要を伝えています。

第3弾として、Femtech×健康経営スタートアップ株式会社じょさんしGLOBAL Inc.の杉浦 加菜子 氏に、起業の背景や社会的インパクトについてお話しを伺いました。

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※インタビュー動画はFemtech Community JapanのYoutubeチャンネルで公開しています。
https://youtu.be/3JUF_2CNyek

じょさんしGLOBAL Inc. 杉浦 加菜子 氏

1.海外での子育てが、起業に大きく影響

──これまでのご経歴を教えてください。

病院で助産師として働いていましたが、退職後に妊娠・出産・子育てをオランダで行いました。その時に、妊娠・出産・産後や女性の健康まわりの課題を感じ、起業しました。

現在は「誰もが心と身体を大切にできる社会を作っていきたい」と思い、事業を進めているところです。

──助産師として、Femtech領域で起業したきっかけは。

助産師として病院内で働いていた時には、「産後うつ」という社会課題がここまで大きな課題だということを実感できていませんでした。

しかし、病院から一歩外に出て、当事者として妊婦・母親として実感することが多くありました。
「産前産後の切れ目ない支援を」と言われているが、切れ目だらけじゃないか。女性の健康まわりって、実はなかなか注目されていないなどです。

また、女性だけではなく、男性も長時間労働が当たり前です。働けるだけ働いて「健康は二の次なのが当たり前」なのに違和感を感じました。健康をないがしろにすることで、 私たちが病院で見ていた妊娠中や妊活されてる方の課題に繋がると思い、起業しました。

じょさんしGLOBAL Inc.の企業理念

2.日本と海外の妊娠・育児の違い

──パートナーの方の長時間労働によって、第2子の出産が全然違ってくるというデータも出ており、長時間労働は女性だけの課題ではなく、男性側の課題でもあります。
海外でも子育てをされたご経験から、日本とオランダの妊娠・出産・育児環境の違いや、感じたことを教えてください。

私は、第1子は日本で産み、9か月頃までは日本に住んでいました。その後、3年間オランダにいて、第1子が3歳になるまでと、第2子をオランダで出産しました。

オランダでは、夕方に公園に行くと、16:30くらいから両親が揃って子どもと遊んでいる姿は、平日でも普通に見受けられました。スーパーに平日16時以降に行くと、家族そろって買い出ししている姿が当たり前だったんですね。

日本では、平日に公園やスーパー行っても、基本的には母親とお子さまが多いです。 そういう光景からして、まず全然違うと思いました。

オランダの特徴として、小さい子どもがいるご家庭は、男女ともにパートタイムという働き方が可能です。パートタイムですが、 正社員としての福利厚生などの制度面がしっかり守られているのが、国の制度としてあります。

女性側も男性側も、例えば「お互い週3日勤務で、育児中は働こう」という制度が、国として設けられてるのが大きな違いと感じました。

──ご自身が海外で出産・子育てされた経験から、起業で生かされている部分はありますか。

日本で当たり前なことが、海外だと当たり前ではないことです。また、子どもの幸福度の違いが、親の働き方や会社でのあり方に影響すると思うので、会社の風潮や風土など、そういったところも変革していく必要があると感じています。

左から、Femtech Community Japan 木村、じょさんしGLOBAL Inc. 杉浦 加菜子氏

3.創業の想い。ビジョン、ミッション、バリュー

──ビジョン、ミッション、バリューにも、杉浦さんの原体験から込められていると思いますが、どのような思いでビジョン、ミッション、バリューを作られたのでしょうか。

やはり妊娠や出産は、人生に1度あるかないかの大きな人生イベントであり、そこを大事にできない環境は絶対になくしたいと思ったのが、最初のきっかけです。

事業が進んでいくと、妊婦さんだけじゃなく、みんなそれぞれ「健康があってこそ生きたい人生」を過ごせるので、健康をないがしろにしてまで生きていく意味はなんだろうと、ちょっと大袈裟ですが感じました。

健康の基準は、みんな共通して一緒ではないからこそ、個人に合った健康の大切さを伝えていきたいです。個人の価値観を大事にしながら、Well-beingな人生の生き方をして欲しいと思っています。

じょさんしGLOBAL Inc.のミッション、ビジョン、バリュー

4.男性からの相談事例

──杉浦さんの著書『「産後うつ?」を見逃さない』では、男性の相談エピソードも多かったです。男性の産後うつや、男性上司の方が「部下に妊婦さんがいて接し方がわからない」というエピソードもありましたが、具体的に印象に残っているエピソードはありますか。

海外に駐在している男性からのご相談で、 奥さまが妊娠・出産で、うつ傾向にありました。しかし、上司や同僚には「妻がうつ傾向で家庭が大変とは言えない」とおっしゃっていました。

理由を聞くと、「上司や同僚に伝えることで、人事評価が下がるのではないか。今後のキャリアに影響するかもと思うと、口が裂けても言えない」とのことでした。

海外で、自分が奥さまと子供を支えなきゃいけないが、会社には自分のつらい状況を伝えることができない時点で、女性だけの課題ではないと思います。

男性も、心身ともに健康で、しっかりパフォーマンスを出して働くためにも、性別関わず、個々のWell-beingな状態を、社会や会社が支援しないと、 有能な人材が会社に残ることが難しくなると感じています。

出典:Illustration by Storyset

5.男性と女性の産後うつの違い

──男性と女性の「産後うつ」の違いや、男性ならではの特徴は。

女性は、妊娠・出産をしているので、身体の変化やホルモンバランスが急激に変わります。そういった身体の変化が1つの原因と言われています。

男性の産後うつは、身体の変化は起こらないので、「心理的」「社会的」な部分が課題と言われています。

心理的な部分だと、「自分が父親として頑張らなければいけない」「自分が倒れちゃダメ」というプレッシャーです。社会的な部分だと、周囲の支援や理解が得られないというのがあります。

出典:Illustration by Storyset

6.男性の産後うつの解決策

──日本の傾向として、男性が背負いがちな文化的側面もありますが、じょさんしGLOBAL Inc.では、どのような方法で、解決に導いているのでしょうか。

男性の心理的な部分は、やはり社内ではなかなか言いづらいということです。当社は第三者で、会社に関係のない人だからこそ言えることがあります。

さらに、日常の生活で会わないです。遠いところに住んでいる関係性だと、自分の生活に直接関わりのない人に話すことで、楽になれたり、ひとつの拠りどころになれます。

当社では、ただ話すだけではなく、専門家だからこそ「次のステップとしてこういう解決策がある」という提案が可能です。相談窓口の形で設けています。

社会的な部分だと、企業の場合はやはり周囲の理解です。なぜ、健康が大事と言われてるのかということを考えたり、また、みんなそれぞれ違うことで悩んでいたり、身体や心の不調があるということを知ってみることが大切です。

プレゼンティーイズム(従業員が心身の不調を抱えながら仕事をしている状態)は目に見えない部分も多いです。パフォーマンスに影響する「身体や心の状態」を顕在化させるためのサーベイを、企業に対して実施しています。

出典:Illustration by Storyset

7.後編

具体的な法人向けサービス内容や、展望についてお聞きしています。

後編はこちら
https://note.com/femtechjapan/n/nd0f807a7ae1b

【インタビュアー・執筆:Femtech Community Japan 理事 木村 恵】
生保で健康増進型保険の企画、損保で大規模システム開発のプロジェクトマネジメントなど、保険業界に20年近く在籍。業界団体の理事、NewsPicksトピックスオーナー、スタートアップ顧問を兼任。
「女性ヘルスケア×イノベーション」の専門家として、起業家支援や大企業の新規事業相談に応じている。社会情勢や海外ビジネスモデルに関する考察をメディア等で多数発信。経営学修士(MBA)。

【取材協力:Femtech Community Japan 金井 響加】
京都の大学でジェンダー論を専攻しながら、Femtech Community JapanでSNSを担当。ジェンダー平等の実現に向けて、最新のトピックスを発信しながら、誰もが自由に自分らしく生きられる社会の実現に貢献したいと考えている 。

8.Femtech Community Japan法人会員募集中!

Femtech Community Japanでは、スタートアップ・大手企業、VC・投資家、⼤学・研究機関、医療・ヘルスケア関係者メディアパートナーなどが集まり、Femtech関連の取り組み・情報共有や現状の課題と今後に向けた議論・ネットワーキングなどを行っています。

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