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糞フェミでも恋がしたい (その37)

私の名は能條まどか。糞フェミだ。

糞フェミでも恋がしたかったのだ、そして、恋のチャンスは、立場や性別や社会的諸々に関係なく、誰にも巡ってくることを知ったのだ、それは唐突にやってきて、素っ気なく去ろうとするのだ、だから、必死でつかまえなくてはダメなのだ、恥も見栄も外聞も、なにもかも投げ捨てて、必死でつかまえなければ、すがりつかなければ、去ってしまうのだ、だからわたしはなにもかも捨てて、必死で、見るも無惨に、見るも正直に、見るも素直に、自分自身の芯の部分だけになって、素っ裸になって、すがりついたのだ、そして恋を、それはもう、ほんとうに二度とはないような恋を、欲しくて欲しくてたまらなかった恋を、全身全霊でつかまえて、自分のものにしたのだ、溶け合ってひとつになったのだ、ひとつの心になったのだ、綺羅君と、そしてそして、なんと素晴らしいことに、恋する者たちには、ひとつに溶け合うべき身体がある、なんという僥倖、なんという快楽、なにもかも自然が与えてくれたものだ、生命の神秘だ、この素晴らしい生命の神秘を、謳歌することこそ、真っ直ぐに生きることだと、私は思うのだ。

まず自分の生理の周期をしっかりと管理した、そのうえで、クリニックに相談しつつ、低容量ピルを処方してもらう、これで完璧だ、せっかく処女膜を破ってもらうのに、コンドーム越しでは夢も希望もない、しかし、中学生男子である綺羅君に射精を我慢しろというのは、不可能の上にも不可能、私が何を言おうと、泣こうと喚こうと、容赦なく膣内にぶっ放すだろう、じゃあもう私がそれを前提に対策を練るしかない、つまり、期せずして妊娠するのを防ぐためには、避妊のための準備が不可欠というわけだ、周到に、怠ることなく、粛々と備える、それが私流でもある、ぶっちゃけ、いつ孕まされてもうれしいのだが、社会的にはそういうわけにはいかないし、私も綺羅君も、まだまだ社会の中で人生を送らねばならない、というより、送りたい、楽しくいっしょに過ごしたい、暮らしたい、そのためにできることは、すべてしておかなくてはならない、運命の女神は備えるものにこそ微笑むのだ、というより、微笑まなくても微笑ませてやるぐらいの気概で生きなくてはダメだ、そのかわり、発情した中学生男子の体内から精液が消えてなくなることなどありえないから、何度でも、どれだけでも、射精してもらうことができるのは、ほんとうに素晴らしい、人間万歳という気持ちになる、大自然の力に平伏す、全雌が平伏す、私も平伏して、綺羅君に、何発も何発もぶっ放してもらおう、この私の、愛に満ち溢れた膣に、子宮に、それはもうあこがれではない。

期日はクリスマス、そう、クリスマスだ、日本中の雄と雌がセックスする日だ、この日に孕まされる雌も多いだろう、考えてみれば、10月に生まれる子供は、親がクリスマスに交尾した動かぬ証拠だ、証明だ、10月が誕生日のヤツは、受精した状況も想像できる、じゃあ私と綺羅君がセックスしたっていいだろう、綺羅君が私の処女膜をぶち破るには、ちょうどいい、そのぐらいあからさまに、世の中がセックスに満ち溢れている日のほうが、恥ずかしく、みっともなく、私と綺羅君にふさわしい、場所は、ラブホテルでもいいが、せっかくだから、小洒落た格式のあるホテルにしよう、偉そうな名前のあるところにしよう、そういうのは、母親に頼めばなんとでもなる、どういうルートか知らないが、あいつはそういうのが得意だ、コンラッドか、シャングリラか、アマン東京に、予約をねじ込んでもらおう、そうしよう、なんかめっちゃ盛り上がってきた、興奮して、穴もぐちゃぐちゃになってきた、いい感じだ、いい感じ、雌はこうでなくっちゃ、動物らしく、快楽に正直でなくっちゃ。

そうこうするうちに時間が過ぎ、秋も深まり、冬の声が聴こえ、そしていよいよ、待ちに待った12月24日は来た。

昼過ぎに、いそいそと車に乗り込んだ私は、綺羅君をお迎えし、ちょっと都内をドライブと洒落込む、綺羅君はピンクで淡い花柄で超カワイイひらひらの甘い甘いロリータを身にまとって、私はちょっとシックな赤と黒のゴシック風のドレスを身にまとって、外から見たら、どんな関係の二人なのか、ぜんぜん分からないだろう、いいなあ、そういうのは素敵だ、LGBTってのは、そうじゃなくちゃいけないと思う、どういう関係か、ぜんぜんわからない、でも、わからないところがいいんだ、わからないものを怖れるのは、未開の民族だって、何かの授業で先生が言っていた、十分に知性を持って、理解力を持って、洗練された感性を持っている人間が、わからないものを怖れるなんて、バカげているを通り越して、恥さらしだ、こんこんちきだ、こんこんちきってなんだろう、まあいいや、私たちは、原宿から表参道を、こういう日は人混みも楽しいなんて思いながら、手を握って、仲睦まじく、ゆっくりゆっくり歩いて、ときどきキスをして、それはそれはいい感じで、クリスマスの午後を過ごす、ショコラティエで甘いものを飲んで、二人の気持ちを、もっともっと甘くする、甘くなった二人が、ひとつに溶け合って、チョコレートのように、ぐるぐるぐるぐると、どこまでも混ざりあい、混ざりあって、新しい世界を生み出す、それはまるで、世界創世の逸話のように、今もなお、人間の心と身体を支配する、生命の秘密だ、魂の結び目だ。

行こう、二人で、秘密の向こうに、そう心で呟きながら、私は、お皿に残った最後のボンボンショコラを、綺羅君の口に入れた。

つづき→ https://note.mu/feministicbitch/n/nc984665420dd

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