☆ 近くのクリニックが閉じてしまった。健康を見守るのは誰、、、   ☆☆

近くの内科クリニックが閉じた。
この地域で一番古いクリニックである。

お袋が1か月ぶり、下旬になって、毎月の薬をもらいに行った。
受付のいつものおばさんに、月末が診察の最終日だと言われた。
薬だけもらうつもりだったけど、
驚きつつ、挨拶したくて、診察をお願いし、先生に会ってきたそうだ。
最後には、先生の方から求められて、握手をしてきたそうだ。
「わたしも頑張ります。あなたも頑張ってくさだい」と、言われたそうだ。
2年くらい前からだったろうか、診察・面談のとき、 
以前と比べて、オーラというか、先生が発する周りのエネルギーが、
急に弱くなってきたような印象を受けていた。
昨年の年末の休業開始日が、都合により、ということで、一週間早かった。

若い頃、大きな病院で勤務医を努め、実績をつみ、自信も得たのだろう。
そして、内科・胃腸科を専門に開業し、わたしたちの健康の見張り番を勤めてくれた。
頼れる存在だった。
血液検査の結果が出たりして、さらに精密検査が必要と彼が判断したときには、診察中に、その場で受話器をあげ、地域指定の総合病院や近くの共済病院などに連絡して、MRAの検査予約をとってくれるような先生だった。

薬についても「本当は、あまり飲まないほうがいいんだけど、強くないやつで様子を見ようか、、」
「健康には、食事が一番だよ」
「わたしは、毎日スクワット100回やってるよ」
利益追求の先生ではなかった。

コロナで、外出もままならない時期には、眼科の薬も処方してくれた。
お袋は、皮膚科の薬も、もらっていた。
患者の立場がわかる先生だった。
閉院を知ったのが、あまりにも遅かったので、挨拶、診察にもいけなかった。
これからの彼の新しい航海の幸せを願わずにいられない。

この半生で、医者にも色々あるのを見てきた。
届いた検査結果の資料しかみず、患者の様子をみない、患者の体をみたがらないヒトもいた。
お袋が内科で2週間入院したとき、皮膚の異常には、気づかない。
家族が指摘して、「そうでしたか。皮膚科へ連絡しときます」
と言っていた。
一週間以上飲み続けては、いけない強い痛み止めを1ヶ月分だすセンセ。
調剤薬局で指摘されて、難を逃れた。
慣れないDIYで指を切って、皮膚科の医院へ行ったとき、日常の良くある引っ掻き傷や擦り傷、打ち身用に、化膿止めを数本多めに出してもらいたいと話したものの、一本使いきったら、また来なさいというセンセ。
患者の日常も、そんなに暇ではないのだが、と思ったものだ。
職場の健康診断でひっかかり、念のためということで、初診で大きな病院へいったときのこと。
診察室へ呼ばれて入ったら、わたしが、予想外に若輩に見えたからか、
なんなのか、カルテを手にとって、スッとカーテンの奥へ立ち去り、誰かをどなりつけているエライ、センセ。
「何でこんなの俺へ回すんだ」
良く聞こえた。

やめてほしくない先生は、
「わたしも頑張ります。あなたも頑張ってください」という。
わたしの場合は、ストーカーのように、まとわりつくアルコールを絶つ方向で頑張ろうか、、、
ん。ストーカーはわたしの方かも、難問だ。
もうひとつ、時間の中をふらふらと徘徊せず、生きることも、課題のようだ。

数日後、クリニックの入口前を通ったら、ガラスに貼ってあった閉院の手書きのお知らせには、
体調がかんばしくなく、やむを得ずクリニックを閉じる旨と、
開院以来30年にわたる、感謝の言葉が記されていた。
わたしは、感謝を伝えられていない。
彼は、聖職を全うした。

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