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好奇心の糸を世界に繋げる

絡まった糸

赤ちゃんからのプロセスを振り返ってみましょう。赤ちゃんは受けとめてくれる地面の抵抗から自分の身体のつながりを感じ、手で触れるものはなんでも口に持っていって確かめようとします。好奇心の糸を世界に投げかけつなぎ留めていくかのように、たくさんの体験を通じて世界と関係を作り、意味のあるものや場所に変えてきました。

しかし、成長するにつれて辛いことをしたり、我慢をしたことで「よく頑張った!」と評価される文化に浸ってしまうと、いつの間に正直であることをやめ、だんだん自分のことが見えているようで見えなくなってしまうかもしれません。

そして、好奇心の糸を投げかけるのをやめてしまったり、投げかけた糸も絡まってしまうように思います。

絡まった糸はどうやったら解けるのでしょうか?

急いですぐに解きたい衝動にかられるかもしれません。その感情から、急いで目についた結び目の解れを引っ張ったとします。そうするとどうなるでしょう?

思いとは裏腹に、糸は硬く新たな結び目を作るでしょう。

その状態でさらに目についた糸を無理やり引っ張ったとします。

さらに、新たなこぶができてしまい望んだ結果と反対の方向にいってしまいます。

身体にも同じようなことがおこっているかもしれません。

少し調子が崩れて身体に緊張やこわばりを感じながら、急いで仕事をこなさなければならない時があるかもしれません。緊張やこわばりは忘れたことにしてお構いなしで進め続けてしまうと、そのことで痛みや病いに変わっていくかもしれません。身体を壊してしまっては身もふたもありません。

速さと急ぐことの違い

モーシェ・フェルデンクライスはこう言っています。

「急いでいる人というのは自分が遅すぎると思っている人です。それほど遅くないならば、別に急ぐ必要はないわけです。急ぐ人を見ればわかりますが、そういう人は心の中でわたしはのろくて、どうしようもないと思っているのです。そこには存在全体に浸透している不安があることがわかります。」
「あせらず時間をかけることです。時間をかけることができないのは急いでいる証拠であって結果はよくありません。では、これから時間の観念を忘れて速くやってみましょう。しかし、速さと急ぐことを区別しながら」

M.フェルデンクライス「心をひらく体のレッスン フェルデンクライスの自己開発法」

いつものやり方でなく、時間をかけてよく糸の結び目を観察して、上から下から斜めからも見て、そうすると糸が絡まっている構造がみえてきて、結び目を解く手がかりが得られるでしょう。

自分の身体であれば安全な環境で、今自分が何をしているのかを観察し、無駄な動きがないか、努力をしていないか注意を向けていくことで、何が自分にとって大切なのかがわかってくるのではないかと思います。

心地よく、時に休んで、時間をかけて有機的な身体の繋がりを作っていきます。そうすると動きに無駄がなくなり、楽しくなり、たやすくなり、速くできるようになります。

このような学びの方法はスポーツ、ダンス、日常生活の動き、仕事でのパフォーマンスを向上させ世界を喜びに変えていくでしょう。

苛立ちや焦りから沸き上がる急ぐことは、たくさんのことを見えなくし、聞こえなくし、感受性を低下させ、よい「気づき」やよい「学び」の妨げになります。

赤ちゃんの動きを通して学び方を学ぶ

フェルデンクライスメソッドは赤ちゃんの動きを通して学び方を学ぶ側面があります。

赤ちゃんの身体には緊張のこぶはありません。呼吸の動きが全身に伝わっていき、その動きは滑らかです。まるで肌目細かな感触の柔らかい織物のようです。赤ちゃんは何かを成し遂げようとしていないし、急いで動いているようには私には思えません。

赤ちゃんの体験は全ての人が通ってきた道でもあります。なので先生はかつて好奇心の糸を世界に繋げようとしていた自分とも言えるでしょう。ただし、世界にたった一人しかいない、その素敵な先生を見つけるためには、そっと優しく自分に耳をすませなければいけません。そうすればきっと無邪気に現れてくれます。そして世界から喜びをみつけられるでしょう。急いで行ってしまうとその先生は、別な誰かにすり替わってしまうでしょう。

スペシャルニーズチルドレンであっても、何かの病にかかって医療的なケアが必要であっても、年老いていても、人である限り「学ぶ」ことはできます。自分に与えられている機能を活かすことはできます。それは普通を目指すこととは違います。その人なりのプロセスであり旅路のようなものです。

世界には喜びがあふれているはずです。

最後に、私が大好きな「Crawling - Feldenkrais with Baby Liv」という赤ちゃんの動画をシェアします。

よい「学び」のヒントのために。


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