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甘えて、委ねて、曝け出した先に

今年、同棲を始めた。

他人と暮らす不快感と安らぎの間で自分が安心できる空間と時間を見つけホッとしたのも束の間。

妊娠した。

そもそも、妊娠するには、そういうコトをしないとならない。
だから、今日はそういう話をする訳なんだけれど、そのためにはどうしても打ち明けなくちゃいけない。
わたしが初めての経験でヘルペスをうつされたこと。

人によって再発しない人もいるのだけれど、わたしの場合はストレスや過労ですぐヘルペスは再発する。

再発中はもちろん、常に妊娠や性病への防御率は高く、3年以上お付き合いしている今のパートナーとも守りの姿勢は崩したことがない。

それなのに、だ。

それなのに、わたしは無防備なまま彼を受け入れた。
そして、妊娠することになる。

わたしは血栓症になりやすい体質もあってピルが飲めない。
だから、コンドームで大切な自分とパートナーを守り続けてきたのだけれど、薄い薄いゴムの壁は分厚くわたしの身体と心を守り続けた。

付き合っているうちは気づかなかったお互いのこと。
相手だけじゃなく、自分のこともわかり始めた。

付き合い始めは自分がどれほどダメ人間なのか、ある程度隠すことができる。けど、同棲したらそうもいかない。

スッピンも、化粧している姿も、床(横になって動かない)になってエビみりん食べながらユーチューブしか見ていない自分も、トイレで長時間力んでいる様子も、バレる。

外でカッコつけてきた私にとって誰かと生活することはリアル曝け出しバンジーの連続。

「女とはこうあるべき」「男とはこうすべき」の間で身動きが取れなくなるのはいつも私で、常に自然体でいる彼。

自分で作り上げた見えない敵を前に一人で戦い続ける自分にほとほと疲れる。

全部、自分が作り上げた「同棲」の形や「理想のパートナー像」のせいでトイレに行けず、便秘に悩む日々は正直、快適ではない。

でも、常に自分自身に厳しかったわたしは「甘える、委ねる、曝け出す」って行為が苦手で、常に相手に合わせた結果、数年前に離婚を経験した。

だからこそ、今度は自分にとって安心できる場所を創らなくちゃと思っている。だけど、外で働く父と専業主婦の母を見てきたわたしにとって習慣化されてきた当たり前や常識がまたもや自分を縛り付けてくる。

− 私も働いているし家賃も食費も払っている。それなのに、どうして私だけ◯◯しなくちゃいけないの?
−どうして彼は◯◯してくれないんだろう?

彼がリモートワークでオンラインミーティングしている間、洗濯物を干しながら思った。

わたしだって、やりたいことが沢山ある。
そしてわたしは彼の生活のために存在しているワケじゃない。

そんな不満が募った時、わたしは彼の洗濯物のパンツを放り投げ、逃亡を図った。

一人近くのスタバに逃げ込むと、淹れたてのコーヒーと禁断のドーナツにかぶりつく。

それから本を読んだり、書きたかった文章をまとめたり、原稿を書き、近くのサウナに行って帰宅した。

「おかえり」と言って迎えてくれた彼の肩越しに、ベランダで翻る洗濯物の黒のパンツが夜風になびいていた。

恐る恐る彼に洗濯物を干すのやめて逃亡したことを白状すると、彼はまったく気にしている様子もなくサラッと言った。

「そんなこと(家事)だけしてたら、あんたの人生終わるで」


決して彼が家事を軽んじて言ったワケじゃないと思う。

ただ、時間は有限で、やりたいことがあるなら、どんどん自分からやっていかないと人生終わるよ。

そう言いたかったのではないか、とわたしは受け取った。

だって彼は、今までわたしに洗濯を干せだとか、料理を作れだとか言ったことはなく、むしろ、わたしのやりたいことを応援してくれる人だから。

「女」であることのせいにして、がんじがらめにしてきたのは自分自身だ。そんなことを改めて思い知った。

ここは、安全で安心な場所なんだ。

そう思えた時、「わたしなんかで、本当にいいの? 彼で本当に、いいのだろうか?」という疑問は「わたしはわたしがいいし、彼は彼だからこそいい」という感情に変わっていった。

ゆっくりだけど、少しずつ。
今まで隠してきた自分を曝け出す。

そんな日々の延長で芽生えたのは、彼の前で全部曝け出してみたいという感情と、ぜんぶ受け入れたいという肉体の叫びだった。


なにも気にせずに、わたしはわたしのまま、彼も彼のまま、そのままに。
甘えて、委ねて、曝け出し、彼を受け入れた。

それからしばらくして、だ。

生理が来ない。

そこから妊娠がわかった時には妊娠五週目になっていて、その間にヘルペスの薬を飲んだことや飛行機に乗ったこと、ガンガン泳いだり、走ったりしていたことを思い出して青ざめた。

年齢的な部分でも注意が必要なことなど産婦人科の先生から説明され、頭の中が漫画みたいにポカーンとなった。

手渡されたエコー写真に写った、小さな丸ポチ。

本当に妊娠したのだろうか?
本当にわたしに子供ができるの?
わたしに? わたしの身体に?

考えてもみなかった女性としての自分の身体。
そんな自分と向き合う日々が始まった。

なにを食べたらいいのか。
運動はしていいのか。
仕事のことや、親や周りへの報告、入籍や結婚、将来のこと。年齢のこと。

一気にわからないことが押し寄せてくるのと同時に、自分の身体が変化していく恐怖。

こんなに妊婦さんが不安と隣合わせだなんて、知らなかった。

これがまだまだ続くのかと思うと、自分が生まれてきたことや世の中のお母さん、そして、息を吸っている全人類に大きな拍手をますます送りたくなった。

とにかく週に一度の検診を受け、無事であることを祈るしかできない。

もちろん、その間はいつも来ていた生理が来ない。
その代わりに、エコー写真を見るたびに大きくなっていく胎内。
赤ちゃんを包みこむベッドが作られていくんだ。

自分の中で起きている自然な奇跡を目の当たりにして、生理の意味がやっと心から理解できた。

残念ながら、わたしは早期流産を経験することになったけど、この経験から得たことが多すぎて感謝しかない。

言葉で言ったら、ほんの数行で終わる出来事。

でも、自分の心、そして身体を通して得た経験や気づきは深く、心と身体に染み込んでいく。

「生きる」って、たぶんそういうことなんじゃないかな。

生きたいなら、生きたいなりに。
死にたいなら、死にたいなりに。
ちゃんと人間か。

わたしの好きなアーティストさんも唄っていた。

でも、声を大にして今言いたいのは、甘えて、委ねて、曝け出した先にある未来は、素晴らしい世界だった

ってこと。

今、息を吸っている すべての人に大きな拍手とハグを。
この世に生まれてきてくれて、どうもありがとう。

そして、この感情を抱くまで時間はかかったけど、わたしを産んでくれた両親にも感謝します。

生きている限り、これからも生きまくってやんよ!!!


ここまで読んでいただきましたみなさま、今年もどうもありがとうございました。
来年も自分の心と身体で体験する経験を増やし、一人でも多くの人と喜びをわかち合って生きていきたいと思います。

みなさまにとって、2023年も素晴らしい一年になりますように🕊✨


詢川華子




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