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新潟薬科大学学生向け|「スティグマ」について身体を通して体験する

株式会社フィアレスでは、新潟薬科大学の学生の皆様に研修を行いました。

<研修内容>
テーマ :「スティグマ」について身体を通して体験する
授業  :「医療倫理とコミュニケーション技法」の1コマ
実施形式:オンライン、各回70名(全2回)

研修の目的

今回の研修の大きな目的は、未来の薬剤師である学生の皆様に、糖尿病のスティグマについて体験し、考えてもらう時間を設けることです。

スティグマは、日本語の「差別」や「偏見」などに対応しています。具体的には、「精神疾患など個人の持つ特徴に対して、周囲から否定的な意味づけをされ、不当な扱いことをうけること」です。スティグマの歴史は古く、もともとは古代ギリシアで「身分の低い者」や「犯罪者」などを識別するために体に強制的に付けた「印(しるし)」に由来した言葉です。現代では、精神疾患やHIV、LGBTQ(*)のような社会的に立場の弱い人々に対する差別や偏見などを含むような、広い意味を持つ言葉として用いられています。

https://www.ncnp.go.jp/nimh/chiiki/about/stigma.html

日本糖尿病学会と日本糖尿病協会は2019年8月4日に合同委員会を開催し、糖尿病をもつ人に対するスティグマを放置すると、糖尿病をもつ人が社会活動で不利益を被るのみならず、治療に向かわなくなるという弊害をもたらすため、糖尿病であることを隠さずにいられる社会を作っていく必要をあらためて認識しました。

公益社団法人 日本糖尿病協会 HPより
https://www.nittokyo.or.jp/modules/about/index.php?content_id=46


「窓口でのやり取りの中で、患者さんにとって安心できる存在になることが重要。正直に現状をシェアしてもらえることが、患者さんがより良く治療を続けていく一手を担っている。」
「そのためには学生の間に、実際の薬剤師のみなさんが困ったシチュエーションを疑似体験して、自分ならどうするだろうかとイメージをしておくこと、身体を通して体験をして、共に考えること。」
知識のインプットだけではなく、身体を通して考える機会が重要であるという新潟薬科大学の先生のお気持ちから、今回の研修実施が決まりました。

演劇でも、「相手にレッテルを貼ることで、キャラクターの台詞や行動、表現は大きく変わる」ということをトレーニングしていきます。
演劇におけるレッテル、医療現場におけるスティグマ、共通する観点を大事にしながら、実際の薬剤師の皆様が「困ったな」「こんなことがあった」というエピソードを演劇的手法で実際に体験しました。

研修の内容

相手をどう思っているかで自分が変わる(レッテル)

<やり方>
2人で実施
患者さん役と薬剤師役に分かれ、窓口業務をロールプレイする。
1回目:普通に自分としてやってみる
2回目:各々相手をどういう人だと思っているかを設定した上でやってみる
相手へのレッテル例:
薬剤師役 > 正直に自分の状態を話してくれる真面目な患者さん
患者役 > 少しでも反論したりすると怒鳴ってくる薬剤師さん

やってみると、普通にやった時と相手にレッテルを貼った時では自分の行動が変わってくることがわかります。その様子を見ていた他の学生からも、各々がどんな人に見えたのかもシェアして違いを理解していきます。

相手への認識で自分の行動が変わり、自分の行動で、相手に与える印象が変わっていくことを、体験と目の当たりにすることで理解を深めていきます。


実際に起きた窓口業務の設定をやってみて、対応の引き出しを増やす(フォーラムシアター)


自分の認識や行動の大切さを学んだ上で、実際に窓口業務に立った時を想定したやり取りにチャレンジしました。この授業を普段担当されている教授の方に、実際に困ったエピソードなどを伺いながら設定していきました。

<やり方>
2人で実施。
患者さん役と薬剤師役に分かれ、窓口業務をロールプレイする。
薬剤師役には事前情報なくロールプレイに取り組み、患者さん役にはあらかじめ設定をつけて窓口にきてもらう。

設定の例:自分では真面目に食事制限に取り組んでいるが、なかなか数値に結果が表れない。そんな時にお医者さんに「数値が下がってない。食事に気をつけて」と怒られてしまい悲しい思いをした糖尿病患者さんが窓口にいらっしゃる。

この方法の目的は「上手にその設定を切り抜けること」ではありません。「困った状況になったとき自分の身体の反応を知ること」「他にどんなやり方があるのか考えて引き出しを増やすこと」です。

すでに薬剤師として業務をされている方が実際に困った場面を体験してみて、患者さんはどう感じたのか、周りで見ている人はどんな印象だったのかを聞いてみる。そして、他にどんな方法があるのか考えて試してみるという繰り返しの中で、視点や対応方法の引き出しを増やしていくことを期待しています。


参加者の感想

レッテルを貼ることによる影響は頭ではわかっていても、いざ実際に試してみると言葉とか態度にするのが難しい事を知れた。

良いレッテル、悪いレッテルどちらもあるが、貼られてしまうと塗り替えるのが難しいものなので、患者さんに対する対応について考える機会になった。

薬剤師としての患者とのコミュニケーションの重要さを改めて実感し、今は全くできなかったが、どんな患者にも寄り添える薬剤師になりたいと思えたからです。

自分自身についても他者についても新たな発見がたくさんあった。

自分の言動で、患者をどのような気持ちにさせたのかを聞ける機会は貴重なのでとても良かった。

患者さんの対応に合わせようとしても、合わせるのが難しいと感じました。

患者さんの背景や特徴は人それぞれであるので、マニュアル化されたとこ以外でどれだけ求められる薬剤師になっていく必要があるのかを考えながら、これからの学習に挑んでいきたい。

コミュニケーションは患者の数だけあって、薬剤師によって同じ患者でも違う対応になると感じました。自分自身が思う患者に寄り添った言葉をかけられる薬剤師になりたいです。

コミュニケーションが重要だと良く聞いていたが、実際にやってみると言葉が詰まったりして大変だと感じた。

患者との距離感のつめかたなどシチュエーションの体験をしないとわからないことがあって勉強になった。

相手が自分にレッテルを貼っていることが会話中に自然と伝わってきて面白かった。そして、自分も安易に相手にレッテルを貼らないようにしたいと思った。

コミュニケーションは難しく、正解は無くても間違いはあるような感じを受けて、苦手に思う。


医療関係者の方々とお話させていただく機会が多いですが、医療と人との関わりは、切っても切り離せないのだなと感じます。
自分が病気で手術が必要だとなったら怖いですし、行動が制限されたら悲しくなります。そんな時、病気そのものだけ見る方と、患者である自分を通して見てくれる方とだったら、自分が病気に向き合う心持ちも変わってくるだろうと感じます。

一方、医療関係者の方も人間です。本気で命を救いたいと思うからこそシビアになっていくし、患者さんに全力でケアしていくために内部の人までケアしきれなかったりもします。患者さんの中に苦手なタイプの人もいれば、得意なコミュニケーションスタイルもそれぞれある。

だからこそ、コミュニケーションについてトレーニングしていく時間、自分がどんな人間なのかを理解していく時間が、医療関係者の皆さまを、ひいては患者さんたちを元気にしていくことに繋がっていくのだと強く感じました。

うちの学校や現場にも!
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