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[PoleStar2] ひとりぼっち王国(完結)

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SF短編小説。 機械の体に意識を移した人間が、ゆっくりまったり時間をかけて宇宙を観察、探索する話です。 以下に改稿履歴を保存(リポジトリ作り直して履歴が消えました…) http…
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#小説

[PoleStar2] ひとりぼっち王国-01

[PoleStar2] ひとりぼっち王国-01

 リチャード・スウィフトが太陽系の小惑星7919番に来てから、今日で16年目になる。小惑星7919番は、小惑星番号が1000番目の素数であるという理由で特別な名前がついていること以外にこれといった特徴のない、ごくありふれた大きな岩である。リチャードなんの変哲もない岩に特別な名前がついていることが気に入っていて、この星を住居にしていた。

 小惑星に移住してから基準時間で16年目の記念日を、彼は独り

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[PoleStar2] ひとりぼっち王国-02

[PoleStar2] ひとりぼっち王国-02

 問題は、彼を含めて小惑星に何年も住んでいるスペクターは例外なく変人で、外部との関わりを極力持ちたがらないということだ。協力を依頼するにしても、断られる可能性のほうが高い。だが、試してみる価値はあるだろう。それでだめだったら他の手段を探すまでだ。

 リチャードは太陽系のリアルタイム座標を表示する星図を見ながら、ここから最も近い小惑星の住民を探した。小惑星番号1463番に住んでいるカーンティだ。カ

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[PoleStar2] ひとりぼっち王国-03

[PoleStar2] ひとりぼっち王国-03

 数日後、ISSAの研究員が乗っているという宇宙船が見えてきた。最初は小さな点だったものが、あっという間に大きくなる。ベーシックが乗る用に作られたと聞いていたのだが、実際はどこかを改良しているのかもしれないと思わせる速度だった。彼が見たことのない形の船だ。もう16年も地球を離れているから、ベーシックたちが何を開発しているのか、リチャードはあまり知らない。

宇宙船から5つの小さなドローンが出てきた

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[PoleStar2] ひとりぼっち王国-04

[PoleStar2] ひとりぼっち王国-04

 リチャード・スウィフトが太陽系の小惑星7919番に来てから、今日で625年と3ヶ月になる。

 彼は長い間過ごした小惑星プライムに別れを告げているところだった。もう少しで、彼のドールや機材を回収しに宇宙船がやってくる。見慣れた視界いっぱいの星空を眺めてたリチャードは、感情タグを見て自分が感傷に浸っていることに気がついた。

 もうすぐ彼は小惑星プライムを離れて、太陽レンズ望遠鏡へ向かう。太陽レン

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