立別れいなばの山の峯におふるまつとし聞かば今帰り来む 吉海直人(1953- )『百人一首を読み直す 2 言語遊戯に注目して』新典社 2020年9月刊 「第七章 在原行平「立ち別れ」歌(一六番)の新鮮さ」
吉海直人(1953- )
『百人一首を読み直す
2 言語遊戯に注目して
新典社選書 97』
新典社 2020年9月刊
312ページ
https://www.amazon.co.jp/dp/4787968475
2021年6月18日読了
福岡市総合図書館蔵書
「第七章
在原行平
「立ち別れ」歌(一六番)の新鮮さ」p.87-95
立別れいなばの山の峯におふるまつとし聞かば今帰り来む
古今和歌集 巻第八 離別歌 365(巻頭歟)
在原行平(ありわらのゆきひら 818-893)
平安時代前期の歌人・公卿。
平城天皇の第一皇子である
弾正尹(だんじょうのかみ 弾正台長官 皇族に与えられる名誉職)
阿保親王の次男(または三男)。
在原業平の兄。
古今集初出(四首)。新古今集一首。
勅撰入集十一首。
「万葉集に因幡国を詠んだ歌はない。
歌に詠み込むような地名ではなかった。
[「立ち別れ」歌は]勅撰集における初出。
行平歌の時点では歌枕とはなっていなかった。」
p.89「一 問題提起」
「掛詞が二つも用いられ、
「因幡の山の峰に生ふる松」という自然と、
「立ち別れ往ぬ」「待つとし聞かば今帰り来む」という人事が
見事に融合しており、いかにも『古今集』的な世界を構築している。」
p.92「二 枕詞的な「立ち別れ」
「「因幡の松」は定家の
忘れなん待つとな告げそなかなかに因幡の山の峰の秋風
新古今和歌集 巻第十 羇旅歌 968
を代表として、
『千五百番歌合』
『最勝四天王院和歌』
『建保名所和歌』
に行平歌を本歌取りした歌として多く詠まれている。
ここに至って「因幡」といえば「松」が付き物
といえるほど定着(流行)した。」
p.93「三 掛詞としての「因幡の松」
「行平の「立ち別れ」歌は、
『古今集』の中でも独創的な歌だった。
「因幡」と「松」の取り合わせは、
それ以前にはまったく詠まれておらず、
新古今時代に本歌取り歌として大流行したことで、
古くから歌枕だったと誤解されているが、
行平歌への注目が生み出した新しい歌枕のイメージだった。
その流行と相俟って、
行平の代表作として百人一首に撰入されたわけだが、
今ではその新鮮さがわかりにくくなっている。」
p.94「四 まとめ」
目次
はじめに
第一章
天智天皇「秋の田の」歌(一番)を読み解く
第二章
「白妙の」は枕詞か 持統天皇歌(二番)と山辺赤人歌(四番)の違い
第三章
柿本人丸歌(三番)の「ひとりかも寝ん」の解釈
第四章
柿本人丸歌(三番)の「長々し」の特殊性
第五章
大伴家持「かささぎの」歌(六番)を待恋として読む
第六章
阿倍仲麻呂「天の原」歌(七番)の再検討 上野論を起点として
第七章
在原行平「立ち別れ」歌(一六番)の新鮮さ
第八章
在原業平歌(一七番)の「ちはやぶる」幻想 清濁をめぐって
第九章
在原業平歌(一七番)の「水くぐる」再考 森田論を受けて
第十章
素性法師歌(二一番)の「長月の有明の月」再考
第十一章
『百人一首』の「暁」考 壬生忠岑歌(三〇番)を起点にして
第十二章
紀友則歌(三三番)の「久方の」は「光」にかかる枕詞か?
第十三章
清原元輔歌(四二番)の「末の松山」再検討 東北の大津波を契機として
第十四章
藤原公任「滝の音は」歌(五五番)をめぐって 西行歌からの再検討
第十五章
小式部内侍「大江山」歌(六〇番)の掛詞再考 浅見論を契機として
第十六章
清少納言歌(六二番)の「夜をこめて」再考 小林論の検証
第十七章
俊恵法師歌(八五番)の「閨のひま」再考
第十八章
参議雅経歌(九四番)の「さ夜更けて」の掛詞的用法
第十九章
従二位家隆歌(九八番)の「夏のしるし」に注目して
初出一覧
後書き
吉海直人(1953- )
『百人一首を読み直す』
新典社 2011年5月刊
262ページ
https://www.amazon.co.jp/dp/4787967916
https://www.facebook.com/tetsujiro.yamamoto/posts/796282843779690
吉海 直人(よしかい なおと)
1953年長崎県生まれ
同志社女子大学表象文化学部日本語日本文学科特別任用教授
https://www.dwc.doshisha.ac.jp/talk/japanese/detail01/
吉海直人さんの本を読むのは7冊目です。
読書メーター
吉海直人の本棚(登録冊数7冊 刊行年月順)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091377
百人一首の本棚(登録冊数13冊)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091294
その半分7冊は吉海直人さんです。
https://note.com/fe1955/n/n586a12682eab
秋の田のかりほの庵(いほ)の苫をあらみ我が衣手は露にぬれつつ
吉海直人(1953- )
『百人一首を読み直す
2 言語遊戯に注目して』
新典社 2020年9月刊
「第一章 天智天皇
「秋の田の」歌(一番)を読み解く」p.15-24
『日本語学』2017年6月号(第36巻6号)
https://note.com/fe1955/n/n62266db52edf
春すぎて夏来にけらししろたへの衣ほすてふ天の香具山
田子の浦にうち出でてみれば白妙の富士の高嶺に雪はふりつつ
吉海直人(1953- )
『百人一首を読み直す
2 言語遊戯に注目して』
新典社 2020年9月刊
「第二章 「白妙の」は枕詞か
持統天皇歌(二番)と山辺赤人歌(四番)の違い」
https://note.com/fe1955/n/n0ba90ea3e6c6
あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝ん
吉海直人(1953- )
『百人一首を読み直す
2 言語遊戯に注目して』
新典社 2020年9月刊
「第三章 柿本人丸歌(三番)の
「ひとりかも寝ん」の解釈」
https://note.com/fe1955/n/n8a17ee829b0e
あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝ん
吉海直人(1953- )
『百人一首を読み直す
2 言語遊戯に注目して』
新典社 2020年9月刊
「第四章 柿本人丸歌(三番)の
「長々し」の特殊性」
https://note.com/fe1955/n/n4f431d990faa
かささぎのわたせる橋に置く霜の白きを見れば夜ぞ更けにける
吉海直人(1953- )
『百人一首を読み直す
2 言語遊戯に注目して』
新典社 2020年9月刊
「第五章 大伴家持
「かささぎの」歌(六番)を待恋として読む」
https://note.com/fe1955/n/n33fa91b5395e
天の原ふりさけみれば春日なる三笠の山に出でし月かも
吉海直人(1953- )
『百人一首を読み直す
2 言語遊戯に注目して』
新典社 2020年9月刊
「第六章 阿倍仲麻呂
「天の原」歌(七番)の再検討 上野[誠]論を起点として」
https://note.com/fe1955/n/nce8e9a0c3675
後鳥羽院(1180.8.6-1239.3.28)
『新日本古典文学大系 11
新古今和歌集』
田中裕・赤瀬信吾校注
岩波書店 1992.1
丸谷才一(1925.8.27-2012.10.13)
『後鳥羽院 第二版』
筑摩書房 2004.9
『後鳥羽院 第二版』
ちくま学芸文庫 2013.3
https://note.com/fe1955/n/n8dfcbf3d6859
式子内親王(1149-1201)
田渕句美子(1957- )
『新古今集 後鳥羽院と定家の時代(角川選書)』
角川学芸出版 2010.12
『異端の皇女と女房歌人 式子内親王たちの新古今集』
KADOKAWA(角川学芸出版) 2014.2
平井啓子(1947- )
『式子内親王(コレクション日本歌人選 010)』
笠間書院 2011.4
馬場あき子(1928.1.28- )
『式子内親王(ちくま学芸文庫)』
筑摩書房 1992.8
https://note.com/fe1955/n/n47955a3b0698
後鳥羽院宮内卿
(ごとばのいんくないきょう、生没年不詳)
『新日本古典文学大系 11
新古今和歌集』
田中裕・赤瀬信吾校注
岩波書店 1992.1
https://note.com/fe1955/n/n34d98221cddf
たとへば君 ガサッと落葉すくふやうにわたしを攫つて行つては呉れぬか
永田和宏(1947.5.12- )
『あの胸が岬のように遠かった
河野裕子との青春』
新潮社 2022年3月刊
318ページ
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