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秋の田のかりほの庵(いほ)の苫をあらみ我が衣手は露にぬれつつ  吉海直人(1953- )『百人一首を読み直す 2 言語遊戯に注目して』新典社 2020年9月刊  『日本語学』2017年6月号(第36巻6号)

吉海直人(1953- )
『百人一首を読み直す
 2 言語遊戯に注目して
 新典社選書 97』
新典社 2020年9月刊
312ページ
2020年11月19日読了
福岡市総合図書館蔵書
https://www.amazon.co.jp/dp/4787968475

「第一章
 天智天皇
「秋の田の」歌(一番)を読み解く」p.15-24
『日本語学』2017年6月号(第36巻6号)
「百人一首を味わう18」を大幅に増補改訂

秋の田のかりほの庵(いほ)の苫をあらみ我が衣手は露にぬれつつ
 天智天皇
 後撰集 秋中 302

「到底天智天皇[626-671]の自作とは考えられないもの」p.17

「秋田刈る刈廬(かりいほ)を作り我が居れば衣手寒く露ぞ置きにける
 万葉集 巻十 2174
作者不詳な伝承歌が改変され
後撰集[951年撰和歌所開設]に至って
俄かに天智天皇歌として取り入れられた。
どのような根拠・必然性があってそうなったのか
詳細は一切わからない。後撰集において、
天智天皇歌が俄かに要請された。」p.19

「農民が農作業の辛さを歌ったものが、天智天皇歌とされると、
農民の辛苦を思いやる <聖帝> の歌として再解釈される。
仁徳天皇の
たかき屋にのぼりて見れば煙(けぶり)たつ民の竈(かまど)はにぎはひにけり
 新古今和歌集 巻第七 賀歌 707 巻頭歌
と相通じるものである。そういった徳のある天皇が要請されたのだ。」p.22

「百人一首の巻頭二首と巻末二首に親子天皇歌が配されている。
巻頭・巻末に天皇歌が配されている秀歌撰などこれまでになかったし、
以後にも見当たらない。

ほぼ時代順に並んでいて、
平安時代の始祖天皇[[天智天皇は桓武天皇(737-806)曽祖父]
から始まって、平安時代の終焉を象徴する天皇で終わっている、
和歌で綴った平安朝歴史絵巻。

天智天皇は、遠い昔の英雄としてではなく、
平安朝の歴史を語るに必要不可欠な人物として、
一番に撰ばれている。」p.23

「丸谷才一氏など積極的に「秋」に「飽き」を掛けることによって、
この歌を閨怨歌として解釈しておられる(『文藝読本百人一首』)。

確かに「衣・露・ぬれ」という用語からは、
百人一首の主題の一つたる恋歌としての解釈も可能であろう。
さらに「刈り」に「離る」が掛けられているとすれば、
通ってこない恋人の姿も浮上してくる。」p.24

はじめに
第一章
 天智天皇「秋の田の」歌(一番)を読み解く
第二章
 「白妙の」は枕詞か 持統天皇歌(二番)と山辺赤人歌(四番)の違い
第三章
 柿本人丸歌(三番)の「ひとりかも寝ん」の解釈
第四章
 柿本人丸歌(三番)の「長々し」の特殊性
第五章
 大伴家持「かささぎの」歌(六番)を待恋として読む
第六章
 阿倍仲麻呂「天の原」歌(七番)の再検討 上野論を起点として 
第七章
 在原行平「立ち別れ」歌(一六番)の新鮮さ
第八章
 在原業平歌(一七番)の「ちはやぶる」幻想 清濁をめぐって 
第九章
 在原業平歌(一七番)の「水くぐる」再考 森田論を受けて 
第十章
 素性法師歌(二一番)の「長月の有明の月」再考
第十一章
 『百人一首』の「暁」考 壬生忠岑歌(三〇番)を起点にして 
第十二章
 紀友則歌(三三番)の「久方の」は「光」にかかる枕詞か?
第十三章
 清原元輔歌(四二番)の「末の松山」再検討 東北の大津波を契機として 
第十四章
 藤原公任「滝の音は」歌(五五番)をめぐって 西行歌からの再検討 
第十五章
 小式部内侍「大江山」歌(六〇番)の掛詞再考 浅見論を契機として 
第十六章
 清少納言歌(六二番)の「夜をこめて」再考 小林論の検証 
第十七章
 俊恵法師歌(八五番)の「閨のひま」再考
第十八章
 参議雅経歌(九四番)の「さ夜更けて」の掛詞的用法
第十九章
 従二位家隆歌(九八番)の「夏のしるし」に注目して
初出一覧
後書き

読書メーター
吉海直人の本棚(登録冊数7冊 刊行年月順)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091377

百人一首の本棚(登録冊数13冊)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091294
その半分7冊は吉海直人さんです。


https://note.com/fe1955/n/nce8e9a0c3675
後鳥羽院(1180.8.6-1239.3.28)
『新日本古典文学大系 11
 新古今和歌集』
田中裕・赤瀬信吾校注
岩波書店 1992.1
丸谷才一(1925.8.27-2012.10.13)
『後鳥羽院 第二版』
筑摩書房 2004.9
『後鳥羽院 第二版』
ちくま学芸文庫 2013.3

https://note.com/fe1955/n/n8dfcbf3d6859
式子内親王(1149-1201)
 田渕句美子(1957- )
『新古今集 後鳥羽院と定家の時代(角川選書)』
角川学芸出版 2010.12
『異端の皇女と女房歌人 式子内親王たちの新古今集』
KADOKAWA(角川学芸出版) 2014.2
平井啓子(1947- )
『式子内親王(コレクション日本歌人選 010)』
笠間書院 2011.4
馬場あき子(1928.1.28- )
『式子内親王(ちくま学芸文庫)』
筑摩書房 1992.8
 

https://note.com/fe1955/n/n47955a3b0698
後鳥羽院宮内卿
(ごとばのいんくないきょう、生没年不詳)
『新日本古典文学大系 11
 新古今和歌集』
田中裕・赤瀬信吾校注
岩波書店 1992.1

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