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岡田武史のメッセージ

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株式会社今治.夢スポーツ
代表取締役会長 岡田 武史

世界で通用するチームを目指す

2014年に私はFC今治のオーナーとなり、当初からサッカーに関して「岡田メソッド」を作り上げていくことに注力していました。「プレーモデル」というサッカーの原則集を作り、16歳までにその原則を教えてそのあと自由にさせていけば、主体的に自分で判断してプレーをする自立した選手が出るんじゃないか。世界で通用するチームができるのではないか、という思いで始めました。

目に見えない資本を大切にする社会づくり

今まで今治には十数年通っていましたが、トンボ帰りすることが多く実感がなかったのですが、実際に今治に家を借りて住んでみて、ドンドビの交差点に更地があって、商店街に人が歩いていない…。かつての賑わいがどこへ行ってしまったのかと、ふと恐ろしいような気持ちになったのを覚えています。私は「岡田メソッド」を作って選手育成をするだけではダメだ、と確信しました。6年前、企業理念を立ち上げる時に、今まで自分の生きる基準にしていた「目に見えない資本を大切にする社会づくり」を理念として落とし込み、街全体を盛り上げていくことにしました。

それは単なる地方創生ではなく、今治の将来像として「ブルーゾーン」といわれる世界で4カ所ある健康長寿の地域のようになりたいと考えています。これらの地域で共通しているのは食でもなく水や空気の良さでもなく医療施設の充実でもなく、ただ一つ、緩やかなストレスのない人間関係だそうです。人間は一人では生きられません。だからお年寄りから子どもから若者まで、みんなが幸せそうに笑顔で生きていられる街を創っていきたいと思っています。今は様々なテクノロジーが進化し、便利・快適・安全な社会へ向かっています。これも一つの幸せの形ではありますが、それだけで人は満たされません。困難を乗り越えて何かを達成したり、人と助け合ったり、分かち合うことが必要です。それは人間にしかできない幸せの形であり、その機会を提供できるのがスポーツであり文化であると考えます。

私たちは「物の豊かさ」=売り上げやGDPなど目に見えるものではなく、「心の豊かさ」=信頼・関係・感動・勇気・夢を大切にします。そういった目に見えない資本に価値を見出し、実際の経済としてお金が回るような社会になっていかなければならないと必ず行き詰まってしまう、というのが私の考えです。それが我々の企業理念「心の豊かさを大切にする社会創り」につながっています。

地球は子孫から借りているもの

私は作家の倉本聰さんと北海道の富良野で「富良野自然塾」という環境教育プログラムをやらせていただいています。今治でも富良野自然塾監修のもと「今治自然塾」という取り組みを行っています。そのプログラムの一つに「46億年・地球の道」というものがあります。46億年の地球の歴史を、インストラクターが460メートルを歩きながら説明をします。46億年前、今の10分の1ほどの大きさしかなかった地球は、マグマでドロドロの時代、全球凍結でカチカチの時代、海の温度がお風呂よりも熱い時代を経て、カンブリア紀で生物が出現して華やかになり、恐竜が生まれて…そして460メートルの最後の2センチで我々、ホモ・サピエンスが誕生します。

地球の危機が叫ばれていますが、地球は大丈夫です。しかし、人類はどうなのでしょう。私たちの時代はまだ大丈夫でしょう。私たちの子どもや孫の時代は大変なことになるかもしれません。このプログラムの最後に倉本先生が石碑を作られて、そこにはネイティブアメリカンに長い間伝わる言葉が刻まれています。

「地球は子孫から借りているもの」

地球はご先祖さまから借りているものではなく、未来に生きる子どもたちから借りているもの。借りているものは傷つけたり汚したり壊してはいけません。ネイティブアメリカンが今でも伝えているのに、文明人と言われる我々は今日の株価や経済のことばかり。子どもたちの時代のためと考えれば、様々な社会アジェンダの答えが見つかるのではないでしょうか。全ての生物は、生命をつないでいくために生きているはずですが、人間だけは自分のために生きているのかもしれません。

岡田メソッドのいま

岡田メソッドを作るのに我々は結局、4年ほどを費やしました。形になったメソッドを使い始めて、今、確実に結果が出ていると感じています。子どもたちが考え、主体的にプレーをするようになってきている。今治全体で強くなろうという「今治モデル」が実を結んだ一つの形として、今年、今治東中等教育学校が全国高校サッカー選手権に出場し、初戦を勝ち越しました。これは、谷監督の力が一番ですが、我々も一緒にやってきた思いがあり、とても嬉しかった。

このやり方が全て正しいとは思っていませんが、結果が出るのが10年後。私たちはまだ挑戦の真っ只中にいます。そして、今治モデルの頂点であるFC今治が強くなると全国から「プレーしたい」「指導の勉強をしたい」「また試合観戦したい」という人たちが集まってきてくれるでしょう。

心の拠り所となる里山スタジアムへ

J2では10,000人、そしてJ1では15,000人以上収容可能なスタジアムが必要となります。私たちはそれを、複合型のスマートスタジアムにしたいと考えています。

私が以前、イタリアのユヴェントスに行った時に、67,000人の陸上競技場を41,000人収容の小さな複合型スタジアムに変え、一部をショッピングモールになっているのを見てきました。それで何が起こったのか。今までは試合15分前に来て、試合が終わるとさっさと帰っていったイタリア人が、試合の2時間前からスタジアムに足を運び、終わって1時間半も滞在している。調べると100マイルより遠くから来ている人の割合が10%だったのが55%になった。あれだけサッカーが好きなイタリア人でもサッカーを見るだけの為には来なかったのが、半日過ごせる場所を作ったら、100マイルより遠くでも訪れる場所となる。今治でやるには、これしかない!と思い立ちました。スタジアムエリア全体で複合型になればいい。

まずはサッカーができることが第一。そして、年間20日しか使わないロッカールームやVIPルーム、事務機器をそのまま置いておくのはもったいない。それならばスポーツクラブを併設させて、試合以外の日にはロッカールームを更衣室として使用したり、ドクタールームは広くして健康診断をする場所として利用したり、VIPルームを学童教室にするなど、用途をシェアして365日稼働する場所として活用させていきたい。想いを共にする企業や人が集まり、魅力的な場所として今治の価値を高めていきたいのです。

コンクリートばかりで、建ててしまった後ただ朽ちていくスタジアムではなく、どんどん緑豊かになっていく“里山スタジアム”となり、今治の人の心の拠り所となるような拠点にしていきたいと考えています。2023年1月の完成に向け、前進します。

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