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珈琲日和

新宿の武蔵野館で映画をみる予定が早くついてしまったので椿屋珈琲店で時間をつぶした。

連れが喫煙者なので喫煙可でお願いすると、小会議室のようなスペースに案内された。2人掛けテーブルが4つ、ぎゅうぎゅうに詰め込まれている。テーブルではアイコスなど電子タバコのみ可、普通の紙巻きタバコは奥にある「立って半畳」ほどのボックスで吸えということらしい。女性が2人はいれるくらいの小さな小さなスペースと正面の壁に埋め込まれた空気清浄機。じわじわと自己肯定感をえぐるロシアの拷問のようで、えぐい。

椿屋珈琲店は常日頃からお客の質はそこそこだと思っている。デート中のカップル、買い物帰りの若者、出会って日が浅い男女、友達同士、一心不乱にPCに向き合う会社員、仕事の打ち合わせ、新宿ぶらりなシニアなど利用者は様々だ。

一番の目玉である「椿屋オリジナルブレンド」は980円だし、ケーキセットまで頼めばゆうに1,500円は超える。ドトール、タリーズに比べると段違いでコスパは悪く、高級珈琲をうたっているくせに喫煙ルームがある。2時間も長居しないだろう環境にこれだけのお金を落とすひとは限られる。けれど人気なのだ。事実、新宿店は普段から混み合っているし土日は確実に待たされる。

サイフォンコーヒーで淹れる本格コーヒー、大正時代のメイド喫茶をイメージした上品な制服(男性も執事っぽい)丁寧な接客、ここまで差別化できるならば高い値段設定もうなずける。完全分煙にしないのも、中年~高齢者へのニーズにこたえてといったところかも。

なおブレンドのおかわりは300円なので2杯たのめば1杯640円。お得!

ちなみに私自身、某椿屋珈琲店で別れ話をしたら閉店朝4時まで居座った(別れ話がクローズできなかった)苦い思い出がある。5時間ちかくコーヒーをおかわりしケーキを食らいジメジメした話を続けるカップルに、顔色ひとつ変えずにサーブしてくださった新橋店の店員さん(阿部寛似の男性)そのたびはお世話になりました。ほんとすいません。お会計びっくりしたよ。


新宿店の話に戻ろう。

8月の終わりだったがコロナの影響もあり、週末の店内は半分も埋まっていなかった。そのうえ、喫煙ルームの顧客はなにやら怪しい会話をしている。

「FXが…」「仮想通貨で儲けでるよ」「飛んだらどうしますか」「自己破産やってるから大丈夫」「純資産どれくらいなの」

お、おう。サバみたいな色の3つ揃えスーツをきた推定30代前半の男性とTシャツ短パンの若者。どうやら投資ノウハウの売買をしているようだ。若者、確実にだまされとるがな。

後ろの男女はInstagramの売り上げの話をしている。フォロワーを買うとかコンバージョン数とか、こちらもややグレーゾーン。

連れが遅れるとメッセージがきたのでケーキでも食べるかなとメニューをみに入り口付近まで歩いていると、占いをしているバアさんとカップル(?)が目に入る。

「いまは星が悪いからねぇ、来年の春かしら」「お金どれくらいかかりますか」「お金よりはひとよねぇ」

椿屋で占いとか、はじめてみたぞ。

耳ダンボでケーキサンプルを眺めていると後ろの席にいる保険相談の会話が聞こえた。20代っぽい若者に押し営業をかける2人組。言葉遣いが慇懃無礼な感じ。プレデンシャルかな…

席に戻るついでに占いテーブルを視野見(@勝手にふるえてろ)すると、女性のほうがお財布と封筒を出していた。バアさんはテーブルに数珠をならべて、紙に四柱推命だか八卦図を描いている。男性は納得しているのかしてないのか、チベットスナギツネのような目で空をみていた。

席に戻るとサバ色スーツの彼の元に新しい顧客がきていた。

ケーキは頼まなかった。

在宅勤務も半年たち、ようやっとこの生活に慣れてきた気がしていたけれど。ひとの心はちゃんとすさんでいくのだな~と実感した日。



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伊勢丹横、土日のみ営業「素多亜」


アルタ横「自家焙煎珈琲 凡」




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