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サステナビリティから再生型ビジネスへ

この記事は、当社の調査研究をまとめて刊行致します、「Sustainability in Japan 3: 再生型ビジネスへの道」から抜粋したものです。英語版はMediumで入手可能です。

移り変わる社会

高まる外圧

ファブリックはサステナビリティ・イン・ジャパンの調査レポートをまとめ始めてから、日本がサステナブルとは言えなかった既存の世界経済モデルを変革するというチャレンジに立ち向かうのを見てきました。その一方、日本は世界第3位の経済大国として十分な取り組みをしていないとの印象を持たれており、それを払拭する必要があります。

企業、政府機関、地域社会による議論、計画、行動がどれだけ一般社会に浸透し、人々の行動を変化させているかは、私たちが毎年探求している包括的な課題です。今回で3回目となる本レポートでは、社会全体の変革を進行させる根本的な推進力と、それを阻む障壁について焦点をあてました。

過去のレポートでは、持続可能な社会への移行を進めるためには、法整備による規制も必要であるとの指摘をしました。しかし現実を見ると、様々な国において持続可能性を阻害する要因を段階的に廃止する法律や政策が制定されているにもかかわらず、日本では2020年に小売店でのレジ袋の無料配布を禁止する法律が施行されて以来、企業に対して消費者の選択肢から持続可能ではないものを排除するように強制する重要な新しい法律や規制は見当たりません。

一方、ESG(環境・社会・ガバナンス)フレームワーク(グリーン/ソーシャル/サステナビリティ債の発行に先立ち、プロジェクトの評価および選定、調達資金の管理、レポーティング等について発行体が定める方針)を通じた影響開示に対する上場企業への圧力は著しく高まっています。EUや米国を拠点とする企業はこうしたコミットメントに真剣に取り組んでいることから、それらの企業に納品する日本のサプライヤーは、素材とプロセスの持続可能な品質に関するより多くのデータを提供した上で、さらなる改善に全面的に協力する必要が出てきました。

日本の大手上場企業は、海外からの投資比率も高いためESGスコアを益々重視するようになっており、その結果国内のサプライチェーンにも圧力をかけ始めています。

今日、ESGフレームワークはコンプライアンス(法令遵守)の枠組みとして認識されており、枠組みを守ることは良いことだとされている一方、経営資源が限られる企業にとっては市場シェアや事業の維持のために負わざるを得ない負担となっている面もあります。

このような制約を、進むべき方向を示すガイドラインとして前向きに受け入れ、すでに他の企業の模範となるような事業成果を上げている企業もいくつか見られます。日本では現在、特に持続可能性に関して世界をリードする企業に対してビジネスを展開しているB2B企業が最もプレッシャーを感じており、最も喫緊な課題として取り組む必要があります。

B2B企業の間でESGへの意識が高まる中、B2C企業の多くは消費者のサステナビリティへの関心が薄いことを理由にB2B企業ほどプレッシャーを感じていません。消費者の関心が高まらない限り、企業間でのESG意識が高まり、サステナビリティを単なるブランド差異化として利用する企業の意識変革につながることは期待できません。

サステナブル・コミュニティの台頭

ファブリック・チームは、サプライチェーンの革新、脱炭素化への道筋、包括的な雇用慣行、物質循環性などをカバーする斬新で持続可能なソリューションの設計に焦点を当てたコンサルティングを数多く手がけてきました。

また、サステナビリティとは直接関連性がないプログラムにおいても、サステナブル・デザインや再生デザインの原則を組み込んだところ、ソリューションが強化され、クライアントから高い評価を頂いたこともあります。

私たちは、企業のリーダーたちがこれらの課題に直接取り組み、価値を創造することを考え続け、その結果そのカテゴリーにおけるパイオニアになる可能性があることも直接目の当たりにしてきました。しかし、消費者がどの程度「準備ができて」いるかが、企業がどの程度のスピードと真剣さを生み出していくかの決め手となります。

ファブリックはコンサルティング業務以外にも、持続可能なライフスタイルやビジネス、新しいサステナブルなブランド、製品、循環モデル、コミュニティ、プロフェッショナルな草の根ソリューションの繁栄を目の当たりにし、その一翼を担ってきました。これらの芽が新しい経済の幹や大枝に成長し、それを牽引する人々が指導的地位に成長する未来を想像すると、変革は確かに起こるはずだと思えてきます。

一方、企業が持続可能性に対して想像を巡らせ、議論を繰り返し、計画しているものの、ほとんどがまだ統計的に有意義な程度まで消費者たちの行動に影響を与えたり、表現されたりしていないことも確かです。

今年の5月にWHOがCOVID-19パンデミックの終焉という公式見解を示したと同時に、日本では旅行業界とサービス業界が、慎重にではあるものの、以前と変わらない事業運営方式に回帰しました。2023年は、世界中が直面している多くの複雑な課題に対する国民の意識が転換点を迎えることになるかもしれません。ウクライナの戦争が新聞の見出しを独占し、新たな世界秩序に影響を与え、台湾でも同様の紛争に対する恐れによる緊張感が膨らんだ影響もあり、日本は1952年以来最大の軍事支出の前年比増加計画を発表することになりました。¹

2023年はまた、ChatGPTの急激な台頭によってAIが人々の注目を浴びた年にもなりました。人口減少とデジタルトランスフォーメーションの両方に取り組む日本のビジネス界の状況を考慮すると、より身近になったAIによる影響はエキサイティングでもある反面、同じくらいの不安をもたらしています。

一方、国内外で異常気象がより頻繁に、より激しく起こるようになり、気候変動の脅威が人々の暮らしを直撃するようになりました。日本のマスメディアも異常気象と気候変動との関連性をより明確に取り上げ始めている兆しがあります。

この記事を執筆した週は、観測史上最高気温を記録した週を経験したばかりで、世界気象協会によると「未知の領域」に入ったと言われています。この地政学的、技術的、環境的条件を総括する言葉として、「ポリクライシス」という言葉が頻繁に使われるようになっています。

私たちの2023年の調査では、気候変動が現在の持続可能性に対する最大懸念事項となっており、ベビーブーム世代の58%とX世代の47%が気候変動を「人類に対する存続の脅威」であると信じていることが示されています。しかし、ミレニアル世代とZ世代の間ではその割合は3分の1未満であるため、少し楽観的であるか、知識が足りていないとも言えるかもしれません。これらの世代は気候変動よりも、「すべての人に適正な労働賃金を提供する」ことや、「飢餓をなくすこと」という、「人間」の問題に強い関心を持っています。

2.1:「気候変動は人類にとって現実的な脅威である」と答えた割合(世代別)
2.1:「気候変動は人類にとって現実的な脅威である」と答えた割合(世代別)

消費主義への執着

ステークホルダーとしての消費者の主体性

私たちの過去2回の調査研究では、主に消費者とビジネスの関係性について焦点を当て、企業の新たなビジネスモデルによって始まった、今までになかった消費者と事業体における価値の共有を実現することに寄与する、消費者のサステナブルなライフスタイルに向けた行動や意思決定に焦点を当ててきました。

持続可能な社会への移行における、ビジネスと顧客の「相互利益」を重視するという考え方は些細なものではなく、その関係の外部性は、特に日本や世界の環境・社会システムへの影響を考慮する際にシステム全体の中核を成す考え方です。

これは本質的に、顧客との関係や取引に適用される「ステークホルダー資本主義」モデルであり、ほとんどの企業の経営陣の間では「株主資本主義」に取って代わるモデルとして認識されています。

さらにこれは日本の儒教の影響を受けた企業文化にも近いものがあります。日本企業では株主配当が最優先されることはこれまでありませんでした。岸田首相が2022年に新しい資本主義を強調し、日本企業に社会的・環境的成果を拡大した上で責任を負うよう求めたときにも、企業の間では元々あった考え方であるが故驚きを持って迎えられることはありませんでした。

企業がサプライチェーンの混乱などの課題を抱え、行政が新たな法律や規制を作らない中で、これまで以上に重要となるのは、私たちが消費者として物品を購入する際に、より害が少なく、より良い選択肢を選ぶことです。

私たちのデータによると、現在、日本の消費者の約5分の1が購入するブランドの選択を通じて環境に良い影響を与えることができると信じており、その考え方は、環境に良い選択をしたいという意欲と、既にそのために用意されているブランドの選択肢の両方に起因しています。

一般消費者は個々の買い物全ての持続可能性を意識するわけでも、個人としての価値判断だけで購買活動をするわけでもありませんが、その購買活動が与える影響を意識し、それが自分の生活の質にどの様に関連し、健全で健康な自然環境に依存している社会の一員である自分に、どのように影響するかをある程度までは認識しているのではないでしょうか。

したがって、サステナブルな変革を測定する方法として最も適切な方法は、この種の意識の高い消費者が圧倒的大多数を占めるようになるまで追跡していくことです。

着実に成長する意識の高さ

私たちの研究では、サステナビリティに対する意識について、認知、知識、行動、そして態度について測定してきました。

人々は毎日の買い物において、商品やサービスの他人の評価やブランドが表明している数々の約束ごと、差別化された商品特性によって価値を見出し、選択をしています。

サステナビリティ意識についての数値は15歳から69歳の日本人の意思決定を数値化したものです。日本の経済活動に積極的に参加していると認識される4つの世代をカバーしており、サステナブルビジネスへの変革に対する経済界全体のポテンシャルを枠付けしています。

私たちは、サステナビリティに対する意識が「否定的」な層から「高い」層までの5つの意識層グループを特定しましたが、人口の大半は「低い」層に属しています。2022年には、2021年の調査と比較して全体的に意識が高いとする方向に大きくシフトしていることが分かりましたが、このシフトのスピードから推定すると、人口の中間層が意識層の中間に位置するようになるには2030年までかかると考えられます。

2.2:日本におけるサステナビリティに関する意識
2.2:日本におけるサステナビリティに関する意識

気候変動による災害が増えている中、サステナビリティに関する劇的な意識の高まりを期待する動きもありますが、人々の行動変容を期待するにはまだ時間がかかりそうです。

全体的な意識の高まりは規則的なペースで増加していますが、過半数を超える58%の人が今もまだ意識の低い層に留まっています。いまだに転換点に到達したというサインは見られません。何百万の人々が意識の高まりを示している一方、低い意識から、むしろネガティブ・グループに移行した人たちもいます。

世代別に見ると、意識の高い層は高齢者である傾向があり、若いZ世代は、依然として最も意識の低いミレニアル世代に比べて、相対的ではありますが意識を高く持っているようです。

2022年の調査報告の中でサステナビリティ意識を高く持つ要因の一つとして特定した要素として、「余裕」がありました。持ち家を所有する高所得者で、大企業に勤務しているか、もしくはすでに引退していると思われる、安定した状況下にある高齢の調査対象者たちの暮らしに見られるところの「余裕」です。

このことは、意識の高い人がサステナビリティを意識するに至る情報を得るための時間と資源を持っているという、一種の特権として受け止められるかもしれません。この考え方は、2023年調査のウェルビーイングのセクションでさらに掘り下げています。

推進力と障壁:日本人独特の反応

日本のサステナビリティに関する進捗は、国連による持続可能な開発目標(SDGs)の浸透度合いを測ることでみることもできます。SDGsは、サステナビリティを語る略語として、メディア、教育現場、企業、地域社会、政府の政策によって盛んに取り上げられ、各方面で推進されています。

2021年の調査では、参加者の大多数がSDGsと持続可能性を結びつけていませんでしたが、2023年の調査では、8.1%の人が2つを関連づけており、すべての目標に対する意識が高まっていることが分かりました。

「海の豊かさを守ろう」はSDGsの中で最も持続可能性を連想させる目標であり、日本では魚介類の食生活や漁業が重要であるため、この目標は身近なものとして意識されています。

「気候変動に具体的な対策を」と「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」も引き続きトップ3にランクインしており、暑い夏やエネルギー料金の増加を通じて日常生活の課題となっています。

2.3:「サステナビリティ(持続可能性)」という言葉を聞くと、どんなことを思い浮かべますか?
2.3:「サステナビリティ(持続可能性)」という言葉を聞くと、どんなことを思い浮かべますか?

SDGsの進捗は、「三方よし」のような日本の伝統的な考え方の再発見と見ることもできるでしょう。売り手と買い手が価値を共有することは、社会にも利益をもたらすはずであり、こうした日本の伝統もSDGsの受け入れやすさに繋がっているのでしょう。

「もったいない」という考え方も、物質消費と循環性が再度注目を浴びるようになったことで、新たにサステナビリティとの関連性を持つようになりました。私たちの2023年度調査では、調査対象者たちの多くが少しづつ行動変容を起こしており、特にリデュース、リユース、リサイクル、修理や詰め替えに重点を置いていることが分かりました。

電気自動車の購入や再生可能エネルギーへの切り替えなど、重要なことへの関心も高い一方、実際に購入や切り替えをした人は多くありませんでした。

日本人のサステナブルな活動に対して大きな障壁となっているのは経済的な制約のようです。53.5%の人が環境や社会に良い影響を与える活動に対して前向きになれないのは経済的理由であると述べています。

サステナブルな活動にはお金が掛かる見られていることは重要な発見ですが、全ての活動に経済的負担がかかるということではありません。サステナビリティは贅沢な選択という位置付けであるように見えますが、実際のところ、実質的なサステナブルな行動には、無駄な消費パターンの見直しといった、意味ある小さな行動変容が重要なのです。

例えば、パタゴニアは徹底的な生産と消費の削減を使命としていますが、これはサステナビリティへの移行を果たそうとしている大半の企業が推し進めるシナリオとは一線を画しており、もっと身近な些細なことから始めるサステナブルな活動にも注目することが重要です。

また、消費者の専門知識の欠如、時間の制約、活動は簡単ではないなどの事由も、26-30%の人たちにとって大きな障壁になっているようです。

2.4:あなたが社会や環境へより良い影響を与える選択をしたり行動をしたりする上で、障壁となり得るものは何でしょうか?
2.4:あなたが社会や環境へより良い影響を与える選択をしたり行動をしたりする上で、障壁となり得るものは何でしょうか?

再生型ソリューション

再生可能な未来への種まき

私たちの2022年の調査では、食品システムの革新が人と地球の双方にとってどのような利点を与えるのかを探るため、総合的な観点から食品システムのイノベーションに焦点を当てました。その結果、顧客のサステナブルな行動変容と生産者との前向きな関係性が見られました。

私たちはまた、生産による悪影響を最小限に抑えるだけでなく、生命そのものの再生的な性質を利用して、生態系とコミュニティを回復・補充する方法で生産される再生型農業と、食品の台頭にも注目しました。²

ビジネスがサステナビリティに関するネガティブな影響をできるだけ少なくすることよりも、より積極的に社会が望む方向に推し進める力となる考え方は決して新しいものではありません。

これまで、多くの予算がCSR(企業が社会的責任を果たす活動)に費やされてきました。しかしながら、これらの活動の大半は事業とは別次元で取り組まれてきており、企業の中心的な事業と融合する形で行われてはきませんでした。つまり、多くのCSR活動は根本的な変革には届かないモデルだったのです。

環境保護の活動家であるポール・ホーケンやパタゴニアの創設者イヴォン・シュイナードなど、サステナブルビジネスを牽引している人たちは、より思慮深く、賢く自然に寄り添う方法をとっています。ただ単に「自然にとっていいことをする」のではなく、「自然の一部」として立ち回っているのです。³

それこそが再生型の考え方なのです。

2.5:環境に配慮したデザインの軌跡 (Reed, B. 2007)
2.5:環境に配慮したデザインの軌跡 (Reed, B. 2007)

企業が責任を問われている世界的な流れに合わせるように、現在のサステナビリティに関する対応の不十分さや抜け穴を探すような方針に対して不満が高まっています。「グリーンウォッシング」という言葉は、様々な業界、企業の行いに対してよく使われる言葉であり「サステナビリティ」そのものを色褪せたものにしてしまっています。

このような背景から再生思考への転換が進み、日本でもその動きが活発化し始めています。

『WIRED』日本版は最近の「再生する企業」⁴という記事の中で、全方位的にステークホルダーと向き合い、積極的に人材や資金源に関する多様なシステムによる変革に深く貢献する、再生型の手法を取り入れている日本企業の事例をいくつか取り上げています。

再生型ビジネスにおける人の役割

再生型農業のシステムは、生物の再生過程を念頭に多様性と複雑さを意図的に組み合わせることで、これまで以上の速さでフライホイール効果が回復、補充、生産を通じて起こることを示しています。

この再発見は大きな希望となり、「再生」という課題を前進させる原動力になっています。

このようなシステムが人々の暮らしに取り入れられれば、人々の仕事を単純な作業中心のものから、共に新しいものを生み出す創造的な仕事へと変化させることができるでしょう。これは、農業以外の再生モデルを設計する時の方向性を示してくれるインスピレーションとなり得ます。

化学農法を主とする現在の食料生産者の役割は、どの食べ物を育て、収穫するかに止まっています。一方、再生型モデルでは自然の摂理に応じて、どのように生命を反映させていくかという考え方に変化します。

ビジネスを変革する過程で、新たな取り組みの枠組みを作る際に、働き手の処遇を後回しにすることは簡単ですが、そうはいきません。枠組みはあらゆるレベルにおいてその根底にある特質を映し出しており、私たちの現在の経済システムの限界は、どれだけの人やコミュニティがグローバル経済の中で処遇されているのかを正確に反映しています。

課題は再生型モデルの考え方を様々なビジネスに当てはめ、各方面にそれぞれ余剰を生み出すことです。

再生型ビジネスを作り出すということは、採用された従業員たち、そして顧客たちにとっても、企業が良いことをすればするほどその暮らしも社会もより良くなるという考え方を通じて、収益性の高いビジネスモデルを設計することと定義することができます。

私たちの今までのサステナビリティ・レポートでは同様に、社会に良い影響を与えるために企業が顧客と一体になって「価値の共有」を果たしていく具体的な計画を立てる必要があると説明してきました。

大企業が社会や環境分野において前向きに取り組むことが、一般的な日本人が望んでいる企業の果たすべき役割です。実際に、36%の人が大企業は「とても責任がある」と考えており、39.3%の人が「どちらかというと責任がある」と答えています。これは53%が「とても責任がある」とし、28%の人が「どちらかというと責任がある」とした、政府の責任に対する回答に匹敵する答えでした。なお、責任を負うのは地域社会や個人だとした回答が最も低い回答でした。

2.6:社会課題や環境問題に対して、次の人々や団体はどの程度責任があると思いますか?
2.6:社会課題や環境問題に対して、次の人々や団体はどの程度責任があると思いますか?

組織の中で働く人々は、日本のサステナビリティの変革において最も重要なステークホルダーです。職場やコミュニティで自分の信念や人間性を表現する自主性を高めることで、自身の消費者としての役割もより強く認識することができるようになるでしょう。

働き手が、採取型の農場よりも再生型の農場でやりがいを持って楽しみながら働くことが、再生型農業を推進する原動力となるのです。

ビジネスの世界でも同じように考えることができないものでしょうか?

会社、従業員、そして顧客との関係性を新たに築いていくことができる企業は、生産性を向上させると同時に、人々を雇用する事業体として大きな競争優位性を得ることができます。

従業員を積極的に惹きつけ、モチベーションを向上させ、そして定着させることで、社会的・環境的持続可能性の進展と相まって、熾烈な労働市場と人口減少という日本独自の課題を逆転させ、向上させることができるのです。

政府がサステナブルな変革を推進する一環として、大企業に対し従業員の育成、一体感の醸成、多様性への対応を含む新たな人事基盤の整備を求めており、人間中心の企業運営が急務となっています。

実際に新しい社会構造を形成するのはこれらすべての当事者間の相互作用であり、これらのシステムを構成する人々の社会的・人的資本が重要な役割を果たします。

日本人が職場で過ごす時間の長さ、そして職場が社会的にも環境的にも影響を与える存在であると同時に障壁となる可能性から、私たちは企業と従業員の「絆」こそが日本のサステナビリティを推し進める鍵を握るのだと考えています。

本レポート「Sustainability in Japan 3:再生ビジネスへの道」は、日本企業にとって極めて重要な機会を提供するであろうこの「絆」の正体を探ることに焦点を当てました。


参考文献

  1. SIPRI (2023) The proposed hike in Japan’s military expenditure. https://www.sipri.org/commentary/topical-backgrounder/2023/proposed-hike-japans-military-expenditure

  2. Hawken, P. (2021) Regeneration: Ending the Climate Crisis in One Generation. [New York] ; [Great Britain], Penguin Books.

  3. Reed, B. (2007) Trajectory of Environmentally Responsible Design from: Reed, Bill. “Shifting from ‘sustainability’ to regeneration.” Building Research & Information. 13 Sept 2007.

  4. WIRED (2023) 「リジェネラティブ・カンパニー」とは何か──その3原則から事業領域まで、拡がるムーブメントの全体像, WIRED.jp. https://wired.jp/article/the-regenerative-company/


ファブリックは、企業がより革新的で持続可能な未来に向かって進むことを支援し、戦略的デザインの構築やサステナビリティ活動が直面する、様々な課題の解決を支援するコンサルティング企業です。2004年の設立以来、東京を拠点にグローバル企業や地元企業に対してデザイン思考、サステナビリティに関する知見、深い人間洞察力を結集し、優れた戦略をクライアントに提供しています。

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