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【睨みを効かせ続けた成果】マンチェスター・シティ×バイエルン|22/23 CL準々決勝 1stleg|マッチレビュー

マンチェスター・シティはホームでドイツ王者を迎えた。この両者の強さの説明は不要だろう。つべこべ言わずにどんな世界最高峰のゲームが行われたか見ていこうと思う。

▪️いつも以上に慎重に丁寧に

8連勝中でこの試合を迎えたシティ。そして直近5試合で奪ったゴール数は脅威の22得点。

そんな攻撃火力を前面に出してこの試合も挑みたい気持ちもあったはずだが、相手は百戦錬磨のバイエルン。舞台もチャンピオンズリーグ準々決勝。

そんなことも踏まえてか、いつも以上に守備への意識が高め慎重にゲームを進めていったシティ。しかし守備への意識を高めたからといってシティの攻撃火力が弱まることはなく適材適所、機を見てバイエルンのゴールへ迫っていった。

シティのこの日並んだ4バックの面々は、最近シティの試合を頻繁に見る人にはお馴染みになりつつある、本職CBの4人で形成された。

右からストーンズ、アカンジ、ルベン・ディアス、アケという並びがお馴染みだが、この日はその並びが少し違った。

右SBにアカンジが入り、右CBにストーンズが入ったのだ。この2人のポジションが入れ替わっていた。

バイエルンの強力サイドアタッカー陣を抑えるために、より対人能力とスピードのあるアカンジを守備時に右SBに配置した狙いが伺えた。

そんな右SBアカンジと右サイドでコンビを組んだのがベルナルド・シウバだった。好調のマフレズを外してベルナルドが起用された。より走れて、より複雑な守備タスクをこなせるベルナルド。

ベルナルドは対峙するバイエルンの左SBのデイビスのパスコースを背中で消しながらCBへプレス。アカンジがサイドで守備対応に回ればすかさずプレスバック。労を惜しむことなくチームに為に走り続けたベルナルド。

そんなアカンジとベルナルドの両者の働きによって、左SBデイビス率いるバイエルンの強力左サイド攻撃を抑え込んでいったシティ。

この日の全体としてのボール非保持のプランはハイプレスで睨みを効かせながらも、いつもより撤退早く!といった感じだったシティ。

バイエルンのボールが奪えなければ素早く自陣に撤退。4-4-2の分厚いブロックを形成し、じっくりゆっくりバイエルンの攻撃を受け止め、跳ね返していった。

シティが4-4-2で中央を封鎖したことでバイエルンサイドから攻め手を探っていった。

右はコマンの単騎。そこは今季エースキラーと化している左SBのアケが粘り強く対応。

左はサネ、ムシアラに左SBデイビスを加えたオーバーロードで複数で攻め込むも、前述した通りシティの右SBアカンジと右WGベルナルドが決定的な仕事をさせなかった。

それでもサイドからのクロスを上げるシーンまでバイエルンは作り出せていたが、中に高さが足りないバイエルンの攻撃陣。対するシティが跳ね返す男たちは本職CB4人と190cmを超えるロドリが待ち受ける。どちらに分があるかはかはもうお分かりだろう。

シティ陣内に侵入し、クロスまでは上げられるも精度が足りない。高さが足りない。そんなヒリヒリする攻撃が続いたバイエルン。そんな焦ったさは最後まで解消されずに、バイエルンは無得点に終わった。

▪️ストーンズの偽CB!?

次はシティのボール保持局面を見ていこう。シティはボールを保持すると右CBのストーンズが一列前に上がってアンカーのロドリと横並びになり、後方[3-2]に。慣れ親しんだ形となりボールを慎重に動かしていった。

ボール非保持時ではこの日はCBとして。ボール保持時では中盤として大きな働きを見せたストーンズ。今のペップ・シティでは本当に欠かせない選手となっている。

シティの後方[3-2]ボール保持に対してバイエルンは[4-2-3-1]のような布陣で中央を封鎖しながらボール出ていった。

シティのボールが後方3バックのサイドのアカンジとアケに入るとボールサイドへ圧縮してボールへ出ていったバイエルン。

このプレスに対してシティはサイドから中央のロドリ、ストーンズを経由して逆サイドにボールを展開して横の動かしを加えた前進を見せた。

その他にもIHのギュンドアンとデ・ブライネが中盤サイドに流れてボールを引き受けて前進するシーンも(バイエルンのSHの背後でボールを受けるイメージ)。しかしこのシティの一つのビルドアップのパターンは五分五分といった成功率だった。バイエルンもしっかりこれを把握。流れるIHにキミッヒが鹿kりついていきインターセプトをし、バイエルンは一つの決定機を作り出したのは流石だった。

またその奥で待つワイドで張るWGへ斜めのパスを送り込み、左はグリーリッシュに、右はベルナルドに時間を作ってもらい、バイエルンを一方のサイドに圧縮させたところのタイミングで逆サイドへ!という流れからも前進を見せていった。

それでもバイエルンの[4-2-3-1]の中央を封鎖プレスの前に、シティは苦戦を強いられたのは確かだ。そんな中シティは先制ゴールを手にした。一つの武器を取り上げられても他の方法で得点を奪えるのが今のシティ。

26分。カウンターからデ・ブライネがボールを持ち込み左から右の幅で待つベルナルドへボールが届けられる。

すかさずバイエルンも左SBデイビスが対応。そこへゴレツカも加わりダブルチームで対応してベルナルドのボールを取り上げにかかるも、ベルナルドは懐深いボールの持ち方でボールを奪われない。

それによりシティの選手たちが上がる時間ができ、ゴール前に厚みを作り出す。そしてベルナルドは上がってきた中央のロドリへ横パス。ロドリは右から左足にボールを持ちかえて振り抜く。綺麗な放物線を描いて吸い込まれたボールは先制ゴールとなった。

▪️睨み続けた成果

シティがリードしたものの、そこから試合が崩れることなくバイエルンも持ち堪え、試合は再び緊張感溢れるジリジリした展開に。

リードを許したバイエルンはロッカールームから戻ってくると後半早々から攻撃に手を一層強めていった。

左サイドのサネが再三強烈なシュートをお見舞いするも最後に立ちはだかったGKエデルソン。

48分シティの全線が前に出てプレスに行くと、それを見事に外したバイエルン。

右WGベルナルドが左CBデリフトに外からプレスに出ると、ハーフスペースに顔を出したムシアラに縦パスが刺さりバイエルンの攻撃が一気に加速。

ボールを受けたムシアラはすんなり前を向きドリブルで前進。左斜めから背後へ抜け出したサネにスルーパスが入りGKと1vs1。しかしこの決定機はGKエデルソンが左手一本で弾き大ピンチを免れたシティ。

このシーンは個人的にはこの試合の勝敗を決めるターニングポイントになっていたと思う。

プレスに出た際に見事にひっくり返えされたシティだったが、その姿勢を止めることなく、虎視眈々と、無理ならすぐさま撤退する気持ちはいつも以上に強く持ちながらも、バイエルンの最終ラインからボールを奪うことを伺い、睨み続けた。

そんな睨みがあったからのか、この試合のバイエルンのCBとGKゾマーとの連携ミスが目立った。徐々にCBの縦パスを敵陣で引っ掛けて、シティがショートカウンターを見せる回数を増やしていった。

そして迎えた69分。デ・ブライネに代わって入ったアルバレスが投入されたばかりのシティに待望の追加点が生まれた。

バイエルンがCB間でボールを交換。右CBウパメカノに横パスが入るとハーランドは中盤を背中で消し、入ったアルバレスも同様なアクション。そして左WGグリーリッシュはバイエルン右SBのパスコースを背中で消しながらウパメカノへプレッシング。

ボールを受けたウパメカノには前へのパスコースがない状態をチームで作り出し、もたつかせ、その間にグリーリッシュがボールに一気に寄せて回収。

ボールを奪うと見事な連携から最後はハーランドの柔らかいチップクロスからベルナルドどがヘディングであわせて2点目を奪ったシティ。

更にシティは攻撃の手を緩めずバイエルンを畳み掛ける。プレス強度を一層高めてバイエルンの最終ラインへ圧力をかけ続け立て続けにビルドアップ局面でミスを誘発させてショートカウンターから鋭い攻撃をお見舞い。

75分CKのこぼれ球をキッカーのアルバレスが左足でクロスを上げて、ファーサイドのストーンズが折り返し、最後はハーランドが3点目となるゴールをゲット。試合を決定づけたシティが1stlegを予想以上の大差でものにした。


▪️おわり

いつも以上に慎重に丁寧に。守備への重心も大きかったシティ。その意味がいかにこの大会。このラウンドで重要なのかを思い知らされる結果になったように感じた。

チャンスを狙うリスクよりも、ミスをしない慎重さや、セーフティーなゲーム進行の重要さ。

バイエルンの2失点目。そしてそこからガクッと落ちたプレーぶりを見ると、1つのミスがどれだけチームに大きな影響を与えてしまうのか。百戦錬磨の選手が揃うドイツ王者ですら、1つのきっかけで崩れ落ちてしまうサッカーの怖さ、そしてこのチャンピオンズリーグに潜む魔物を見た気がする。

3点という大きなリードを持った状態で2nd legを迎えられるシティ。しかしバイエルンも黙って退く訳のないチームであり、このビハインドを跳ね返すだけの力が十分あるチームだ。

バイエルンはドイツのホームで、一度折れた心を再生させてくるはずだ。1st leg よりもより強い気持ちでより強い強度のバイエルンにシティは挑まなくてはいけないだろう。

バイエルンは今のスタイルを考えると、ターゲットマンのシュポ・モティングが帰ってくるのか、帰ってこないかは試合を左右する1つのポイントになりそうだ。

シティは3つのリードをしっかりいかし、時計の針をしっかり進めやり過ごすような戦いぶりも求められるはずだ。

3点差をつけても尚、次のラウンドへ進める気持ちが全然起きないのがチャンピオンズリーグという舞台だ。

再戦は1週間後。それぞれ1試合のリーグ戦を挟み舞台はドイツ.アリアンツ・アレーナ。大きな負傷者が両チーム出ないことを祈りながら、世界最高峰の戦いを楽しみに待ちたいと思う。


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