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【ハイプレスについて考えてみた】チャンピオンズリーググループC 第2節 バイエルン×バルセロナ

近年ヨーロッパの舞台で拳をぶつけ合う事が多いバイエルンとバルセロナ。

果たして今回の結果はいかに。

生まれ変わりつつあるシャビバルサが、ドイツの絶対王者にどんな戦いをしたのか非常に楽しみだ。

今回の試合で『ハイプレス』について考えてみた。

両チーム共にキックオフからハイプレスのやり合いとなった。なぜハイプレスをお互い仕掛けたのか?そしてハイプレスが与えた効能と代償(メリット,デメリット)はなんだったのか?ハイプレスを軸にこの試合を見ていきたいと思う。

▪️なぜハイプレスを選択した?

キックオフから両チーム共にハイプレスを仕掛けた。ボール保持も得意とする両チームがなぜハイプレスを仕掛けたのか?

・相手が自陣からビルドアップするから
・敵陣でボール奪ってショートカウンター
・長いボール蹴らして回収
・撤退して押し込まれない為
→ネガトラ脱出は難しいからね!

こんな狙いが両チーム共通してあったはず。狙い通り敵陣で深くでボールを奪い、決定機を作り出した両チーム。

だけどハイプレスにはリスクが伴うものだが、そことはどう向き合ったのか?

次は両チームがハイプレスを選択出来た要因について考えてみた。

▪️実は低リスクハイリターン?

ハイプレスと言われるとどんなイメージが浮かぶだろうか?

運動量が必要!連動したらプレスが必要!そしてハイリスク!という辺りが多いかと思う。

しかし、この試合の前半だけ見るとハイプレスはハイリスクじゃなくない?ボールを自陣で保持する方がハイリスク!ボール持ってるチームの方がピンチじゃん!というシーンが多々見られた。

前からハイプレスに出るチームの方がチャンスを作り出す構図に。

本当にこの前半だけ見ればボールを持つ意味は?と考えさせられる内容だった。しかし、時間が経つにつれて、ボールを保持する!ボールを保持したい理由がピッチに現れたのがまたサッカーの楽しさ、奥深さという面にも触れられた。

脱線してしまったがハイプレスはハイリスクじゃないの?という話に軌道修正しよう。

厳密にいうとハイプレスにはリスクは当然あるが、そのリスクは軽減出来るよねという話だ。

ロングボールを跳ね返せるスキルや広大なスペースを守れるスピードを持つ選手が揃っている事でリスクを軽減出来る。

選手の質がハイプレスのリスクを軽減する。

結局選手の質かよ!と思われるかもしれないが、選手の質は戦術を構成する上でも大切な要因。どんな選手が揃うかでチームが掲げる戦術は大いに変化する。

バイエルンの最終ラインには高さも速さも兼ね備える男たちが当然並んでいる。

しかしバルサも負けじとそんな選手たちが揃っていた。この日のDFラインには右からクンデ.アラウホ.クリステンセ.マルコス・アロンソが並んだ。バイエルンの前線に対して高さでは十分勝る高さを持つ男たちが並んだ。クンデやアラウホは速さもあるよね?

ハイプレスを支える下支えがあるからこそ、ハイプレスが成立する。そんな選手たちが最終ラインにお互い並んだからこそハイプレスを選択出来た要因だと思う。

▪️両チームのハイプレス

それでは両チームがどんなハイプレスを見せたのか見ていこう。ハイプレスと言っても色合いがそれぞれあり面白いかった。

バルサは敵陣にボールがあるとほぼマンマークで人を捕まえにいった。時間経過と共にマンツーマン要素は強まり、最終ラインも同数になる強気の姿勢を見せた。

ハーフコートマンツーマンのハイプレスを繰り出したバルセロナ。

バイエルンは先日行われたCL第1節のインテル戦でもハイプレスからペースを掴んだ。しかしその試合とは異なるハイプレスをバルセロナに用意した。

インテルに対してはこの試合のバルサの様にハーフコートマンツーマンでプレスに出たバイエルン。しかし今回はもう少しリスクを考えたハイプレスだった。

バルサに対しては最終ラインに1人のカバー選手を設けた。アンカーのブスケツにはミュラーとムシアラが交互に監視。左WGのマネはリヴァプールサポにはお馴染みのアレ。SBを背中で消しながらCBへプレスに出るアレだ。マネ1人で2人のバルサ戦士を見てもらう事で最終ラインのカバーを作り出す構造だ。その他の選手たちは2CB以外マンマーク気味でバルサの選手たちを掴まえてハイプレスを仕掛けていった。

▪️僅かな間伸びからの前進。

両チーム共にハイプレスをきっかけに決定機を作り出してた。ボールを持っていない、ハイプレスを仕掛ける側に次々と決定機が生まれる展開に。

しかしバイエルンはこの構造を少しづつ変えていった。

ハイプレスはやっぱりリスクがあるよ。ボールを敵陣で握る意味を教えてあげよう。という具合にバルサのハイプレスを掻い潜るシーンをつくっていった。

前半途中からバイエルンの2CBは両サイドに広がる。GKノイヤーを真ん中に3人でボール動かす→ガビ.レヴァのプレスがやや遅れる→左CBリュカに僅かな時間が→縦パスをバルサのライン間(DFラインと前の間のスペース)→バルサのマンマーク背負って縦パス受ける→潰れる→3人目で前向き→スピードアップ。

バルサのハイプレスを誘き寄せて、前線とDFラインに僅かな間伸びを作り出したバイエルン。本当僅かなスペース。バルサのDFラインは十分高かった(ハーフライン5m後ろでオフサイドとるシーンも2度ほどあったし!)。間伸びと言っていいか分からないくらいバルサの陣形はコンパクトだった。

しかしバイエルンとバルサの基準は違った。彼らにとっては縦パスを差しこめて前を向ける十分なスペースだった。という事だ。

また高さ勝負だったらバルサのDFラインに分がある条件の中、グランダーの鋭い縦パスで地上戦に持ち込んだのも流石だった。競り合い避け、バイエルンの選手の前に落とし込む縦パスの精度。そしてそれに連動する3人目。

高さがなくても、チームでハイプレスをいなす術はバイエルンが上手だった。

ハイプレスをひっくり返せば、当然広大なスペースが待っている。僅かな間伸び。僅かなライン間を利用してバイエルンの選手たちが前を向くと一気にスピードアップし、バルサの選手たちの多くを後ろ向きにさせた。バルサの選手たちにハイプレスの恐怖を少しづつ植え付けていった様なバイエルンのビルドアップ。

前半10分のバイエルンの掻い潜り方は非常に美しく見事だったので是非見てほしい。

▪️問題はビルドアップ局面

対するバルサはバイエルンのハイプレスを掻い潜ることが出来たのか?

バルサはハイプレスからバイエルンのボールを引っ掛けて、ショートカウンターからチャンスを作り出した。それ以上の決定機も何度も作ったが結果ゴールは奪えなかった。

決定機はバイエルンより多かった!あとは決め切るだけ!内容では上回ってた!

たしかにこんな総括になってもいいと思わせるバルサのプレーぶりだった。しかし本当に、後は決め切る力だけが足りなかったのか?

いや他にも問題はあった。上手くいっていない局面があった。

そのひとつがバルサのビルドアップ局面。他にもあるかもしれないが、私が気になった点はこの局面だった。

ここで一つ質問。
『この試合バルサが作り出した決定機はどんなシーンだったでしょうか?』

試合を見た人は思い返して欲しい。見てない人はバルサというチームも踏まえて予想してみて欲しい。

バルサの決定機
・ハイプレスからのショートカウンター
・ポジトラからのカウンター
・点差が開いて下がったバイエルンを崩したペドリのポスト直撃弾

バルサの決定機はざっとこんな感じだったはず。私が着目したのはバルサのビルドアップ局面。バイエルンのハイプレスを何度意図的に掻い潜れたか?ビルドアップを完結して、決定機に持ち込んだシーンは何度あっただろうか?

私の記憶では前半終了間際の、クンデからハーフスペースで縦パスを受けたペドリが前を向き、左からハフィーニャが斜めにランニングして、レヴァンドフスキに時間を与えて、ペドリがスルーパスを送り込んだシーン。あの崩しは本当に素晴らしかったが、こんなビルドアップからの前進→フィニッシュを演出出来たのは本当ごく僅かだった。

このシーンの様にもっとバイエルンのプレス意図的に外せていたら、結果も変わったはずだ。

バルサのバイエルンのハイプレス回避方法はレヴァンドフスキのロングボールに頼っているシーンが多かった。たしかに選手の質を生かすのは大切だが、もっとチームで違う剥がし方が出来れば、状況は変わり結果が変わったかもしれない。

またこの試合デンベレが頻繁にドリブルを引っ掛けてカウンターを食らうシーンが目立った。もちろんロストするデンベレも悪いが、彼のボールを受ける位置も悪かった印象。彼がボールをロストしたエリアの多くは中央エリア。

彼が本当に力を発揮するのは敵陣深くのサイド?案の定前半終盤ハフィーニャとサイドを入れ替わって、右の幅でボールを受けた彼はイキイキとバイエルンを切り裂いていった。

1人1人の立ち位置の微調整や選手同士の意思疎通がもう少し成されればガラッとビルドアップ局面は改善されそうな雰囲気はある。次の再戦が非常に楽しみだ。バイエルンのハイプレスを次々と交わすバルサがもっと見れるかもしれない。

▪️明暗分けたハイプレスの代償。

ここまで『ハイプレス』を軸に両チームの戦いぶりを見てきた。そして『ハイプレス』の代償がこの試合の明暗を分ける事に。

結果としてバルサがハイプレスの代償を食らう事に。

バルサは後半開始早々にもハイプレスの効能を受けて決定機を作り出した。しかし49分ハイプレスの代償からカウンターを受けCKを与え、そのCKをリュカ・エルナンデスにヘディングで押し込まれて先制点を許す。ここでのハイプレスの代償とは一気に6人の前線が置き去りにされてカウンターを受けた事だ。

そしてその僅か5分後。バイエルンが畳み掛ける様に追加点を奪う。バイエルンがミドルゾーンでボールを動かすと、アンカーのブスケツが前に出る。すかさずバイエルンはブスケツが開けた中央のスペースにサイドからトップ下のムシアラへ送り込み侵入。前を向いたムシアラに対してサネが絡み一気に中央をぶっちぎり追加点ゲット。誰もついていけないスピードでサネがぶっちぎった。

この2点目シーンはバルサがハイプレスに出た!とは言い難いが、前のめりにプレスに出ていたバルサの姿勢がブスケツを前に押し出したのかなと感じた。

結果この2ゴールでバイエルンがバルサを振り切って勝点3をゲットした。

▪️おわり

『ハイプレス』を軸に試合を振り返ってみた。この試合注目すべき、面白い要素はまだまだ他にもあった。

2点奪われてからのシャビの戦術変更は面白く効果的だった。左にフェラン・トーレスを入れて中目でプレーさせる。これにより一気にチームのポジションバランスが整い、バイエルンを押し込むきっかけに。その辺りも注目してこの試合を見てほしい。

ハイライン、ハイテンポサッカーを見せてくれたこの90分は本当に局面が目まぐるしく移り変わり、エキサイティングだった。是非みて欲しい試合。そしてサッカーについて色々と考えさせられるはず。

ボールを持つ意味は?
リスクってなんぞや?

あなたの持つサッカーの常識を覆されるそんな試合になるかもしれません。

2022/09/15 CL グループC 第2節
バイエルン 2-0 バルセロナ
得点者:リュカ・エルナンデス.サネ

よければこちらも。この試合と見比べて欲しい。こちらはとにかく遅い。ローテンポ、ローラインの鍔迫り合い。非常に眠くなるそんな試合。この試合とはまるっきり違う顔をするフットボールさん。それもまたフットボールの魅力ですね。


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