【乱打戦に隠れた脆さ】Jリーグ第9節 横浜F・マリノス×川崎フロンターレ
近年Jリーグを攻撃的なスタイルで牽引している両チーム。マリノスと川崎は今季も大いにJリーグを攻撃的なスタイルで牽引してくれることを楽しみしている。
そんなJリーグ屈指の攻撃力を誇る両チームの試合がJリーグが開幕してすぐにやってきた。
もう少しお互いのチームの完成度が上がった状態でやって欲しかった希望はあったが、期待を裏切らないゴールラッシュ。6得点の乱打線を制したのはどちら?
それでは、簡単ではありますが、試合を振り返っていきましょう!
嘲笑ったマリノス
前半序盤川崎のプレッシングが噛み合わなかった。
チーム全体の連動性も薄く、分厚いプレスをかけられずにマリノスにドンドンボールを動かされてしまった印象だった。
マリノスが自陣で小刻みにボールを動かして、川崎を釣り出し、ポッカリ開けたライン感(DFと中盤の間)に縦パスや斜めのボールを差し込み一気にスピードアップ! そんなシーンを開始5分で2回も見せて川崎をヒヤヒヤさせていった。
川崎のDFラインが自陣に向かって後ろ向きでプレーする姿が目立ち、マリノスが押しこむ展開になった前半序盤。
なぜ?川崎はプレスがかからずに、マリノスにボールを動かされ、押し込まれていったのか?
広がるSBがプレスのズレをつくった
川崎は4-3-3をベースにしながらマリノスにプレッシングを仕掛けた。
この時3トップのWGがマリノスの2CBへプレス。
トップのダミアンは一列下がって中盤を監視した。
マリノスはGKもボールを動かすが、そこへのプレスは中盤のスペースするダミアンが縦にスライドする役割となっていた。
それに対して、マリノスはビルドアップ局面でSBがサイド側に広がってボールをフリーで引き受ける回答をした。
サイド側のSBにボールが入ると、川崎のIHチャナティップと脇坂がスライドしてボールサイドへスライドしてプレスを仕掛ける。しかし、プレスまでの時間が掛かってしまいマリノスのSBに制限を掛けることが出来ないシーンも。
時間が出来たマリノスのSBを起点にマリノスが川崎のプレスのズレを活かして前進していった。
という形を何度も作り出していったマリノス。SBにボールが入った際のマルコスのサポートが絶妙。相変わらず相手にとって一番掴まずらく、一番厄介な男だった。
後方からのボール回しの流れもスムーズで、川崎のプレスをしっかり把握しながら前進していった。
見事な試合序盤のゲーム運びだった。
川崎の誤算と修正
川崎の誤算
川崎が用意したプレッシングは、マリノスSBがビルドアップ局面で絞る前提があったのかもしれない。そこを逆手にマリノスはしたのかもしれない?マリノスのSBがビルドアップ局面で絞らずに、幅を取ることが川崎にとっては誤算だった。
幅をとるマリノスのSBにボールが入ると、川崎のIHがスライドして対応。
しかしプレスに出るにも距離が遠く制限かからない(強度が足りないとも捉えられる)。
そのスライドに合わせてDFラインを押し上げて縦パスを潰す!にしてはDFラインは深く中盤にポッカリとスペースが出来る。
WGのCBプレスをかけても強度低く、タイミングも合わずにマリノスのCBに制限かからない。
GKへのプレスに出た際に、縦パスを差し込まれて中央からの前進もされてしまった川崎。
マリノスのSBの立ち位置によってどこで?どう?守るの?という目標が崩れた川崎がゲーム序盤マリノスに押し込まれていった。
この時間帯にマリノスは先制点をとりたかったはずだが奪えなかった。そんなこんなでマリノスがゴールを奪えずにもたついている間に、川崎が修正を加えた。
川崎の修正
プレスの形は変えずに、3トップのプレスのラインを一列下げて中央に生まれてしまうギャップや間延びを防ぎにいった。また幅を取るマリノスのSBへの川崎のIHのプレス距離が短くなったことで、マリノスのビルドアップの出口を塞ぐことも出来ていった。
これが功を奏し、川崎が自陣の中央でボールを引っ掛けてショートカウンターを仕掛けるシーンが見られるようになった。
それによりボールを保持する時間も増えていった川崎が、マリノス陣内でボールを動かす時間が増えていき前半32分に川崎が先制点を奪った。ゲームの配置からマリノスが優勢にゲームを運ぶ中、プレスラインを下げて劣勢の状況をひっくり返したのは見事だった。
ラインを下げて中央をコンパクトにした川崎のプレスに、ストレスを与えられたままマリノスはハーフタイムへ突入した。
電光石火の逆転劇
後半がキックオフされすぐにマリノスが動き出す。中盤の渡辺に変えてCBの畠中を投入。岩田を一列前に上げて守備の強度を増していった。
川崎は後半の途中からプレスラインを下げた事でマリノスの攻撃を閉鎖していったが、後半に入ると前半の序盤のように前に出るようになっていった。
更に追加点を狙うべく前への重心を増していったのかもしれないが、川崎のプレスが再びかからずに、マリノスの攻撃が1つ2つとギアを上げていった。
マリノスは57分にエウベルの同点ゴール皮切りに、そこから僅か10分間で3得点を奪い電光石火の逆転劇を披露した。
その後1点づつをお互い加えて、6得点の乱打戦をマリノスが制した。
垣間見えた脆さ
J屈指の攻撃力を誇る両チームの一戦。期待を裏切らない攻撃合戦。やられたらやり返す。多くのゴールが生まれたエキサイティングな90分だった。
しかし両チームに隠された脆さであり課題も垣間見える90分でもあった。
マリノスも川崎も、彼らの色が1番発揮されるのはやはりボールを持った時。その破壊力は先ほども述べたようにJリーグ1.2位を争う両チーム。しかしボールを持っていない時には、他のチームが付け入る隙がまだまだありそうな振る舞いだった。
この試合において川崎では前からのプレッシング。IHがサイドへスライドする強度は目立ち、SBを起点に前進された点は気になった。このままこの形を継続するなら、前半途中でプレスラインを下げるのか、強度を上げるのか。CBへプレスに出るWGのプレス強度を上げるのか。プレッシングの形を変えるのか…やり方はいっぱいあるが、川崎の前からのプレッシングには脆さを感じた。
マリノスは失点のシーン。川崎に奪われた2失点とも似た形。SBがサイドにつり出されて、SBとCBの間のスペース(チェンネル)がぽっかり開いてしまい、外からの斜めのボールでペナルティエリア不覚にも侵入されて、クロスからの2失点だった。
4バックの泣き所であるチャンネル侵入。川崎が奪った2得点は、他のチームにもマリノス攻略の参考になり、マリノスにとっては修正が必要な課題のはずだ。
高い攻撃力を誇る両チームだが、それに隠された守備の課題に少し触れてみた。これから両チームがこの課題にどう向き合い修正するのかは見もの。
しかし守備も大事だけど、やっぱり今季もこの両チームには多くのゴールを奪い攻撃的なスタイルを貫いてほしい。
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