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【お仕事図鑑 vol.4-1】 食品業界の品質保証職〜食の安全を守る立役者〜前編

食中毒や異物混入、バイトテロ・・・

消費者が安心して食生活を送るためにも、消費者の健康を守り衛生管理を徹底することは、食を扱うすべての企業で要と言えます。

今回は、そんな食品の安全を守る「品質保証」の仕事について解説します!
品質保証の業務は、製造現場から商品輸送、顧客対応など多岐に渡ります。
そのため、今回は前・後編の2回に分けてお届けします!


はじめに

品質保証(QA)に類似した職種で品質管理(QC)という仕事があります。
厳密な定義付は難しく、品質保証の一部として品質管理が位置付けられたり、対等な部署でありながら業務がオーバーラップするなど、やや曖昧さがあります。

今回は、エージェントとして見聞きする中で、私個人が考える、以下のすみ分けを想定して、話を進めます。
※プロの方から見たら異論があるかもしれません。気になった方はコメント欄でご指摘ください。

品質管理
 官能検査や微生物検査、成分分析など、商品に対する検査・分析とそのレポートがメイン。
品質保証
 品質保証体制の構築、監査、表示作成など、商品カテゴリや工場単位で行う、より俯瞰した立場での業務。

品質保証はどんな仕事?〜4つの主業務〜

一言で言えば、専門知識を持って、食品の安全衛生を守る人といえます。
技術職の1つではありますが、関連法律が多数あり、また食品の輸出入においては海外法規も知っておく必要があるため、特に学ぶべきことが必要な仕事です。

食の輸出入の活発化や、消費者の間での安全意識の高まりなどから、品質保証職の重要性は年々高まっており、他の技術職に比べて求人が多い印象です(2024年上期)。

<品質保証の基本業務>
1)規格書・一括表示作成
2)申し出・ご指摘受付と対応
3)工場監査
4)品質保証の体制作り、認証取得等

大雑把なイメージですが、1と2はデスクワークが中心、3は本社業務ですが工場への出張が多く、4は工場での業務がメインとなります。
特に1と3・4は、一定以上の大きな組織であれば、同じ品質保証部の中で組織が分かれがちです。

この前編では、前半の1と2について説明していきます。

1)規格書・一括表示作成

商品情報を作り上げる業務で、メーカー、商社、外食問わず、必要とされる業務です。
BtoB、BtoC、両方の商材で求められます。

一括表示とは?
「ラベル」とも言われ、顧客・消費者に向けて、原材料や製造元などの商品情報を記載するものです。
例えば写真のような情報一覧を見たことはないでしょうか。
これが、消費者向け商品に記載されるラベルの一例です。
(私の目の前にあった、山の名前のカフェラテです。笑)

食品表示法では、ラベルに記載する項目や記載方法が定められています。
食品の品目ごとに、原材料を書く順番や、原料と添加物は区別して書くこと、アレルゲンの表記、成分表示の項目、賞味期限、製造元など・・・至る所に法律の規定があります。
非常に複雑ですが、間違えると食品表示法違反で、罰金や懲役などの刑罰が処されます。
そのため、企業の信用問題にも関わる重要な業務となります。

規格書とは?
簡単に言えば「とっても詳しい商品情報」です。
上記の一括表示の内容を含め、商品名や原材料・製造工程の詳細、栄養成分、アレルゲン情報など、商品に関わるすべての情報が記載されています。
画一的なフォーマットはありませんが、規格書が無いと取引をしない企業もあり、多くのメーカーで作成しています。

こうした規格書や表示はまさに品質を可視化し、担保するための書類です。
デスクワークが中心ですが、製造工程の理解や、輸出入品の場合は国ごとの法規の理解も必要となるため、幅広い知識が求められます。

2)申し出・ご指摘受付と原因調査

異物混入や異臭など、いわゆるユーザー・消費者からの「指摘」を承り、原因調査をする業務です。
クレームとは言わず、「お申し出品」、「ご指摘品」と表現するのは、業界特有の言い回しですね。

顧客対応は、受付窓口と、原因調査の2つの業務に分かれます。
受付窓口はいわゆる「お客様相談室」のことで、コールセンター的なポジションです。

もう1つは、「ご指摘品」の原因調査とレポート
なぜ異物が入ったのか、工場のラインはどういう状況だったのか、輸送状況に問題は適切だったか、再発防止に何が必要か、といったことを地道に調査し、レポートにまとめて顧客や関係各所にフィードバックします。
自社工場であれば社内で完結しますが、委託していたり、そもそも原材料に原因がありそうな時は、仕入れ先や委託先の工場に行き、原因を究明します。

品質保証のやりがいと大変さ

今回解説した、品質保証の2つの業務について、やりがいと大変さを整理すると以下のようになります。

<やりがい>
・法律知識が身につき、専門性が高まる
・原材料の輸入や、自社商品の輸出を通して海外との接点が持てる
・出張がほとんどなく、デスクワークなので長く働きやすい。

<大変さ>
・製造現場から離れてしまうので、ものづくりに携わっている感覚がない
・相談窓口は基本的にクレーム対応なので、怒られることが多い
・法改正が多いので最新の情報・動向を把握することが大変

品質保証職で必要なスキル・キャリアパス

品質保証職で必要とされる(身につけられる)スキル

規格書・表示作成の業務を通じて身につく最大のスキルは、法令知識(食品衛生法、食品表示法、海外の食品関連法など)でしょう。
特に輸出入品に携わる場合は、国によって使って良い原料や添加剤、品質基準が異なるため、違いを意識した確認が必要になります。

なお食品表示に関しては、「食品表示検定」と言うものがあります。
表示関連の業務をしている方であれば、中級まで取得する方が多いです。
ちなみに中級の合格率は約50%ですが、上級は非常に難しく、合格率はたった13%程度です。

また、輸出入に関わる場合は、しばしば表示や規格書の日本語訳が必要になるケースもあり、英語力も身につけておくと対応範囲が広がります。

原因調査においては、得られた情報から問題の箇所を見つけ出す論理性と、製造現場の状況理解が重要になります。
また、解決策を考え、報告書にまとめる力も必要とされます。

品質保証職のキャリアパス

表示作成や問い合わせ対応は、専門知識が必要となります。
そのため中途採用では、規格や表示に携わったことのある方が求められます。

品質保証以外の職種では、商品企画・商品開発の方や、品質管理の方だと、ラベルチェックや作成補助をすることがあるため、上記の要件に入ります。

問い合わせ対応は、専門のコールセンターを設けているような企業であれば、コールセンターの業務経験でチャレンジ可能な場合もあります。

表示作成等を担当されている方のキャリアパスとしては、高度な専門知識を持つエキスパートとして活躍される方が多いです。
もしくはジョブローテーションで品質管理などに異動するケースもあります。

しかしエージェント時代は、「表示作成だけやっていていいの?」と不安を感じている方に、よくお会いしました。
特に製造現場からは離れていることから、より現場に近い監査業務に憧れを持つ方が多いですが、実際は難易度が高い転職になります。

近年は、食材の輸入や、日本食の輸出が盛んになり、海外法規を含めた食品表示の知識を持っている方はニーズがあります。
メーカー、商社、中食・外食問わず求められ、特に商社では扱う商品数が多いほど表示作成の業務量が増えるため、食品表示のエキスパートというキャリアもアリではないでしょうか。

まとめ

今回は、商品の安全性や衛生管理を担う品質保証職について、デスクワークの業務を中心にご紹介しました。
品質保証は、原材料の仕入れから製造、輸送、顧客に届けた後まで、すべての工程に携わります。
そのため幅が広く、キャリア作りにおいては、「品質保証業務の中でどこに特化するか」という視点も必要です。

ぜひ、次回の「製造周り編」も併せて品質保証の仕事について関心を持っていただけたら、と思います。
後編は、7月18日(木)更新です。お楽しみに!

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