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10月の茶道 - 炭が少しだけ近づく「中置き」

自分を好きになる理系ファッションアドバイザー Kaori です。

趣味で四年ほど続けている茶道についても、茶道日記noteで紹介することにしました。

言われなければ気が付かない、些細な気遣い

茶道には、そんな気遣いがいっぱい。気遣いのための決まりの多さ、わかり難さゆえに、「茶道は敷居が高い」と言われてしまう。

そびえ立つような高さの敷居を振り払う。そのために、茶道での気遣いの背景や理屈を、わかりやすく説明するのがこのnote上のマガジン です。

今回は10月のお点前について。まだ冬ではない、けど寒さを感じるこの季節独特の作法について解説します。

茶道の作法には、お客様への気遣いがある

私は理系ファッションアドバイザーとして活動しています。ファッションには季節性があって、それを半ば強要された時は嫌な気持ちになった経験があります。

暗い色は苦手なのに、白が好きなのに、「9月に入ったら白を着るな」と言われてしまったのです。

○月になったら、△△をする、☓☓しない。

洋服における「ルール」を忠告された時は、嫌な気持ちになった。けれど、茶道でのお作法の注意は、嫌な気持ちになったことがないです。

理由は茶道でのルールの背景には「お客様への気遣い」があるから。(アパレル界でいう「ルール」は、物を売るためのルールであることがほとんど。お客様を思いやって…というものは多くはありません)

どこに、「お客様への気遣い」を感じるのか。

それを紹介します。

季節によって、窯・炭の位置が変わる

例えば、炭の位置。それを変えることが、お客様への気遣いになる。。。とは、私はこれまで考えたこともなかった。

5月〜10月の間は、風炉(フロ)という道具を使って、炭を起こします。卓上ならぬ、畳上のコンロのイメージ。※コンロではなく、お茶室では炭を使って湯を沸かします。

お茶を点てる人が、炭や窯の前に座り、お客様は横に座る。

この写真の左側の黒い窯が乗っているのが「風炉」、右側にあるのが水が入った「水差し」。

写真の出典:風炉

先日の10月のお稽古では、この風炉の位置がいつもと異なりました。窯(炭)と水差しの位置が逆になってました。壁際にあった窯が、少し右側に行く。畳の真ん中に置く故に、「中置き」と呼ばれます。

炭の位置を変える理由

なんで「中置き」何だろう

私は先生に質問しました。元来、茶道や剣道など、「道」がつくお稽古事は、先生にこういった質問はしないものらしい。

質問するのではなく、先生に教えてもらうのではなく、自らが感じ取れ

これが、西洋ではなく、東洋哲学的な発想。とは言え、私の疑問と知的好奇心は抑えられなかったので、質問してみた。

肌寒くなる10月の頃は、少しだけ火(炭)をお客様の席に近づける。

寒さの象徴である「水」を遠ざける。完全な真冬支度をする前に、細やかながらお客様が寒く感じないようにする。

「中置き」の真意はここにあった。

さり気ない気遣い

お客様に少しでも寒さを感じさせないため

燃える炭の位置が10cm近づこうが、遠ざかろうが、体感温度は変わらないかもしれない。それでもできる範囲で、寒さを感じさせない演出をする。それが茶道。

お客様に気づかれなくても良い。むしろ感じさせない位な方が良い。

自分の決めたルール、誰かが決めたルールを押し付けるのではない。ルールのためのルールではなく、お客様がより心地よく過ごすための気遣いだから

来月の11月から、「炉(ろ)」という冬用の稽古になります。窯の位置が50cm以上変わる。

そこまで大きな変化はないのが、「中置き」。客席から遠い壁際にある窯を、ほんの少しだけ客席に近づける。10月だけのお点前。

今の時期だけ、今だけの対応。これが、千利休が言う「一期一会」なのか。

千利休が言う「一期一会」とは

相手に合わせ、季節に合わせ、道具を変える、位置を変える。
押し付けがましい変化ではなく、さり気ない変化。

これぞ、おもてなし。

なんですが!!ここが、茶道を難しくしている原因でもある。

星の数程、茶道具が存在します。お稽古に行く度に、見たこともない道具が出てきます。各々の作法や扱い方を覚えていかねば、おもてなしが出来ない。

「10月後半には炭を中置きにするものなの!!」

もし頭ごなしに言われ、理由も教えてもらえなかったら、覚えられない。利休さんが何を思って、決まりを作ったのかもわからない。

奥底の背景、理由。

それをわかりやすく説明できれば、茶道の堅苦しく敷居が高いイメージを変えられると思い、こんな茶道日記noteを始めました。

これからもしばし、お付き合いいただけると幸いです。

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