PSBモデルからの脱却②---私の意見---

たしか2015年くらいだったかにこの論文を読んだ時は、非常にショックをうけました。かくいう私も、骨格の歪みや動きの分析を元に、痛みの治療をしてきたからです。

しかしその治療上の「信念」の裏で、つねに「◯◯が曲がっているから、☓☓が痛いのであれば、◯◯が曲がっている人は皆、☓☓が痛いのか?」という疑問がありました。

その疑問は、いつも患者さんの痛みが無くなったのと同時に忘れ(心の中に隠し)、また次の患者さんへ同じ信念(骨格の歪みを痛みの原因と考える)で接してきました。

Lederman先生の幾つかの論文(私が別エントリーで紹介している「The myth of core stability」もその一つです)は、非常に示唆に富み、自分が今まで信じてきたことが本当に正しかったのかどうかを再考させられます。

また「エビデンス」についても再考させられました。実際に臨床の現場では、例えば、頚部のツボや、頚部の”筋肉の凝り”(実際にはおそらくファシアの凝りでしょうが)に鍼やマッサージをして、頭痛や首の痛みが無くなったケースを多くの方々が経験しているでしょう。しかし実はそれにもエビデンスがないようです。実際に、イギリスでは、鍼治療やマッサージ系の手技の宣伝際、いわゆるWHOで鍼やマッサージが効果的とされる症状(例えば、腰痛、膝の痛み、消化器系の病気など)に鍼やマッサージが効果的と書くのは禁止になりました。唯一書いていいことは、「short term effect of ◯◯」です。(◯◯の短期間の緩和

それは、エビデンスがないことばかりか、イギリスの多くの治療家がうまく治療できていないという現状もあるのでしょう。

かといって、私は「◯◯という治療法はエビデンスがないから、受けるべきではない」とは言いません。実際に、その治療法が、安全で、コストが安く、そして患者の満足度が得られているのであれば、否定する要素は全くないからです。

ある手技、手法がなぜ◯◯の治療に効果があるのか?というのは、実は皆が考えている理論ではなく、もしかしたら、プラセボ(これは我々が想像する以上に超強力で、プラセボについての考察は今後していくかもです)、リラックス感がもたらす副交感神経優位の状態、治療ベッド(治療室)での”強制的な”休息、まだ未解明な治療機序、そしてContextual effect(別エントリーで紹介していますが、要はこの先生はいいと聞いている、プロフェッショナルな感じがする、清潔感あふれる治療院、感じのいい接し方など)などが作用しているのかもしれません。

私のまわりの治療家には、「俺達の治療が一番だ!」とか、「◯◯痛の原因が☓☓だと言っている奴らはわかってない、馬鹿だ!」とか宣っている人たちがいますが、彼らの「理論」もよくよく考えてみるとおかしいです。彼らの理論(治療機序)は大まかにまとめると

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