エビデンスと還元主義、そしてそれぞれの信念

FC2ブログ時代、「ストレッチの是非」シリーズを始める前に、ストレッチにまつわるいろいろな神話を各自どのように消化していけばいいのかというのをテーマにブログを書きました。というのは日本の徒手療法界で信じられているストレッチに関する事柄のほとんどはエビデンスベースで考えると嘘というか神話だからです。しかしエビデンスでは否定されているが自分が患者さんにこの◯◯法は効く!と思ったことは(=信念)、安全で(←これが第一!)リーズナブルで提供できて、そして患者さんも満足しているのであればそのまま続けていってもいいのでは?ということを書きました。前々回のブログでもエビデンスではすべて否定されている事柄を「あなたはまだそんなことやってんの?」的な意味で紹介しましたが、それでも治療家本人が効く!と思っている(=信念)のであれば、誰からも否定されることではないと今でも思っています。ブログ読者の方々でも未だに患者さんにストレッチを勧めていたり、鍼で”リリースする”といって治療している人、物療器具をメインに使っている人などがいるのを知っていますが、治療家も患者さんも結果に満足していれば誰からもとやかく言われる筋合いはないと思っています。各自の信念に基づいて施術していけばいいはずなので。

とはいえこの業界、他の手法をバカにする傾向は多々あり、見ていて聞いていて心苦しいです。やれ他の手法で腰痛を治したっていうブログや記事をみたら「まだそんなことやってんのか、俺たちのやり方の何年遅れてるんねん!」とか、「鍼は筋線維を壊すから駄目なんだ!」とか、「筋肉を揉んでも治らないんだよ!」とか「骨や関節のズレが痛みの元凶なのにそれを矯正せずに治るわけないだろ!」的な事とかはよく聞きます。まあエビデンスベースで考えると私から言わせるとどっちもどっちですが、治療家自身が”この手法が私が患者さんにできることのすべてだ!”という信念をもってやっているのであれば、いちいち他者を批判するなよ!って思います。

最近はBPSモデル関連の論文、痛みに関する論文をよく読んでいるのですが、よく目にする言葉が「reductionism」(日本語で還元主義者)です。これは単純にいうと(少なくともBPSの論文で書かれている時は)物事を他のいろいろな要素を除外して単純化して考える人のことです。この徒手療法界では多くの人がそうではないでしょうか?私がトリガーポイントを信仰していた時は関節に関することは無視していたし(笑)、ある治療家グループ達は血流改善を第一の目的としていたり、自分達が立てた都合の良い理論のみを用い「俺たちのやり方が一番だ!」と言っていたり、骨の矯正中心のグループの人たちは骨の矯正ができなければ絶対に治らないと言っていたりと痛みの治療に関してほとんどの徒手療法の流派が心理的要素、社会的要素を除外しています。かくいう私も実は過分にreductionistだと思います(笑。鍼に関しては2014年だったかの結論(鍼を刺そうが刺さまいが、鍼を刺そうが爪楊枝を刺そうが、ツボに刺そうが刺さまいが、効果は同じ)、というエビデンスと自身の鍼で今まで効果をだせなかったという経験を元に新たに鍼治療の効果の論文を見つけてもあまり真剣に読んでいませんし、ろくに理解しようとしていません(笑。

鍼に関してもっと付け加えると、鍼を皮膚の上から刺す。その時血管系、リンパ系を無視して(笑)ツボや筋硬結やトリガーポイントに刺すことで治すとしている人がほとんどでしょう。そう、鍼を刺すときは血管系とリンパ系などは還元主義者の治療家達の頭の中から消えているのです(笑)。下の画像はたしかFacebookで誰かがアップロードしていたやつを勝手に拝借しました(著作権を侵害しているようだったら削除します)。もちろん私も鍼を打つ時は下の写真で示されている血管系の存在を頭の中から消してました(笑。

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ロックダウンのせいでずっと暇なので(なんとイギリスでマッサージ師や鍼灸師は最低7月初旬まで施術に許可がおりません、もしかしたらもっと先になるかも?)理学療法士向けのエビデンスベースのリハのビデオを見まくっていましたが、正直以下のような感じです。

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できることならば知らなければよかったなあと思うこと多数です(笑。でも無視して治療に携わることができないと思ってしまっているのが自分の性分。まあしょうがないなあ。でも私は他の人が上の事を無視して(勉強せずに)還元主義的に治療に携わっていたとしても軽蔑はしません。それがその人の信念に基づいて施術を行っているはずだから。

次から数回「ファシアの繋がり」の続編を書いていく予定です。その繋がりを自分の目で見て普段の治療にどう活かすかは各治療師次第です。私もいろいろと思うことはありますが、私の思っていることが正しいともわからないので、ブログ読者の判断にまかせます。

あくまでもご自身の治療家としての信念に基づいて。





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