見出し画像

【アルバムレビュー】We are SMAP!


ライブ回想録を書いたので、アルバムレビューも書いておこうと思う。

アルバム概要

SMAPとして2年ぶりのアルバムとなった『We are SMAP!』。
1年前の2009年は、剛の謹慎期間を経て、5人それぞれドラマや舞台といった個人仕事が多い一年を過ごした。

翌2010年は5人の活動の軸をライブツアーに据え、事前に周到な準備を行い、発売されたのがこのアルバム。
海を越えて中国でもアルバムを同時発売。
日本では、同じタイトルのスポーツドリンクが期間限定で発売されたほどの力の入り様だった。
(こちらはポカリみたいな味で、案外美味しかった。)


アルバムの話に戻すと、
力が入っているだけあってなんといっても曲数が多い。
通常SMAPのアルバムはDISC1だけでも12~14曲程度だが、今作は驚異の17曲。

そして楽曲提供には、
久保田利伸、小室哲哉、石野卓球、槇原敬之、久石譲、爆笑問題の太田光といった豪華すぎるメンバーが参加。
相対性理論のやくしまるえつこ、サカナクションの山口一郎といった
当時音楽シーンを席巻していたミュージシャンも。

アーティストの豪華さ、ボリュームの点】では、SMAPのオリジナルアルバムでダントツ1位。
聴いていて損はなく、むしろ得しかない。


ただし、【人を亡くした悲しみ】を歌う曲が多いため、そういった悲しみからまだ立ち直れていないとき・メンタルが弱っているときにはあまりオススメできない。
(実際、筆者もペットを亡くしてから4年たった今、やっと聴けるようになった。)

以下レビュー。


DISC1

We are SMAP! -Funky Lude-
作曲は久保田利伸。SMAPライブのOvertureとしては珍しく、5人の歌声が入っている。これから5人によるパーティーが始まるワクワクさと爽快感が駆け抜ける。Overtureとしては全アルバムのなかで個人的に一番好き。


SWING
ジャズっぽい曲だが、2年前に出したアルバム曲『Jazz』とは違って、楽しさが溢れる楽曲となっている。管楽器による愉快な音色がSMAPの歌声を盛り上げる。流れるようなリズムも心地良く、気分がノッてくる。まさに始まりにふさわしい曲。


僕の素晴らしい人生
中居、木村、吾郎の年上3人による楽曲。ライブでは剛、慎吾がダンサーを務めたが、アルバムの3人版を聴くだけでも素晴らしいものに仕上がっている。歌詞と3人の歌声がとても力強く、勇気づけられる。風のような爽やかさも感じる曲だ。


そっときゅっと
44thシングル。久保田利伸が作曲。


Trust
当時、詐欺事件を起こして謹慎中だった、小室哲哉の復帰作品のひとつ。TKがSMAPで音楽遊びしたような独特な世界観。後半、木村のソロから始まってだんだん一人ずつ歌声が重なり、5人になるところが好き。「Tweet me」という当時Twitter(現:X)が流行り出したとわかる歌詞も。


FEEL IT
KARAの『ミスター』で知られる、韓国の作曲家集団Sweetuneによる提供楽曲。重低音が魅力的な、ちょっと大人向けのディスコチューン。吾郎、剛の落ち着いた声の二人が主旋律を歌うことで、曲の魅力を一層引き立てている。


GAIAにおねがい
相対性理論のやくしまるえつこが“ティカ・a”名義で提供。吾郎、剛、慎吾の年下3人による楽曲。恋をしたときの、ふわふわと浮かれつつ、切ない感情を見事に表現。さらっとした3人の歌声が見事にマッチし、浮遊感漂う不思議な曲に仕上がっている。


ひなげし
愛する人への死別を歌った曲。だが、悲しみはほとんどなく、むしろ優しく愛に溢れている。まるで思い出を表すようなキラキラした旋律、「金色の涙」「輝く笑顔」といった詩的な歌詞、そしてSMAPの歌い方、すべてが優しく包み込まれるようだ。


短い髪
剛、慎吾による楽曲。ライブでは剛がピアノで弾き歌いをした。こちらも愛する人との死別を歌った曲で、主人公目線で語られる物語に引き込まれていく。しっとりとした剛と慎吾のハーモニーはまさに絶妙。聴いていてとても心地良い。


Magic Time
サカナクションの山口一郎が提供。陰と陽を、夜と月に見立てるのは山口ならではの例え。この曲には【漠然と過ぎる日々の中にある、ほっとできる空間】が広がっている。聴くとSMAPが励ましてくれている気分になれて、ちょっとだけ前向きになれる。


Love&Peace Inside?
槇原敬之による提供楽曲。『世界に一つだけの花』の第2バージョンとでもいえようか。平和や差別について聴くものに投げかける歌詞は、今でこそ深く考えさせられるものがある。SMAPが歌うからこそ、その投げかけが意味をもつように感じる。


We are SMAP! -Bounce Lude-
久保田利伸が作曲したOvertureその2。この曲でアルバム、ライブツアーともに折り返し地点となる。ハンドクラップのリズムが一層にぎやかな空気を盛り立てる。ここからが本番。


SMAPのポジティブダンス
作詞は鈴木おさむ、作曲は石野卓球。ネガティブとポジティブは表裏一体なんだと思わされる。SMAPが明るく、おかしく、歌詞に共感的に歌いあげていて明快。もちろんライブでも盛り上がった。落ち込んでいて元気になりたい方にオススメの一曲。


Going Over
RIP SLYMEが提供したラップ曲。メンバーのSUと同郷の中居が主旋律を主に担当。サビに向かっての中居の「カマン カマン カマーン!」が癖になる。これから新しい世界へ飛び出す期待を感じる一曲。メンバーみんなラップがうまい。


Cry for the Smile
『BAD DAY』のダニエル・パウターが提供。冬から春へ向かう様を表現した、あたたかみがある音楽に癒される。歌詞一言一言にメッセージ性が込められていて、SMAPも大切に歌っているのがわかる。個人的にこのアルバムで一番好きな曲。ダニエル本人も『Lose To Win』という曲名でセルフカバーしていて、そちらも良いので是非聴いてみてほしい。


We are SMAP!
作詞は太田光、作曲は久石譲。このアルバムのテーマでもあり最終楽章ともいえる曲。久石譲による壮大なオーケストラは、聴くたびにいつも感動。明らかに上質な音楽であり、インストゥルメンタルverが聴きたいくらいの素晴らしさ。歌詞は太田光から見たSMAP評。Jr.からデビューし、ずっと前を見て歩んできたSMAPを、ファンタジー小説のように描いている。解散した今、その歌詞にはしっかりと【SMAPがいたこと】がわかる。必聴。



Disc2

Memory〜June〜
中居のソロ曲。アルバムの発売1ヶ月前に亡くなった、マイケル・ジャクソンへの鎮魂歌。歌詞には多くの「さよなら」と「変わらないあなたへの思い」と相反する言葉が並び、亡くなった人に対しての中居の想いと捉え方が垣間見える。感情を入れて真剣に歌っており、いつものおふざけは一切ない。中居のソロが苦手という人にも安心できる曲だと思う。


君のままで…
木村のソロ曲。世界的音楽プロデューサーのデイヴィッド・フォスターが作曲。とにかく木村の歌声が共感的で優しく、聴いていてほっとする。「君は君のままでいい」という歌詞にも癒され勇気づけられる。「いつか君もきっと大人になっていく その日までそばにいるから」という、木村が愛娘2人に対して送ったであろう【父親の愛】も感じとれる一曲だ。


愛や恋や
吾郎のソロ。管楽器による豪華絢爛な音楽、女性のコーラス、マジシャンの掛け声…。吾郎のパブリックイメージと擦り合わせて、【人生の喜び】をハッピーにゴージャスに描いている。まさに吾郎にピッタリの一曲。伴奏のボリュームが結構大きく、吾郎がそれに負けない存在感ある歌声で、さらっと歌いあげている点は地味にすごい。


帰って来たヨッパライ
剛のソロ曲。加藤和彦の曲(ザ・フォーク・クルセターズ)のカバー。リズミカルに剛が歌い上げる様は、ノリノリで耳に残る。一見ふざけた曲だが、歌詞は前年に起こした泥酔騒動と繋がるものがある。自分の境遇・気持ちを同一視してこの曲を選んだのだろう。【反省の意】をこの曲のエンターテイメント性に昇華させているのが、剛の凄いところ。よく聴くと気持ちをこめて歌っているのもわかると思う。


No Way Out
慎吾本人が好きだと公言していた、LOVE PSYCHEDELICOによる提供曲。夢を振り撒き、回想に埋もれず、感情を唄で描くといった歌詞に、ナチュラルなギターによる音楽。まさに【ありのままの香取慎吾自分自身】を表現したといえる曲だ。慎吾色に染まった、慎吾の今を生きているライブ感が伝わってくる一曲に仕上がっている。



総評

提供アーティストのさまざまな個性に溢れ、幅広い音楽を聴けることがこのアルバムの大きな利点だと思う。
オススメ度【★★★★】


We are SMAP!ライブの回想録はこちらから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?