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サイレントニャーとホーキング博士

うちの猫・アフの声が数日前から枯れていて、昨日から鳴き声がすべてサイレントニャーになっている。
サイレントニャーとは、猫がこちらを見て声を出さずに鳴いたように見える現象で、飼い主を母親と同様に信頼して甘えている証拠なのだ。でもこの現象、実は人間には聴こえない周波数なだけで、猫はちゃんと声を出しているらしい。
アフも普段から私にサイレントニャーをしてくれるけど、鳴き声すべてサイレントなのはおかしい。ようやく出した声もかすれているので病院へ連れて行くことにした。

アフは車が苦手なので、毎回パニックになってしまう。病院までの10分は、彼女にとっては永遠に感じることだろう。
今日もパニックになりつつ、かすれた声で鳴くのが痛ましい。と思っていたら、だんだん声が出るようになってきた。
道中、目の前をずっと同じ車が走っていることに気づく。
ナンバーは2222、ニャーニャーニャーニャーである。
きっと大丈夫な気がする。そう思った。
そしてありがたいことに予感は的中する。

たいして待たずに診察してもらうと異常はなく、おそらく鳴きすぎて枯れちゃったんだと思います、たまにあるんですよ〜、と先生。
脳裏に息子のバンドが浮かんだ。マキシマムザホルモンのコピーバンドだ。
この間、息子の部屋で二日間合宿練習していたのだが、最終的にヴォーカルの子の声がめっちゃ枯れていた。あれか。あの現象か。
「熱もなくどこにも異常は見られないから一週間くらい様子見てください」
ということで診察は終わり、来年のカレンダーをもらって帰ってきた。全ページ珠玉の撮りおろし子猫カレンダーだ。愛くるしいにも程がある。
アフは、おそらくお隣の三毛猫・みーちゃんとの喧嘩でシャウトした時に声が枯れたのだろうと推測した。
みーちゃんとはもう10年の付き合いになるのに、いまだに庭でかち合うと喧嘩になる。お互い高齢になってきてるのに本当にたいしたものだといつも思う。

そういうわけで、ただ声が枯れただけだったのに、苦手なケージに車と病院というフルコンボで、アフにとってはちょっとした災難だったかもしれない。
病院から帰る時に、今朝見た夢を思い出した。
スティーヴン・ホーキング博士がママチャリに乗っている夢だった。

道を歩く私の斜め前を、ホーキング博士がよそ見しながらママチャリを漕いでいる。前を見ないとフェンスにぶつかりそうで危なっかしいなぁと思っていた。
次の瞬間、短いけれど傾斜の急な坂道を降りようとしていたホーキング博士が自転車から転げ落ちてしまった。
慌てて駆け寄って「大丈夫ですか!?」と声をかけた。道行く人に救急車を呼んでください!と頼み、ホーキング博士が大怪我をしていないか確認した。
博士は縮こまった手足を、ゆっくりゆっくり開いていく。そして言った。
「余計なことしないで。大騒ぎしなくて平気だから」
ホーキング博士はどうやら体を使って何かの実験していたようで、邪魔をしないでほしいと言われた。
次の瞬間、シーンが変わり、アフが出てきたところで目が覚めた。
余計なことしないで。大騒ぎしなくて平気だから。
もしかしてあのセリフはアフの気持ちだったのかな、なんて思う帰り道なのであった。

今回の絵はお隣の三毛猫をモデルに描いた『龍猫図』
アフはこの龍のようにシャウトしたに違いない。


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