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ぶどうの香り

タロット占い師になって4年が経つ。

最近はLINEなどを使っての遠隔セッションが好評で、ありがたいことにご縁はどんどん広がっている。

タロットは誰にも習っていない。

初めてカードを触った時から、私は占い方を知っていた。


今取り組んでいることは、実は来世に持ち越すことができる。

才能というのは、どれだけの転生をそれに費やしてきたかの現れなのだ。

「天才」と言われる人を羨んではいけない。

その人は膨大な転生をそれに捧げてきたのだから。


私は天才ではないけど、過去生で占いをやっていた。

前回やっていたことだから、今回こんな風にできているのだと思っている。

そして来世はもっと腕が上がっているはずだ。


タロットと言っても、私のやってることはほぼ霊視で、カードをよりしろに多次元へアクセスしている。

私のところへ恋愛相談に来る人は多分3%くらいで、残りはだいたい二種類に分かれる。

ひとつは仕事や人生の目的について知りたい方、

もうひとつは、もうこの世にいない人との通信手段として。


タロット占い師になってお金をいただくようになってから、自分の力をスイッチみたいにオンオフ切り替えられるようになった。

仕事以外では「視ない」ようにできるので、若い頃と違ってとても生きやすい。

そんな私にセッション中以外で唯一話しかけてこれるのが、数年前に他界した心友の彼なのである。


その彼には、残念ながら今世でお会いすることは叶わなかった。

もちろん彼女を通してお互いに認識はしていたけど、初めて会話したのは亡くなってすぐの頃だった。


私は自宅でのんびりしていて、飼い猫にごはんをあげようとしゃがんだ瞬間だったのを覚えている。

突然頭の中がジャックされたように彼と繋がった。

丁寧な彼らしく挨拶をしてから、彼女へ伝えて欲しいことをいくつか話してくれた。

彼の言葉をそのまま彼女へのメール画面に打ち込んでいくと、最後の言葉は

「ぶどう、ありがとう」

だった。


タロットセッション中と同じで、どんな言葉もジャッジしない。

私はただの透明なパイプになって、言葉を伝達するだけだ。


突然こういうメッセージを不躾に伝えるのは私の流儀ではないし、気分を害してしまったら本当に申し訳ない、と前置きした上でメールを送ると、彼女は心底驚いていた。

「さっき、美味しそうなぶどうをお供えしたばかりなの」と。

そして彼女が聴きたいことを彼に伝えたり、少しの間会話することができた。


人はあちらの世界へ旅立った後、まずは「本当の世界」を思い出して驚いたり、元気になったり、魂に見合った年齢の姿に変わる。

そして数ヶ月以内に学びの部屋へと入っていく。

その部屋に入られると、しばらく私もアクセスしにくくなる。

私の父はその部屋へ進むタイミングで、お別れを言いに来た。

亡くなってからも仲良く対話できてたので、その時はとても悲しかった。


ある時、心友の彼がトレンチコート姿で現れた。

彼もまた、学びの部屋へ行く時が来たらしい。

彼の後ろには、かすかに海外のターミナルみたいな景色が見えた。

「行かなきゃいけないから、お別れを伝えてほしい。しばらく会えなくなるけど、大丈夫だから。行ってきます」

丁寧な彼は、私にも「本当にありがとう」と伝えて旅立って行った。


「もうね、本当にお世話になったんだから、さっちゃんが人生でピンチの時には絶対に、ぜーったいに助けてあげてよね!って言っといたよ」

と、笑う心友。

彼女曰く、「彼は本当に義理堅い人だから、絶対に助けてくれるよ」


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ある時、今後の自分の在り方に関わることで困った瞬間、絶妙なタイミングで心友からメールが来た。

メッセージの内容、タイミング、どれを取っても本当に神がかっていて、一言で言うと私は本当に救われたのだ。

うまく書けないけど、そのメールが来なかったら私は迷ってしまったり、落ち込んだり、自分の創造性への挑戦が「危なかった」、そのくらいの救いの手だった。

彼女には本当に心から感謝を伝えて、私は安心することができた。


リラックスしたらお腹が空いてきたので、適当に料理してからワインを選んだ。私には珍しく白ワインをチョイス。

それは数日前に夫が買ってきたワインで、白ワインがあまり好きじゃない私が「とっても美味しい!」と思ったもの。

グラスに少し注いで、幸せな気分で飲んでみる。

ぶどうのピュアな香りが素晴らしく、本当に美味しい。

心友は白ワインが好きだから、これ教えてあげよう。

ラベルを見ると、そこにはローマ字で心友の彼の名前が書かれていた。


多分、発音やイントネーションは違うはず。

だけどそのままローマ字読みすると彼の名前になる。


その時、神がかったタイミングで心友がくれたメールが、実は彼のサポートのもとにあったのだとようやく腑に落ちた。

「彼は本当に義理堅い人だから、絶対に助けてくれるよ」


白ワインの香りが、口いっぱいに広がった。







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